一般国道49号
七折峠 旧旧道編 第7部
2021年3月20日・2021年4月11日 探索
2021年6月22日 公開
街道時代の姿を残す道へ
前回、その可憐な花で旧旧道を彩って私を癒してくれた桜に別れを告げて、更に奥に辿っていく。相変わらず笹が路面を覆っているものの、その高さはさほどではなく、歩くには支障はないくらいの高さだ。それよりも、この道を歩いている気分が非常に爽やかで気持ちいい。ここに立って旧旧道の風景を眺めていると、この道が現役だった当時の風景が目の前に蘇るようで楽しい。
おおっ!ヤブを抜けたか?
旧旧道の雰囲気を立ち止まって存分に楽しんだあと、先を目指して少し進むと、これまで足元に纏わりついて進むのに難儀していた笹のヤブが若干マシになってきた。左の法面の上には、これまで通ってきた旧旧道の路盤(おそらくは最初の頃の路盤だろう)が見え隠れしていて、この道がつづら折りで下っていることを実感させてくれる。その中、一本だけ路盤の右路肩側に立っている電柱が、この旧旧道の存在意義を意味するようで印象深い。それは、この電線の管理道としても使われているのだろうということで、この電線が現役である限り、この旧旧道は必要最低限の管理はされていくと思う。
実は私は、普通こういった峠道に設置されている電線や電柱の類は、その道沿いに敷設されているものだと勝手に思っていた。だが、この峠に設置されている電線はさにあらず、上から下に一直線に設置されていて、初めて見たときには「おお!」と驚いてしまった(笑)。
いやぁ、旧道と言うのはこんなところでも新しい発見をさせてくれて、実に面白い。
直滑降する電線にひとしきり驚いた後、旧旧道を更に辿っていく。誰かが日常的に通っているのか路面の真ん中だけ踏み分けた跡があって、林の奥に続いていく。特徴的な足跡が見当たらず、どうやらプーさん(クマ)ではないようで、踏み分けの主は山菜取りの方々だろうか。
先ほど休憩してからさほど時間は経っていないものの、高い気温やずっと日差しの下にいたせいもあって、やや疲れてきた。この先の日陰で少し休憩して、水分補給することにしよう。
左側の法面は地形図に記された等高線の通りで、その等高線通りに回り込むように林の中に突っ込んで行く旧旧道。昔の道によく見られる、地形に抗うことなく進んでいく道の姿そのもの。その昔は多くの旅人がこの道を歩いて上毛地方(現在の群馬県沼田市方面)や越後地方(現在の新潟県方面)に向かったはずで、その道に今こうして自分が立っていることは感慨深い。当時の旅人たちも、この辺りで一息入れたのだろうか。
日陰で休憩しようと思っていたことも忘れ、この景色に引き込まれていく自分がいる。日陰であるが故だろうか、これまで足元に纏わりつくように存在していた笹の姿はここだけは見当たらず、土の感触がしっかり伝わる道になっている。それこそ、林に囲まれたこの区間にはガードレールもデリニエータも何もないが、これまで通ってきたこの旧旧道のどの場所よりも雰囲気も空気も違っていて、ここがこの旧旧道の往時の姿を一番よく残している場所だろうと直感的に感じた。
なんだろう…一言で言えば実に落ち着く、そんな空間だ。
明暗のコントラストが実に美しい。左は法面、右は路肩、その間に存在する1.5車線ほどの幅を持つ旧旧道の路盤。ここで休憩することにして、撮影機材が詰まった背中のリュックを下ろすと、汗ばんだ背中に涼しい風が吹き抜ける。
近くに横たわっていた倒木に浅く腰掛け、持ってきた麦茶を飲んで一息つくと、普段の生活で体中に溜まっていた「よくないもの」が全身から一気に発散されていくようで、実に気持ちいい。
辺りには木々の間を吹き抜ける風の音しかしないが、普段は街の喧騒に慣れている耳にとっては、それが非常に心地よく、生き返る気分だ。
休憩を終えて、次の区間へ出発だ。
ここから先へ進むと旧道の七折橋の真下に出るはずで、旧旧道はそこで180度方向を変えて現在の道筋へ向かっている。そのはずなのだが…ここにきて道筋がやや荒れ気味になってくる。足元の笹のヤブもまた深くなってくるし、倒木も見られるようになってきた。
考えてみると、先ほどの電線があった区間までは電線の管理道として、この先の七折橋の下から先は七折橋の管理道として、それぞれ用途がある。つまり、これから私が進もうとしている区間が、それこそ「管理する目的がない区間」と言うことになるではないか!。…こりゃあ、この先は荒れているかもしれないな…。そう思いながら、笹を掻き分けて先へ進む。