新潟県主要地方道56号
小千谷大沢線 第6部

2022年7月24日 探索 2022年10月3日 公開

切妻の色が辺りの風景に溶け込んだ、頭が丸い農機具小屋を後にして自転車を先へ進める(実際には急な坂なので自転車は押しているのだが)。ここまで来ると、路肩の草が路面にまで侵食してきて、道はいよいよ廃道の雰囲気を醸し出してくるが、この道は廃道にはなっていない。それは事前調査でわかっているから大丈夫!・・・たぶん(笑)。
青い空、狭い道幅、路肩の草。実に爽やかな風景なのだが、一つだけ気になることがあった。それは、ここから見える路面の先だ。舗装がいきなり途切れているようには見えないか?。・・・やべー、期待で顔がにやけて仕方ないぞ(笑)。

おおっ!きたきたっ!

待っていたぞっ!。狭い道の舗装がいきなり途切れて、そこから未舗装!。しかしダブルトラックは刻まれているから、多少の交通はあるようだ。楽しくなってきたぞ!。頭の中には恒例のごとく、音楽が流れはじめた。どうも探索にノリはじめて最高潮になってくると、その探索のテーマとも言うべき音楽が流れてくるようだ。

今日のテーマは Bay City Rollers の「Rock And Roll Love Letter」らしい。この曲、本当は米国のシンガーソングライター、ティム・ムーアが最初にリリースしたけどヒットにならず、その後にスコットランド出身のベイシティローラーズがカバーして大ヒットになった、あの曲だ。実は新田恵利さんもこの曲をカバーしていたりするぞ(聞いたことはないが)。

閑話休題。でも、この道の未舗装具合はとても素敵だ。これはこの探索でのこれまでよりも、本腰を入れて探索をしなくてはなるまい。さぁ、突入!。

右カーブを回ると、このような風景が広がる。実に素敵だ。道を取り囲む豊かな緑、直角に切り立った崖、辺りには街で得られることが出来ない深い静寂、ダブルトラックがハッキリと残る道の路肩にはデリニエータ、そこには擦れて消えかかっている「新潟県」の文字。間違いない、この道は県道だ。未舗装の主要地方道、なんて素敵な姿だ!。道はこの先、森の中に突っ込んで行くが、そこも未舗装で突っ込んで行くのだろうか。上り坂の砂利道を自転車でノロノロと進みながら、これからの展開に胸が膨らむ。

おや?

路肩にポツンと立つデリニエータを愛でながら先へ進み、右カーブを曲がると砂利道の県道は森の中へ。ただ単に掘っただけの側溝を右に見ながら登っていくと・・・ん?舗装されてないか?。
どうもこの辺、山の中に突っ込んで行く峠に向かう区間で、滑りそうな部分だけコンクリで舗装したらしい。実に微妙な舗装だ(笑)。どうせなら潔く、ここも未舗装で突っ込んで行ってくれた方が潔さを感じるけど、それはよそ者が言う話であって、この道を生活道路として使われている方々からすると、切実な問題だったのだろう。

あれ?。確かこの道は、冬季は全面通行止めになるはず・・・。
えー、冬にこの道を通れないなら、このコンクリ舗装いらないじゃーん(←おい)。

寒冷地でよく見られる、コンクリートに滑り止めの溝を付けた簡易舗装の路面が見えてくる。道幅は普通車が1台やっと通れるくらいだ。ここまでくるとそこら辺の林道か、一般県道あたりの道幅しかない。今まで通った一般県道の中で一番狭かったのは、小千谷から十日町を走る506号が一番狭かったが、それと同じくらいしかない。対向車が来ようものなら退避場所まで退かないといけないが、この道幅では相当な運転技術を要すること請け合いだ。

せめて退避場所くらい作っておいてくれ、新潟県(汗)

ところで、頭の中に流れる音楽は先ほどまでの「Rock And Roll Love Letter」から、なぜか Katy Perry の「Hummingbird Heartbeat」に変わった。どっちにしても、心は今にも踊りだしそうだが、身体は自転車を押して歩いているのでヘロヘロになっているという、なんとも情けない状態になっているのはヒミツだ(笑)。

カーブの途中から、先へ向かう道を撮影してみる。
わかりにくいと思うが、簡易舗装されたほっそい道がヘロヘロと山中を進み、先へ進んでいる。この風景を見て、ふと思った。「この道はもしかして旧街道なのではないか?」と。
何だか、こうした道を探索するたびに、そんなことを言っているんじゃないかと思われがちだが、実際にそう思っているんだから仕方ない。でも、山中を緩やかな上り坂で峠に向かっている道を眺めていると、そう思うのだ。ここを歩く旅人、荷を引く牛馬の風景が目の前に蘇ってくる。

でも、この道は何故か、いつものようにボンネットバスが走るまでには発達してなかっただろうな、とも思っていた。それは道幅が狭すぎることと、現在は柏崎市の大沢集落と十日町市の小白倉集落を結んではいるが、この区間の交通が過去にはそれほど活発ではなかったであろうと言うことが理由だ。でもそんなことは関係なく、この道は地元の人たちにとっては両集落を行き来する非常に重要な道だっただろうと言うことは、こうして通っていてもひしひしと感じる。だからこそ、こうして主要地方道として残っているのだ。

過去に活躍した道が、こうして現代まで残っていることは非常に嬉しい。そこを通る人たちの幻影を見ることが出来るのだから。頭の中で再生している「Hummingbird Heartbeat」を聞きながら、峠を目指して進んでいく。

いや、実に楽しい道だ!(笑)

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