一般国道49号
福取トンネル旧道
惣座峠 第7部

2022年5月4日 探索 2022年8月8日 公開

ヤブの先へ

そうだよなぁ。そうじゃないかと思っていたんだ。君がこのまま引き下がるわけはないものなぁ。
何となく、この道のどこかでまた会えるような気がしていたよ。

あ、話しかけてる相手はクマじゃなく、ヤブだ(笑)。
さっきまで歩いていた、日差しがたっぷりと路面に降り注いで開放的な気持ちいい道の姿は、ここにきて少し姿を潜め、若干ヤブが増えてきた。だが、まだまだ歩けないほどではないし、山側の斜面にあったコンクリート柱で造られた擁壁も灌木ですっかり隠されてしまってはいるが、道の雰囲気は先ほどまでと変わらず明るくて気持ちいい。ポツポツと歩いていく。

斜面が崩れてしまっているのではなく、灌木が茂って本来の斜面を覆い隠してしまっている。良かった、これが路面に茂ってなくて。路面であったはずの路肩を見てみると、凹んだところがある。これは現役時代に活躍していた側溝の跡だろうか。この道が多くの交通を通して役に立っていたころの証だ。近づいていって万が一にもヘビでもお出ましになると嫌なので、遠くから眺めるにとどめておくことにする。

さっきからあまり変わらない似たような画像が続いているが、間違いなく先へ進んでいる。先ほど、次の日陰を見つけたら休憩しようなどと考えていたが、休憩しようにもその日陰がここまで全くない。このヤブの点在する部分を抜けたら、日陰じゃなくてもいいから休憩しようかな。
この強烈な日差しの中でのヘルメットは正直言って暑いので、この辺で一回ヘルメットを脱いで頭もクールダウンしたいのもあった。

この時季にしては高い気温のせいか、小鳥の囀る声も聞こえない。まるで静寂に包まれているような静けさなのだが、先ほどのクマと言い路面を覆っている草と言い、生命の営みは確かに行われている。この旧道も何も管理されていない状態だと、とうの昔にヤブに覆われていたことだろう。

灌木の新緑と路面の枯草が全盛の道を、周囲を見回しながらヘルメット姿のオッサンが歩いている。だいたいはこういう時、頭の中には昔テレビで見た探検隊のテーマが流れているが、今日は何故かアバの「ダンシングクイーン」が頭の中にリピートしている。

「ダンシングクイーン」はともかく、路面に目をやると右側に何やら大きな石がゴロゴロしている。最初は置いてあるのかとも思ったが、よくよく見てみると置いてあるという感じではなく、落ちてきた石を端っこに寄せました、という感じだ。こんな大きな石が頭上から落ちてきたら、たまったものではない。線形はともかく、こんなところも局改の対象になった要因の一つかもしれない。

おっ!あれはっ!

自分が今歩いている旧道の様子と、自らの頭の中に流れている「ダンシングクイーン」の偉大なる(?)違和感を楽しみながら先へ進んでいくと、また視界が一気に開けて明るい道の雰囲気になるが、ここでやっと休憩できそうな日陰を左側に見つけた。ここで少し小休止することにしよう。

首から下げたカメラやウエストバッグなどを全部外してヘルメットを脱ぐと、それまで火照っていた頭が一気にクールダウンする。涼しくてすごく気持ちいい。一つ息を吐いて冷たい麦茶(実は保冷ボトルケースに入れておいた)を一口飲むと・・・生き返る!。
持参した扇子で仰ぎながら辺りを見回すと、道はこの先右カーブになっているようだが、その手前左側に見えるのはコンクリート擁壁じゃないか?。
火照った身体も幾分冷めてきたところで、おなじみ地理院地図をプリントしてきた手元の地図を見てみると、ここまでで半分を越えて三分の二の地点まで到達しているようだ。さ、先へ進もう。

装備を再び身に着け、出発!。道幅はたっぷり二車線の幅があり、普通車でも充分にすれ違い出来る広い道幅を保っている。少なくともこの辺りは最近車が入ってきた様子はないが、それでも何故か立っている電柱にゼブラの注意板が巻かれているのがなかなか楽しい。時期によってはここまで車が入ってくるのに、まずは草刈りをしないと入ってこれないような気もするのだが、このゼブラの注意板はこの道が今でも生きていることの証だろう。

左側には休憩した場所から眺めて見つけたようにコンクリートの擁壁があって、道は回り込んでいるようだ。そういえば、探索する前に少しネットで検索して情報を収集した際に、「道が大きく回り込んでいるところがあって、その内側が崩れている」という記述を見たことを思いだした。
それがあの場所だろうか。

先に目標を見つけると進む足取りも軽くなるが、夢中になってしまい、そこへたどり着くまでに隠されている構造物を見落とすこともある。ここは逸る気持ちをグッと抑えて、目指す場所に急ごう!。(←結局は急いでんじゃん(笑))

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