一般国道49号
福取トンネル旧道
惣座峠 第4部

2022年5月4日 探索 2022年7月27日 公開

フワフワとした感触の枯れた下草が敷き詰められた、往年の道幅そのままの旧道を歩いていく。山側には灌木が斜めに生えて、さほど広くない道幅を更に狭く見せるような生え方をしているが、私が通るのには取り立てて支障はない。これまで探索しようとして何度もヤブに阻まれた道だが、今回はこんなにスムーズに進めることに驚いている。だが、これも少し日にちがズレていたら、また草に阻まれていたかもしれないと思うと、今回は非常に幸運だったと言うしかない。探索の女神がいるのなら、その女神が微笑んでくれたのか。

初夏の淡い緑と、路面に敷き詰められている茶色い下草のコントラストが非常に気持ちいい。路面にはタイヤの溝があるが、それはダブルトラックではなく、御覧の通り一本しかない。誰か超幅広のタイヤを付けた一輪車でも押していったんだろうか。超幅広のタイヤの一輪車だとタイヤの路面抵抗がものすごくて、押すだけでも結構苦労しそうだが。筋トレには最適なんだろうが、少なくともこんな山中で使うような代物ではないことだけは確かだ(笑)。
山中に残る旧道の幅広い道幅は、ここが一級国道であったことを雄弁に物語っている。そして、そこを歩いている私は今、この旧道を独り占めしている。それは至福の時間だった。

ここまでは。

この開放的な風景!。旧道でこんな場所に出ると非常に気持ちいい瞬間で、私の大好きな瞬間でもある。普通ならここで休憩するはずなのだが、今回は違った。ここまで来た時に、どこかから「グルルル・・・」と唸り声が聞こえた。
最初は気づかなかったのだが、辺りの自然の音に交じって何度も聞こえる。一旦前の場所まで戻って、冷静に考えてみる。

クマ鈴は4個装着していた。そして、複数人が登場する賑やかなラジオを流していた。山に入る前に呼子笛を鳴らしておいたし、それなりのクマ対策はしているつもりだ。最後の武器としてナタも身につけていた。そして、クマの気配は感じなかった。・・・うーん、どうするか。今回は絶好の完抜のチャンスだし、何とか先に進みたい。しかし相手の正体がわからない以上、このまま先に進むのも非常に危険だ。こうなると答えは一つしかないし、選択の余地はなかった。もちろん、優先すべきは安全。安全無くしては探索もないし、何より三島が許さないだろう。

…ひとまず撤退。

この画像は撤退する途中で撮影したものだ。旧道が上がってくる様子がよくわかると思う。
皆さんは「なんだ、あれほど調子よく言っていたのに、また今回も撤退か」と思われた方も多いと思うが、諦めが悪いのが私の性分。それなりに策があった。上品な言い方をすればこうなるが、本来の言い方を言うと「冗談じゃない、負けてられっか」となる。
ひとまず、ベースとしている車に戻ろう。

さて、それからしばらくの時間が過ぎて・・・
探索再開だ。この間、私が何をしていたか。仮にクマがいたのだとしたら、そのクマを迂回すればいい。と言うことで、私は一旦山を下りて車に戻り、福取の集落へ向かった。そう、福取の集落側からまた同じ地点に来たのだ。こうすれば時間も少し稼げるし、その間にクマもいなくなるかもしれない、と考えた。結果としてこの方法は大成功で、集落側から来た私は難なくここまで来ることが出来た。

さて、辿り着いたこの場所から、またレポートを再開しよう。
だが、気を付けなくてはいけない。ここは彼ら(クマ)のフィールドの中。気を緩めることなく進んでいくことにして、周囲の観察を行う。見ると、何だかここだけ電柱が櫓のように立っている。

左側(山側)の電柱二本は右側の本線の電柱をワイヤーで支えているようだ。旧道は、ここだけ道幅がぐっと広くなり、作業するにも十分な余裕が確保できそうだ。この場所は、元は待避所か駐車帯だったんじゃないかと思うが、こんな駐車帯だったら、ものすごくのんびりできそうだ。気分転換にも最適だったんじゃないか。

電柱に付けられた、接触防止の黄色と黒のゼブラが目に痛い。たぶん、車の接触防止だろうが、こんなところでぶつける人もいないだろうし、まして車が入って来れないだろう。それでも律儀に取り付けられているゼブラが微笑ましい。だが、これでハッキリした。ここは放置されて荒れるに任されている廃道ではない。少なくとも必要最低限の手が入り、ちゃんと管理されている道と言うことが。ここまで全工程のおよそ半分。まだまだ旧道は続くが、ここからも楽しめそうだ。

だが、もうクマはいらんぞ(笑)

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