一般国道49号
福取トンネル旧道
惣座峠 第11部
2022年5月4日 探索 2022年8月24日 公開
綺麗に刈り取られたように道の跡が続く旧道。この峠道全体に言えることだが、私が登ってきた福取の集落とは反対側の峠入口の一部を除いて、峠を登り切った時のような解放感満点の空がずっと続いていた。それはもうすぐ福取の集落に辿り着こうとしているここまで来た今もずっと続いている。これまで私が通ってきた長岡の沖見峠や榎峠、村上の雷峠、十日町の三坂峠など、ほとんどの峠は光と影があったものだけど、この峠はずっと光のままだった(そのお陰で私は常時汗をかいて熱中症になりかけたのだが)こんな明るい峠道(なんだか、鹿児島の焼酎みたいな名前だが(笑))は、後世に永く残ってほしいと思う。だって、通ってて楽しいじゃない。
こんな爽快な空の下、明るい峠道をのんびりとポツポツ歩いている。私はホントに旧道を探索しているのだろうかと疑問に思うほど、穏やかな探索風景になっている。こんなことは珍しい。ほとんどの場合はヤブ漕ぎしていたり、崩れた斜面をトラバースしていたり、峠の隧道で時間を忘れて撮影していたりばかりなのだが、こんなにのんびりした散歩のような探索も、時にはいいものだ(少し平和過ぎる気もするが(笑))。
ところで、ここに来て少し風が出てきた。決して強風ではなく、火照った身体をやさしく撫でて冷ましてくれるような心地いい風だ。その風に乗って、この時季特有の新緑の香りも漂ってくる。例えるなら、桜が咲き終わって葉桜になった時に漂ってくる、あの香りが山全体を包んでいるようで、思わず立ち止まってその香りを堪能してしまった。
道の右側の斜面を覗き込むと、こんな空間が広がっていた。この旧道の下に広がる平地は何だろう?。それが何なのかはわからないが、このまま整備すると素敵な公園になりそうな雰囲気だ。ポツポツと立っている木はヤマザクラだろうか。探索する時季がもう少し早かったら、満開の山桜が出迎えてくれたかもしれない。(見方によっては鉄道施設の「スイッチバック」の跡地のようにも見えてしまうと言うのはナイショだ(笑))。
どうもここは旧道のど真ん中に電柱が施設されているようで、左の路肩と電柱の幅が道幅と見てしまえば、本来の姿を見失ってしまう。ここまで来ると道幅は広くなり、このまま惣座峠に突っ込んでいっているようだ。旧道の右側に広がる広大な空き地は耕作放棄地だと思うが、もしかするとこの辺りにも集落があったのかもしれない。ここは新潟県と福島県の県境の雪深い地だが、こんな山中に拓けた隠れ里のような集落があったら・・・。先ほどから吹いている優しい風と共に、その風景が目の前に広がってくるかのようだ。
さっきから歩く速度が極端に遅くなっている。なぜか。それは、この景色を満喫しながらの~んびりと歩いているからだ。これまでにない「遅さ」と言ってもいいかもしれない(笑)。
前方に杉の木が不自然に分かれたところが見えるが、あれがおそらく惣座峠だ。その昔、多くの人がここを歩いて鳥井峠へ向かったことだろう。
今回の探索は、実はこの惣座峠で終わりではなく、その先の国道49号への合流点がゴールなので、この旧道の始まりから終わりまでをくまなくレポートすることになるが、この惣座峠の記録として残しておきたいと思う。
やがて道は未舗装路から舗装路へ。ひび割れたアスファルトが旧道の雰囲気を存分に醸し出している。ここから見える右側には杉の木が。下枝が綺麗に伐採されているところを見ると、普段からきちんと手が入れられているのだろう。そして、あの右カーブを曲がると惣座峠だ。ここまで、クマと遭遇したり、アバの「ダンシングクイーン」が頭の中に流れていたり、葉桜の香りを満喫したりと、とても印象深い峠道だった。少し名残惜しいが、探索はまだ続く。