一般国道49号
福取トンネル旧道
惣座峠 第14部
(完結編)

2022年5月4日 探索 2022年9月5日 公開

思いがけず咲いていた道端の山桜に出迎えられてほっこりとした後は、合流地点に向かって一直線・・・と言いたいところだが、まだ少し一人旅が続きそうだ。道の印象はとても明るく、おおよそクマの気配は感じないのはいいが、日陰も全くないので非常に暑かったりする。

思うに峠には陰と陽があると思う。すなわち日陰と日向と言うことだが、この惣座峠は今私が歩いているこの道が陽の方らしい。てことは、峠までの道程は陰だったのか・・・。それにしては、なかなか暑い峠道だったなぁ(笑)

右カーブを回っていくと、道は下り坂。その先には横切る現道の姿が見える。福取トンネルでショートカットしている現道に比べて、福取の集落と峠道で結構迂回している惣座峠は見事な切通しと明るい峠で印象的な道だったなぁ…と、歩きながら思い返していた。

それにしても暑い。日陰はないが少し休憩することにして、先ほどの麦茶を軽く一口飲んで個包装の梅干しを食べると、乾いて電解質が少なくなった身体に梅干しの酸っぱさと塩加減がちょうどいい。そのあとに麦茶を再び飲むと、スッキリして生き返る気分だ。前方には左カーブが見える。あの先は・・・

この旧道では最後の休憩(そんなに大したものではないが)を取って出発したすぐあと・・・きたきた!。右から現道が近づいてくる。もうすぐ合流点だ。左右から草が侵食し始めている旧道は、もしかすると交通量はあまりないのかもしれない。現道を通行する車のロードノイズが聞こえてくる。この旧道も、今の現道が局改で開通する前のおよそ50年前は、あんなに賑やかだったのかなぁと思うと、栄枯盛衰を感じる。

ここまで来ると道幅は極端に狭くなり、車一台が通れるだけの幅しかない。路面は傷んで穴が開いているし、右側には色あせた看板が立ち尽くしている。この看板は50年前のものか?いやいや、まさかねぇ。だが、錆びついて草が絡みつくその姿は、なかなか貫禄があるものだ。立っている位置からすると現道に対して設置されたものではなく、旧道に対して設置されたものと思われる。近づいて確認してみよう。

ほとんど読み取れないまでに色あせて擦れてしまっているが、どうやら下半分はイラストで、上半分に標語らしき言葉が書かれていたようだ。その下には現在の自治体名称の阿賀町となる前の自治体名である「津川町」と「津川警察署」の文字がはっきりと残っている。これはやはり旧道の時代に設置されたものだろう。今までよくぞ撤去されなくて残っていたものだ。この旧道の探索の最後を飾るに相応しい、歴史ある看板(←と勝手にそう思っている)と出会えて良かった。

交通量は少なくなったものの、今でも福取の集落へ向かう道として役目を果たす旧道を、今も守っている山側の擁壁。ここまでずっと旧道と寄り添ってきた電線も、ちゃんと一枚に納まっている。思えばこの探索の途中、この電線も旧道と一緒に山を越えてきた。現道の福取トンネルの中を通した方がいいような気もするが、そこは移設しない何かの理由があるのだろう。

ところでこの擁壁、下半分は古くて粗石コンクリートのように見える。一番右側に写り込んでいる、現代の技術で造られた白いコンクリートの擁壁との違いが比べられて、非常に面白い。

さあ、現道との合流だ!。ここが旧道と現道の分岐点であり、ここから数百メートル先に行くと、今度は八ツ田の集落、そして鳥井峠へ向かう道が右に分岐する。越後街道時代の鳥井峠は現在と違う道を通っているが、三島通庸が車道として開通させた道はこの道だ。それが二級国道115号となり、やがて一級国道49号に昇格。局所改良で昭和40年代に改修が始まり、1971年(昭和46年)に現道と切り替えになるまでの三島の道を辿ってきた(この辺の過程は、一番最初の導入部をご覧いただきたい)。

途中クマに出会いそうになったり、頭の中に「ダンシングクイーン」が鳴り響いたり、暑くてたびたび休憩したりと、なかなか思い出に残る旧道となったこの峠は、峠までの道が陰となるなら非常に明るい陰の道だった。しかも暑いし(笑)。一言でいえば全体的に明るい峠道で、(クマを除けば)楽しかったというのが率直な感想だ。このあと、私は新潟へ戻りながら更に途中の旧道へ探索を重ねていくのだが、そのレポートはまたの機会に。ただ、その機会はきっとそんなに遠くないと思う。

いくつか見かけることが出来た通行記録の最後が2018年の11月。その前は2015年の8月。数えるほどしかないその記録のほとんどが、途中からヤブに阻まれて通行できずに終わっていた峠道。「激ヤブの峠道」との印象が強い、歴史ある惣座峠をレポート出来て、もう一度表舞台に引っ張り出すことが出来たと思うと、自己満足とは思うが非常に嬉しい。

いつかまた、この道を通ってみたい。
そう思いながら、この峠を後にした。

一般国道49号
福取トンネル旧道
惣座峠

完結。