新潟県主要地方道56号
小千谷大沢線 第7部

2022年7月24日 探索 2022年10月7日 公開

小白倉の集落から谷へ一気に下り、西山橋から徐々に高度を上げ、やがて未舗装になって、ここまで標高を上げてきた。この区間、実は未開通区間ではなく、一応開通している扱いになっている。確かにそうだが・・・さっきから交通量はほとんどないぞ。
だって、私が道の真ん中でこうして撮影していても、聞こえてくるのは風が木の葉を揺らす音や、時折聞こえる小鳥の囀り、それにたまに空中を旋回しながら鳴いているトンビの声くらいしかない。そう、車の音と言うものは、この主要地方道のこの区間は「皆無」に近いのである。そして、この左カーブを曲がると・・・

光と影のコントラストが非常に美しい、何だか落ち着ける空間に出た。ここは結構大きな木陰になっていて、ここを通る風は冷たくて涼しい。自転車を押しながら上がっている私にとって、この空間は非常に嬉しく、ここで少し休んでクールダウンすることにしよう。

自転車を路肩の斜面に立てかけて腰を下ろし、個包装の梅干と麦茶で塩分と水分の補給をすると、スッキリして生き返る気分だ。あたりを見回しても、当たり前だが誰一人いない。持参した地図を取り出して現在位置を確認すると、一つ大きくため息をつく。この未舗装区間の県道の探索も、ようやく半分と言ったところか。
小白倉集落から下って渋海川を渡り、そこから登りに転じて今ここにいると言う、これまでの地形を考えると、福島の七折峠のようにここも一つの河岸段丘なのかなぁなどと、二個目の梅干をかじりながら思っていた。・・・梅干も二個目となると結構くるな(笑)

10分ほど休憩しただろうか。さて出発だ!。
自転車を漕ぐ足に力をこめる・・・んじゃなくて、押す腕に力をこめる(笑)。
読者の中には「ずっと押しているくらいだったら、最初から歩けばいいじゃないか」とお思いの方もいらっしゃるだろう。だが、私はこの先の峠を以ってこの道を制覇すると、ベースとなる車が置いてある西山橋まで戻らなくてはいけない。その時に自転車があると、一気に下ってこれる。つまり、私は帰りに楽をしたいがために、今は押して上がると言う苦労を先にしているのだ!(←力説する内容じゃない(笑))。・・・ま、このくらいの勾配なら乗ってはいるんだけどね。

出発してほどなくすると路面のコンクリ舗装は消えて、また未舗装の道へ戻る。この先は結構拓けているようで、景色がかなり明るく感じる。路面には鮮やかなダブルトラックがあるので、交通量がないとは言いながらも、全くないと言う訳でもなさそうだ。先へ進んでみよう。

一見すると田圃の畦道、でも実は主要地方道。いかにも昔の未舗装の道、そんな雰囲気を持つ非常に素敵な空間に出た。ここは違う意味で押して歩いた方がいいだろう。自転車を降りて押しながら歩いてみる。・・・ジャリッジャリッと踏みしめる音がして、実に懐かしい。
ところで旧い話になるが、昭和30年代や40年代の道は舗装されている道はまだ少なく、このように固く踏みしめられた砂利道がほとんどだった。あの天下の一般国道7号でさえ、大毎峠名月橋勝木峠などは未舗装だったのだ。そういった意味で、この道は往時の道の姿を感じることが出来る、珍しい存在と言ってもいいかもしれない。

右側に見えるのは田圃だが、今は休耕田のようだ。それも、休耕田となってから間もないのだろう。まだ田圃の面影は十分に見て取れる。米を育てるには水が一番大事と聞く。この山奥深い地で造られた米は、山の恵みを一杯に受けて育つだろうから、美味い米になることは間違いない。こんなところでたくあんをかじりながら頬張るおにぎりは格別だろう。・・・いかん、腹が減ってきた(笑)。

分岐点に出た。さて、県道はどっちだろうか・・・と迷うこともなく、左に行く道が県道だ。右へ行く道は田圃の脇を走る農道で、この農道もやがて山に突っ込んで行って、ほどなく終わる。この道も全く交通が途絶えた訳ではなく、今でも若干の通行はあるようで、下草が刈られて通行しやすくなっている。対して県道は砂利が敷かれていて、かろうじて県道の威厳は保っているようだ。

先ほどの分岐点から県道を辿って左に進むと、また山深いところを走るようになる。左右は崖になり(とはいえ「直角」ではない)、ガードレールもガードロープもデリニエータもない頼りなげな一車線の幅の道は、素直なまでに峠目指して進んでいく。でも、これで終わりと言うのもなんだかつまらない気がする。もう一押し、何かないかなぁと辺りを観察しながら進んでいく私だ。

第8部へ