一般国道113号
明沢トンネル旧道
第3部

2022年4月17日 探索 2022年5月28日 公開

持ってきたルイボスティーで一息入れると、やや体温が上がって火照っていた身体が一気にクールダウンする。私が今いる場所は現道とも離れていて(と言うか現道は明沢トンネルで山の中)空気を汚す要素がないので、深呼吸しても空気が非常に美味しい。普段は一応政令指定都市に住んでいる身としては、探索中に休憩した場所の空気はどこも非常に美味しく感じる。

・・・え?なんでルイボスティーなどと、お前に似つかわしくないオシャンティーなものを飲んでるのかって?。それはカフェインが入ってないから。カフェインは利尿剤としても作用するので、変な話だが探索中に催しても困るわけですよ。
・・・男子なのだから、その辺で用を足せばいいじゃないかって?。いやいや、動物からしたらマーキングになってしまうかもなので、野生生物を変に刺激したくもないし、それで襲われても困る。
・・・ん?お前に似合わないって?。そりゃ自負してます(笑)。

ところでだ。休憩中に少し辺りをウロウロしてみると、落石防止ネットを見つける。思った通り、原型を留めないほど傷んでいて、まるで役目を終えた躯(むくろ)のようだ。それでも、この道が現道だった時代には、斜面が崩れるのを必死で抑えていたのだろう。やがて旧道となり、交通量がほとんどない今は管理の手が及ぶこともなく、崩れた土砂にその身を引き裂かれてしまったと思われた。どんなに屈強な施設でも、落石防止ネットのような施設でも、管理されなければやがて傷み、その生涯を終えることになる。やはり、きちんと管理されると言うのは大切なことなのだ。

さて、出発だ。第1の目標である橋の地点まではまだまだ先なので、それまで崩れるなどなければ、この旧道を堪能することが出来て、なおかつ自らの命の洗濯をすることが出来る。それは非常に喜ばしいことだ。
自らのその役目を終えた落石防止ネットに「お疲れさま」と声をかけて出発すると、その先に広がるのは春の訪れを待つ山々に住んだ青空、それにアクセントを加える残雪。これはこの旧道を辿っている今しか見ることが出来ない極上の景色で、そのコントラストが非常に美しい。
思わず「これなんだよなぁー!」と口に出るが、それはなんだか某CMの斎藤工氏のようで、一人でこっぱずかしくなってしまった(笑)。

またまたよせばいいのに、旧道の脇から見える明沢川を覗き込んでみる。ここから水面までは10mほどの高さだろうか。いやもっとあるかもしれない。どちらにしても、見ているだけでも足がすくむ。しかし、明沢川の対岸には川に直接落ちていくかのような雪の斜面があり、山の栄養を川に託しているのだなと思うと、その斜面もなんだか感慨深い。

視線を道に戻すと、雪がない本来の路面が見えている区間に出た。これが本来のこの道の姿で、現道当時の道の姿でもあるだろう。こういった道に例外なく、相変わらず路肩保護施設と言うものは潔いほど一切ない(この道でも最初のところはまだガードロープとかあったんだけどね)。この道の一番標高が高い場所はどうやらこの辺のようで、正面に見える山々の姿が非常に近く見えて、さっきよりも更に景色が鮮やかに見える。

路面には落石の跡も見え、車が通ったであろうダブルトラックの跡も見える。路面に落ちた石は角が鋭角で、これをタイヤで踏んだらパンクしそうだ。

落石の場所を過ぎると、路面にはまた積雪が。この場所は燦燦と日差しが降り注いでいるので、他の場所よりも早く溶けそうな気もするのだが。ここはこの旧道で一番高い標高の地点で、ここを過ぎれば右に大きく回り込んで今度は下りに転ずる。そうなれば、あとは明沢橋に向かって進んでいくだけだったはず。手元の地図を確認してみると、等高線に沿ってほとんど直進で下っていっているので、かなりの下り勾配で下ると思われるが・・・

左の遥か下には米坂線の線路が見える。これを見ても、今私がいるこの位置が結構高いことがわかるだろう。だが、道幅は結構狭くて山側には積雪が残り、歩くには慎重にならないといけない。万が一にでも足元を滑らせたら、米坂線まで一直線だ。高いところがあまり得意ではない私には、この高さは少々頂けなかったのは言うまでもない。ガードロープでもあればいいんだけどなぁ・・・。

回り込んで下り区間に入り、暫く路面の積雪と格闘して下って一息ついてから、振り返って撮影したのがこの画像だ。山側の斜面には雪が残って非常に歩きにくかったが、何とかここまで来た。この辺りの道幅が非常に狭く見えるのは、おそらく路肩側が崩れてしまっているためで、おまけに急勾配。現役だったころは、ここは結構な難所だったんじゃないか。ほとんど直線のここの勾配は冬の積雪時期になると上がるに難所、下るに難所だっただろう。

道はこの先更に下って、いよいよ今回の目的の場所、明沢橋旧道に辿り着くはず。
この急勾配もまだ続くはずで、慎重に降りていこう。

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