一般国道49号
七折峠 旧旧道編 第8部

2021年3月20日・2021年4月11日 探索
2021年6月26日 公開

ヤツの影

いよいよ「管理する目的がない」区間の始まり。これまでは電線の管理道や七折峠トンネル工事など、何かの理由で最低限の人の手が入り、最低限の管理がなされていたようが、ここからは違う。全く管理されていないであろう区間であるが故に、純粋な旧旧道の区間とも言えるから、往時の面影を一番よく残しているんじゃないかと思う。
それだからかどうかはわからないが、ここにきてこれまで足元に密集して纏わりついていた笹が、非常に少なくなってくる。おかげで非常に歩きやすく、周囲を見回しながら歩くと言う精神的な余裕が生まれてきて、これまで以上に旧旧道の様子をじっくりと観察しながら進むことが出来ていた。画像は、そうして進んでいた私の目の前に現れた、倒木のゲート(とでも言うのだろうか)。何かの理由で山側の法面にもたれかかる様になっているが、山側に倒れ込むというのも珍しい気がして撮影。そのあと、何気なく路面を見ると…

動物の足跡がある。

融雪の影響だろうか、路面が泥濘まではいかないが、多少柔らかくなっていた路面。私は長靴を履いているので、一向に気にせず歩いていけるのだが、問題はその路面に何やら動物の足跡が残っていたことだ。
この足跡はサルだろうか。でも、それにしてはなんだか大きい気がする。それに、肉球と思われる部分も、サルにしてはなんだかボリューミーじゃないか。となると、この足跡の持ち主はもうアレしかない。

…クマだ。

クマ鈴に、複数人の声がするラジオを鳴らして、クマ撃退用スプレーも装備してはいるものの、出来れば出会いたくない。一気に緊張感が全身に走るが、落ち着いて辺りの気配を確認すると、周りにそれらしき気配はなさそうだ。ひとまず先に進むことにするが、辺りを警戒しながらじっくりと観察して、なおかつ早めに先へ進むという、なかなか高度な状態を強いられることになってしまった。



…出来るだけ早めに進まないといけないのに、こういう時に限って、じっくりと見てみたい場所に出くわしてしまう。
なかなか意地悪なやつじゃないか、七折峠(笑)。
ひとまず左側の斜面の上に何か動物の影がないか注意しつつ、この構造物を観察していくが、こうして眺めていると路面の左側には石垣がありそうに見える。実際にまじまじと眺めてみると、これは石垣ではなく、単なる安定した土の壁だった。
でも、この壁が石垣であろうが土の壁であろうが、それらしい旧旧道の雰囲気を現在に示してくれている、貴重な構造物であることに間違いはない。しっかり眺めて、きっちり記録に残して、この道の風景が出来る限り後世に永く残るようにしたいと思う。

とても魅力的な擁壁を越えて先に進むと、今度は左カーブの開放的な場所に出る。もちろん、この場所は旧旧道の路盤で、1.5車線の道幅の道が地図の等高線の通りに斜面を回り込んで先に進んでいく。その旧旧道の路盤に少し邪魔な物と言えば、不法投棄されたと思しき錆びたドラム缶だろうか。この美しい風景に、いささか場違いな気がする。でも、これを回収しようにもここまで車が入ってこれないから、回収する場合は人力になるんだろうな。中に何が入っているかわからないから、とても危険ではある。

上の画像の、ドラム缶を越えたところで撮影してみると、この通り旧旧道らしい往時の雰囲気満載の景色が目の前に広がる。左カーブで緩やかに降りていく線形は、明治車道そのものの線形で、きっと多くの牛車や馬車が行き来したことだろう。
何となく路面が妙に綺麗なことが気になる。さっき「管理されていない区間」と書いたが、もしかすると、下草の刈り払いなどは行われているのかもしれない。

左カーブを回り込んでいくと、道は更に緩やかに下っていく。前方の地面が右に傾斜しているのにお気づきだろうか。
旧旧道はおそらくあの辺りから方向を変え、今度は右下の方向へ更に下っていく線形を取るんだろうな、と言う気がしていた。御覧の通り、路面には笹もなく下草も生えていなくて、これが冬枯れによるものなのか刈り払いが行われているのかはわからないが、この路面の状態を見る限りでは、おそらく後者だろう。春の景色を満載した七折峠の旧旧道。実に心地よく、爽やかで気持ちいい。



目の前に、いきなりガードレールが現れる。これまで旧旧道の雰囲気を満喫していただけに、やや興醒めの嫌いがあるが、なぜにこんなところに唐突にガードレール?の疑問が大きかった。だが、それはすぐに解決した。ヒントは左上の赤い橋だ。あれは旧道上に架かっている七折橋だ。
チェンジ後の画像は、旧旧道上から七折橋を見上げたもので、橋の形式は方丈ラーメン橋だろう。…七折橋と言うことは、ここから左に曲がって沢を目指すと、沢の名称にもなった「木の根坂」だろうか。

橋梁の主桁は、その荷重の作用や周りの温度変化の影響により、どうしても伸縮や回転などの変形を起こす。そこで主桁と橋台や橋脚の間には「支承」と呼ばれる伸縮や回転を吸収する部位を設けるのが一般的なのだが、ラーメン橋はこの「支承」を設けず、主桁と橋脚や橋台を剛結する橋梁である(ところで「ラーメン」とは『骨組み』を意味するドイツ語の「Rahmen」に由来するもので、俗にいう「味噌ラーメン」などの「ラーメン」ではないので注意されたい(私は味噌も醤油も豚骨も魚介も好きだけど(笑))。英語ではラーメン橋のことを「Rigid frame bridge(リジッドフレームブリッジ)」と表現する)。この七折橋では「木の根坂沢」と言う沢の深い谷を渡るが、橋桁の中間に橋脚が立てられなかったので、橋脚部材を斜めに配置したこの「方杖ラーメン橋」と言う形式が採用されたと思われる。この橋梁形式は橋脚を斜めに配置することにより上部構造の橋桁の見かけの支間を小さくすることができるため美観に優れ、鋼橋としてこの形式を採用する事例も多いと聞く。(参考資料…Wikipedia)


ところで、道はここから折り返して更に下っていくが、その道のりは…

フェンスの外側は…?
もしかして?

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