新潟県主要地方道56号
小千谷大沢線 第5部

2022年7月24日 探索 2022年9月29日 公開

峠を目指してえーんやこーらと自転車のペダルを漕いでいく。が、折り畳みのMTBのため、なかなか前に進まずにギアを低くしてのんびりと進んでいく。もしかしたら歩いた方が早いかもしれんと言う速度だ。道幅は普通車がやっと1台通れる程度。なのだが、私がこの道に入ってこの方、すれ違う車は一台もいない。これで主要地方道か?とも言いたくなるが、この道幅と通っている場所では致し方ないと言ったところか。

いい加減に暑くなってきたので自転車を停めて小休止、汗を拭きながら左側をふと見てみると、このような風景が広がっていた。季節は夏、7月の後半なのでまだ稲穂は首を垂れていないが、それでもこの緑が鮮やかな稲穂、言うなれば瑞穂が太陽に輝く風景はどうだ!。実に美しい!。
おまけにここはほとんど通行量がない主要地方道の脇。本当の山の中に存在する、山の恵みを存分に吸収した稲穂だ。ここから取れた米が美味しくないわけがないじゃないか!。

・・・いかん、興奮したら余計に体温が上がって、喉が渇いてきた。と言うことで日陰ではないものの、ここでひとまず小休止。持ってきた麦茶と個包装の梅干で、塩分と喉の渇きを潤して汗を拭うと生き返る気分だ。この風景を見ていると、思わず口をついて言葉が出る。

「気持ちいい!」

こうして見ると、ただの農道か作業道。それにしてはきちんと整備されている道だなぁと言うくらいで、まさかここが県道だとは思いもよらないだろう。それも一般国道に準ずる主要地方道だ。こんなのんびりした道が探すと意外とあるのが新潟県だ、と言ったら言い過ぎだろうか。でも、私はこんな抜けるような青空に、それに美しく映える緑と田園の風景が大好きだ。こんなところで塩の握り飯と漬物を食べたら、絶対美味いに違いない。

道はやや上り坂になって峠を目指す。さっきまですぐそばに見えていた緑鮮やかな田圃は、道が標高を上げるのに従って段々と下に見えてきている。道の狭さは相変わらずで、私は自転車で通っているからいいものの、普通車で迷い込もうものなら下手すると通れなくなって、立ち往生するかもしれないし、離合するにも出来ない。そういえば幅員減少の標識もなかったのを思い出した。しかも、こういった道にはお決まりで、ガードレールやデリニエータをはじめとする路肩防護施設は何もない。

…いい道じゃないか(笑)

道はやがて谷のような地形の中に入っていく。左右は切通しのような地形になっているが、この道を通すために掘られた切通しではなく、自然に出来た谷と言う感じだ。この谷の最下部を、傷みはないものの、やや頼りない舗装と共に進んでいく県道。ここまで左右が拓けていると日陰を作ってくれる木々の存在は望めず、従って日陰もないが、先ほどからこの谷を吹き抜ける緩やかな風があるので心地いい。
さて、もうそろそろこの道は私が期待している通りの道になるはずなのだが…もう少し先か?!。

山側に生えた灌木のお陰で、格好の休憩ポイントが出来ているじゃないか。いいぞ、灌木!(笑)。日陰に入って水分を取りながら小休止しつつ、目算で幅員を見てみると、およそ2mあるかないかくらいだろう。この道だとトラックは…2トン車がギリギリかもしれないが、私がドライバーだったら迷わず違う道を走ると思うなぁ。…いやいや、楽しいから敢えて通るかもしれん(笑)

狭い県道をのんびり自転車で上がっていくと、右側にこんな建物を見つけた。頭が丸いのは、豪雪地帯で天井に雪が積もって、その雪の重さで倒壊しないためだ(雪が滑り落ちて積もらない)。これは車庫で、農機具小屋としても使われてるのかもしれない。こんな山の中にポツンと立つ車庫兼農機具小屋、正面の妻面に塗られている鮮やかな緑は、周囲の森や草の色に合わせたのか。

少し立ち止まって地図を眺めてみる。この先へ進むと更に山深くなって、いよいよこの県道の真の姿が見られるはずだ。いかん、自然と顔がにやけてくる。街中だったらただの不審者だが、ここは山の中、大いにニヤニヤしよう(笑)

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