一般国道113号
明沢トンネル旧道
第1部

2022年4月17日 探索 2022年5月20日 公開

それではこの旧道に入って行こう。ここはまだほんの入口なのだが、それにしては右側に見えるコンクリート壁の圧迫感がもの凄い。実はこれは現道の明沢トンネルの坑道で、このように地山から坑道と坑門が飛び出しているのだ。果たして雪氷対策か落石対策か。その全長は、前方に見えている旧道が左にカーブする地点まで、優に2~30メートル(もっとか?)はありそうだ。

その旧道は路面こそ未舗装なもののダブルトラックが刻まれていて、自動車の通行があることを教えてくれている。もちろん、今は雪があちこちに残っている状態で通行はないようだが、路面の枯草の状態を見ると、夏でもヤブで通れなくなると言うことはなさそうだ。

やめときゃいいのに、高いところが苦手にも関わらず、下を流れる明沢川の様子を路肩から覗き込んでみる。水面まで優に10m以上はあるだろうか。落ちたら一巻の終わりだ。手前に見えるコンクリート塊は路肩が崩れたものか。結構派手に崩れてしまっているが、その手前に土に埋もれて少しだけ顔を出している、ひしゃげたガードレールを見つける。
もちろん、現道時代にはこのガードレールはちゃんと「普通の高さ」で設置されていただろうから、埋もれてしまっていると言うことは長年の土が堆積したのか、それとも土砂崩れによるものかだが…おそらく後者のような気がする。

左側路肩にはガードロープ。右側の坑道の上からは沢の水が滴り落ちていて、その流れが固く締まった路盤を一部掘り下げ、路面を横断している。きっと長年の間にこうなってしまったのだろう、旧道化してからの時間の長さを感じる風景だ。左側には杉林、その更に外側には、画像に写ってはいないが米坂線の線路がある。手元の地図で確認してみると、この旧道はこの先、明沢川の脇を通る米坂線とつかず離れずで通っているようだ。旧道と鉄道とはなかなかに萌える組み合わせで、うまくタイミングが合って列車が来れば、いい画像が撮影できそうな気がする。

でもなぁ…普段撮影しているのが道路、それも旧道や廃道ばっかりだからなぁ…
果たしてちゃんと撮影できるか?(笑)

探索当日は快晴で、光量も十分すぎるほどだった。だがそれほど気温は上がらず、この探索の時には長袖を着用していたがさほど汗ばむこともなく、絶好の探索日和だったわけだが、いかんせん路面に残った雪が光を反射して、どう撮影しても白が飛んでしまい、これには閉口した。まぁ全体的な雰囲気は掴めるからいいんだろうけど…。
ところで、路面の雪はご覧の通り結構な量になってきた。長靴を履いているので歩くのに支障はないが、何か踏み抜かないかとそれだけが心配だ。右側に見える山側の斜面は明らかに崩れていて、現道当時の様子じゃないなと言うことが見て取れる。この辺は現道の明沢トンネルがいよいよ山の中に突っ込んでいくところ。旧道は現道と別れ、明沢川沿いを米坂線と共に進んでいく。

路面にしこたま残る雪。やや崩れた山側の法面。路肩には手入れされていない杉の木。その中を進んでいく1.5車線程の狭い道。…いかにも「旧道」と言った雰囲気の道が続く。路面には下草が枯れた姿も見られず、この大きく緩やかなカーブの道は積雪がなければ素晴らしい景色が広がっていたことだろう。雪が無くなったころに、もう一度来てみようか。そんなことを思いながら歩いていく。ここまで来ると現道の喧騒は全くなく、辺りに響いているのは時折聞こえる小鳥が囀る声だけで、心の洗濯中と言ったところか。

左カーブを抜けると一気に視界が広がるような気がした。それは、まっすぐ進む道が更にこの先で右カーブとなり、山を回り込むような感じで進んでいるからだ。そこは日の当たる場所だけ雪が融けて、本来の路面が露出している。正面の山々に未舗装の旧道、実にいい感じじゃないか。雪が消えればそれはそれで絶景が広がることだろう。

それにしてもこの道は倒木が少なくて助かる。ここで倒木があると、自分で言うのもなんだが私の短い脚を精一杯上に上げて越えなくてはいけなくなるから、結構大変なのだ。
さ、まずは先に見える右カーブまで進んでみようか。そこから、その先へ進むか決めよう。

おおっと!

やっぱり予想通りだ!。右カーブから先の道も路面は雪に覆われていた。
しかし、路肩が崩れていたり山側が崩れていたりしていることはなさそうだ。従って、まずは路盤は安定していると思う。足元は幸いにも長靴を履いているから、雪で濡れて…と言うことはなさそうだ。…どうする?進むか?。

正面に見える山々の連なりと、右へ左へカーブを繰り返しながら峠を下っていく旧道。ここは三島が拓いた道。と言うことは、ここを多くの人々が、様々な交通の方法で行き交ったはず。ここを通る人々はどんな思いでこの風景を眺め、目的地へ向かったのか。あの山々をこれから越える旅人の想いで正面の山を見つめ、この場所にしばし立ち尽くして想いを馳せていた。

第2部へ