一般国道49号
福取トンネル旧道
惣座峠 第3部

2022年5月4日 探索 2022年7月23日 公開

装備を整えなおして出発して、最初に見た風景がこれだ。
真新しい砂利が敷き詰められた、いかにも「ちゃんと整備されてます」と言った雰囲気の道が、基地局へ続く道。この道はすぐに基地局に突き当たり、そこで終わる。私の正面に続く道が旧道だ。この風景を見て、多くの皆さんは「なんだ、あれだけ煽っておきながら、ヤブでもなんでもないじゃないか」そう思うだろう。だが、今は5月。冬になると数メートルの雪で覆われる豪雪地帯でもあるこの付近は、この時季でないと雪が完全に融けない。そう、目の前にある風景は雪が融けたばかりのいわゆる「冬枯れ」の状態で、だからこそこんなにヤブがなく、歩けるような雰囲気でもあるのだ。この道がこんな状態なのは、ほんの一時期しかないだろう。だからこそ、この時季を狙ってきた。さぁ、それでは進もう。ここからはいよいよ未知の道だ。

右側には電柱が立ち並び、その外側には基地局の近代的なアンテナが見える。そして目の前から真っすぐに進む道が、惣座峠への道だ。路面にはところどころ緑の絨毯が見えていて、これが育つと見事なヤブになるんだろうなと思うとゾッとする。その緑の絨毯の周りに、まるで干し草のように見える枯草が、冬の間に雪の下敷きになり枯れてしまったヤブの残骸だ。その残骸が大量にあることが、見ておわかりいただけると思う。これが全部真っすぐ元気な草だったとしたら・・・それはそれは大変なヤブになるだろう。

ふと横を見ると…ん?。法面に何かありそうな雰囲気が・・・?。
おおっ!これはっ!。

石垣ではないかっ!

一見するとわかりにくいが、立派な石垣が山側の斜面に造られていた!。もうこれだけでテンション上がりまくりだ。この草に埋もれかけてはいるものの、建造から今までしっかりと斜面を守っている姿は実に美しい。しばらくこの石垣と戯れたのは言うまでもない。いや良いものを見た。これからの探索が実に楽しみだ。

んー、実に快適な道じゃないか。この季節を選んで正解だった!。
以前来た時にはものすごいヤブだったこの道が、今はスッキリとして快適な道に様変わりして、私を迎えてくれている。道幅はとても広く、優に2車線の広さがある道が目の前に広がっていた。先ほどの急な坂を上がってきたボンネットバスも、ここで一息ついて次のバス停に向かっていたのかも?。もしかしたら、先ほどの石垣の前あたりにバス停があったりしたところを想像すると、実に楽しい。山側を見ると、その斜面には今にも転がり落ちてきそうな、根っこから倒れた太い木の姿が見え、一見風光明媚でも実は災害国道であることを物語っている。

辺りはものすごく静かで、クマ避けに鳴らしているラジオの音があたりに響くほど静かと言えば、わかって頂けるだろうか。仮にクマが寄ってきても辺りが静かすぎて、近づいてくる足音がすぐにわかりそうなものだが油断は禁物。慎重に進んでいくことにする。

足元で何かに躓いてバランスを崩して転びそうになるが、何とか体制を立て直して路面を見てみると、こんなに大きな落石が残っていた。念願の旧道を歩いているせいか周りをキョロキョロして、路面を見ていなかったらしい。やはりと言うべきか、長年メンテナンスがされていない道だから、落石の一つも起きてもおかしくはない。最初の頃は暑くて脱いでいたヘルメットも、やはり被っておいて正解だったと思うが・・・それにしても大きな石だなぁ!。こんなのが落ちてきたら、ひとたまりもないぞ・・・(汗)

ここからは道幅が狭くなって、1車線の幅になるようだ・・・ん?違うかな?。よく見ると、狭くなったように見えるだけかもしれない。どうもここだけ山側の木々が育ちすぎて路面を覆い隠しているために、狭くなったように見えるようだ。となると電柱は路面の真ん中に設置されていることになるが、現道時代にこんな架設をするわけはないから、これは旧道になってから施設されたものであろうと言うことがわかる。

ここまでは下草もなくて実に歩きやすく、スムーズに進んで来た。ここからは道幅が少し狭くなって、新芽が芽吹く灌木と緑の絨毯を眺めながら進む。ここを通るのは今日だけ。しっかり目に焼き付けて感じることにしよう。

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