一般国道113号
明沢トンネル旧道
第2部

2022年4月17日 探索 2022年5月24日 公開

これから正面に見える山々を越える旅人の想いで見つめ、しばし立ち尽くして想いを馳せた私は(実際には越えないけどね)、先へ進むべくようやく歩みを始めた。やや崩れかけた山側の斜面はもちろんのこと、左側の路肩にもガードレールやデリニエータなどの施設は一切なく(もしかするとガードロープくらいは埋まっているのかもしれないが)、照明もない。すなわち、ここを走る車は自らのヘッドライトのみで走らなくてはならなかったと言うことだ。今のように明るいヘッドライトではない当時の車は、ここを走るのにそれが夜だったりすると、非常に怖かったことだろう。私も出来れば遠慮したい。

でも、ここから見える旧道の風景は昔の峠道の風景を今も残している風景で、実に感慨深い。「それまでの山越えの道などではなく、とりあえず人や車が安心して通れる勾配の緩やかな車道を造らないと、その地域の発展はない」と考えた三島通庸の想いが伝わってくるようだ。

そんなことを思いながら歩いていると、路面の雪が途切れたところに何やら獣のフンらしきものを見つける。コロコロと球状のもので、もしかするとこのフンの主は鹿だろうか。それにしてはフンの大きさが小さいような気がするけど…。
ところで鹿と言えば、私は当時勤めていた会社の転勤で新潟にやってきたが、その前は大阪府箕面市に住んでいた。当時は夜勤が主体で、仕事明けの気分転換も兼ねて箕面の山中の道をよく走っていたが、その時に遭遇した鹿以来だ(思えばこの頃から旧道に縁があったのかも。この時の道も確か府道の旧道だったような気がする)。この山にも主の獣はちゃんといるようだ。

ところで余談だが、私は探索の際に山に入るときは、いつも「お客様」のつもりで探索をしている。それはすなわち、山で生活しているのは熊や鹿、猿などの自然動物で、言わば山は彼らの家という考え方だ。そして、そこに入っていく私たち人間はお客様。私たち人間が彼らの住処に入っていくわけで「家を訪ねる以上、そこには礼節が必要だろう」ということを思っている。町の中では人間が優位かもしれないが、森の中までも人間が優位なんじゃないもんね。

雪は残っているけど路面は明確。もう少し進んでみようと言うことで進んでいる最中に撮影したのがこの画像。この時季の路面にこの積雪。今、私が見ている風景は旧道なので交通量も少なくなり、それでこんなに雪が残っているんだと言うことになりがちだが、よく考えてみると、この道が現役の時にもこのくらい積もっていたはずなのだ(除雪はしていただろうが)。
その道が、こんなに積雪があったらどうだろうか。たぶん、今の基準だと通行止めになっていたことだろう。なるほど、局改(局所改良)を行うには、それなりの理由があると言うことを、改めて教えられた気がした。

道路の部分だけ避けるように木が生えて、今でもどうぞと言わんばかりに路盤が残っている旧道。もしかすると、ここは地元の方々の手が入って下草が刈り取られているとか、そんな形で保存されている道なのかもしれない。いくら雪が積もっているからとは言え、ここまで綺麗に道筋が残っていると、そう思えてしまう。
ふと、右の山側の斜面の上に目が留まる。結構危なそうなことになっているようだ。

と言うことで、近くで山側を見あげてみると、このようになっていた。長年の風化や侵食によって斜面が激しく抉られてしまい、非常に不安定な状態になってしまっている。ここから見上げる端っこに誰か立とうものなら、あっという間に崩れて下に落ちてしまうだろう。やっぱり探索中は頭の上も足元も、周囲にしっかり注意を払って進まなければいけない。

路面に残っている雪を踏みしめつつ先へ進んでいく。ここから見る限りは一見穏やかな道のように見えるが、先の斜面に緑色のようなものが垂れ下がっているのが目に入った。それはどう見ても「苔」などの色ではなく、人工物の色に見える。もしかして、落石防止ネットなどの類かな。だとするなら、もう既にボロボロになっていて、その目的の用途をほとんど果たしていない。やはり、ここも他の旧道の例に倣ったかのように、落石が多発したのだろうか。

まだまだ先は長い。ここで少し休憩して、水分補給することにしよう。

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