一般国道49号
福取トンネル旧道
惣座峠 第10部

2022年5月4日 探索 2022年8月20日 公開

(一部の方々には(笑))とっても素敵な石垣を堪能し、梅干しに麦茶で体力も復活した後は、福取の集落までさほどない峠道にも復活だ。右カーブで沢を越えて福取に向かう道は道幅も広く、この辺まで来るとクマの気配も薄れてきて(実際にはそんなことはないのだろうけど)、歩くには非常に快適な道。散歩気分とはいかないまでも、青空の元で辺りの景色を楽しみながら歩いていくのは、実に気持ちいい。

私の足元にある茶色の草は、冬枯れの下草の残骸だ。さっきから何度も休憩して、熱中症予防に梅干しを食べるくらいの暑さでは今一つ説得力がないが、でも冬枯れの草であることは間違いない事実なのだ。その茶色の枯草の絨毯から芽吹く緑の新芽は勢いがあって、若々しさを感じる。この旧道にはところどころに蕗の姿も見られたので、時季によっては蕗の薹の姿が見られるだろうし、おそらく土筆もあるだろう。春だねぇ・・・。

ところで、クマが冬眠から目覚めて最初に口にする食べ物は蕗の薹と言われるくらい滋味があり、私たち人間にとっても春の訪れを感じる風物詩と言ってもいい馴染みの山菜でもあるが、この蕗の薹に代表される春の山菜を(タケノコも含めて)私たち人間が採り過ぎてしまうと、それだけクマの食糧が減ることにもなる。春の恵みはちゃんと山の生物たちと分け合って楽しむのが一番だ。と、そんなことを思いながら、枯草で満たされてフワフワとした感触の旧道を歩いていく。

ところで旧道や廃道を辿る楽しみと言えば、人間が自然を切り拓いて通した道が使われなくなってしまうと、自然がそれを飲み込んで元に戻そうとする際の廃れた雰囲気と風景が第一に挙げられると思う。そこに往時の道路構造物(橋や隧道、沢を跨ぐ先ほどの石垣の「橋」と言うか「築堤」なども堪らない)なんかあったりした日には最高だ。
また、日常の生活で街中にいるとわかりにくい「季節」と言うものを直に感じることが出来るのも、旧道や廃道を辿る楽しさの一つだと思う。時にはこれまで見たこともない植物や虫がいたりなんかすると、実に楽しい。などと楽しみながら歩いていたら・・・

大きく緩やかな山の斜面を回り込んでいくと、ここに来てヤブが深くなる。なるほど、そう簡単にはこの探索を終わらせないと言うことか。それはこの旧道が私に課した、最後の抵抗のように思えるが、こうなると何が何でも完抜したくなるのが私だ。おまけに、ここから福取の集落までさほど距離はないはずだ。残念だったな三島、お前の企みはお見通しだぞ。ここに来るまでに私としてもいろんな道たちの協力を経て修行を積んで来たからな。受けて立とうじゃないか(笑)。

・・・と、こんな感じで自分を奮い立たせるのも探索の楽しみの一つだ(笑)。
このWEBを見て頂いて「探索なんてハードルが高すぎて私には無理!」などと思われている方がいらっしゃったら、私は「大丈夫」とお伝えしたい。途中で無理と思ったら引き返せばいいのだ。
肝心なのは、進む勇気よりも退く勇気。挑戦していればいつかは抜ける(笑)。

来たなっ!

ヤブを抜けた先に待っていたのは天国。いいじゃないか~。
明るく暖かい日差しと、穏やかな日陰。この光と闇が織りなす道の感じ。横殴りの灌木が多少生えている斜面と、その斜面のすぐ下に今も健在な側溝。この旧道で一番の雰囲気満載の場所のように思える。ここはのんびりと歩いていくことにする。だが、いかんせん道幅は狭い。50年前もこの国道49号の交通量は比較的多かったはずで、それらの車が行き交うことを考えると、ここは交通のネックになっていたはず。対面通行が出来る道幅じゃないし、どうしていたんだろう?。交互通行でもしていたんだろうか。

路面は綺麗だが、左の斜面から生えまくる横殴りの灌木。いくら冬枯れと言っても灌木までは枯れず、こうしてトンネルのように道を覆う状態だ。私が通っていると、被っているヘルメットにカツンカツンと音を立てて枝がぶつかる。ここはヘルメットを被ってきていて正解だ。目の前を横切っている灌木には新緑が芽吹いていて、中には棘がある木もあるから迂闊に触ると棘が刺さって破傷風の原因になったりもするが、革手袋を着用しているのでそんな心配も無用だ。
夏になるとここは緑で覆い尽くされることだろう。路面もところどころに緑の絨毯が見えることから草のヤブになるだろうし・・・となると、ここは夏には一帯が緑に覆われて通行出来なくなる区間と言うことになる。ここは探索するなら春か秋限定の旧道だなぁと思った(大抵の場合において、探索に適している時期は春か秋なのだが)。

灌木の枝と格闘しながら進むと、その数はかなり少なくなり、通行しやすくなってきた。一度伐採でもされたのだろうか、道に覆いかぶさるような枝がなく、青空と電柱がよく見えるようになってくる。手元の地図を見てみると、前方に見える杉林の中央が切れているあの場所が、目指す惣座峠のはず。楽しかったこの旧道の探索も、もうすぐ終わりだ。名残惜しいが最後まで楽しんで行こう!。

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