新潟県主要地方道56号
小千谷大沢線 第9部

2022年7月24日 探索 2022年10月15日 公開

ヘキサが立っていることを期待して右カーブを回ってみるものの、やはりヘキサはなかったが、その代わりに今日の青空に映える、こんな風景が待っていた。木々の隙間から覗き見える青空は周りの緑と調和して美しく、夏の強い日差しは木々の葉によって遮られ、木漏れ日となって路面に降り注いでいる。
その路面の左の路肩には掘っただけの側溝があって、およそ山中を走る他の道にありがちな「詰まっている」ということはなさそうだ。路面も草生しているということはなく、道全体に「手が入れられている」ということがわかる。やはり「未舗装でも一応は主要地方道」ということか。

木漏れ日の林の中を抜けて先へ進むと、右の路肩にここが県道だと言う証拠を見つけた!。
そいつは砂利道の路肩に半ば草に埋もれながら、小さく身を隠すようにコソッと立っていたが、その存在はこの道が県道であるということを知らしめるためにはあまりに大きい存在だ。…などと画像が見えているのに、あーだこーだ言っても仕方ない(笑)。
その存在は「デリニエータ」。そこにはちゃんと「新潟県」の文字が刻まれている。頭についている反射材は長年の風雨に晒されたためか、すっかり曇ってしまって傷んではいるものの、こんな山の中の道で路肩を守ってきたという自信と誇りに満ち溢れた姿ではないか(←そこまで持ち上げなくてもいい)。

路面には鮮やかなダブルトラックが付くようになり、この道の本来の姿(?)に戻った。前方を見ると、路肩にもうひとつデリニエータが立っているのが見える。その手前の、右の谷側の路肩がコンクリートで固められているところを見ると、ここは以前に路盤が崩れてしまった箇所のようだ。その復旧工事を行った際にデリニエータが設置されたのだろう。
ここは周りに茂る木々が路面に覆いかぶさるようになっていて、太陽の位置も相まって一帯が日陰になっており、日陰の涼やかな空気が風となって駆け抜けて涼しかった。現在位置の確認も含めて、ここで少し休憩することにしよう。

夏の探索にはもうすっかりおなじみとなった、個包装の梅干しと麦茶。今日もこれで熱中症を予防しよう。最初に導入した(なんて大げさなもんでもないが)のは、5月に探索した国道49号の惣座峠だったか。あの日も5月にしては暑い日で、クマの存在に怯えながら探索してたなぁ…と、山の中で一人遠い目をして振り返る。だが、誰も見ていないので意味がない(笑)。

梅干しをかじりながら、持ってきた地図を確認する。汚い文字であれこれ書き込まれて、ところどころにピンク色のシミがついてしまっているが、このシミの正体は梅干しの漬け汁だ。鼻を近づけると微かに梅干しの匂いがする。その地図を眺めてみると、休憩しているこの地点から、ゴールとしている峠まで、さほど距離はなさそうだ。
この道はこの先、短い距離で市境を二つ越える。十日町市(小白倉卯)と長岡市(小国町山野田)、柏崎市(高柳町大沢)で、私が今いる地点はその十日町市と長岡市の市境上のはずだ。新潟県ではそれぞれの地域を地域振興局で管理していて、その境界線上には必ず境界を示す表示板が設置されているので、この辺りに十日町地域振興局と長岡地域振興局の表示板があるはずだが…。さて、体力も回復したことだし、先へ進もう。

路肩に茂る草の上から下を覗き込むという、およそ高いところが苦手な私からすると珍しいことをした先に見えた風景は、これまで通ってきたこの道の姿が見えるというものだった。未舗装ではないところからすると結構手前のはずだが、それにしては道の高低差がそれほどではない。道の勾配が緩やかなところを見ると、この道は明治車道じゃないだろうか?と言う疑問が湧いてくる。

(明治車道…明治時代に開削された車道のことで、それまでの旧街道が改良された場合もある。要はそれまでの徒歩道から、荷を積んだ牛車や馬車が通れるように勾配を極力緩やかにしたもので、徒歩道と比較すると距離は長くなるが、運べる荷物の量が飛躍的に増えるという利点がある。)

そう考えると、これまでさほど急な勾配はなかったなぁ…と、この風景を眺めながら思った。途中には田圃や畑の跡もあったし、そこまで農機具を運ぶにも牛や馬の力が必要だっただろうから、車道に改良されたのは理由が付く。…などと、あれこれ考えを巡らせるが答えは出ない。戻ってから調べることにして、先へ進もう。

この道は本当に面白い。先ほど、車道について考えを巡らせた場所から先へ進み、左カーブを過ぎると、こんな道の風景が広がった。趣き豊かな並木道。程よく手入れされていることが見て取れる。勾配はここも緩やかで、この位なら牛車や馬車は楽に上がれただろう。そうすると、この道は旧街道だったのか。ここまで通ってきた道の風景が頭に浮かんでは消えていくが、当たり前だがその答えは見つからないので、机上調査してみるしかないだろう。この道、実は結構奥深いのかもしれないなぁなどと思いながら、自転車を押して登っていく。…が、やはり上り坂は上り坂。いささか腹が出た中年のオッサンが自転車を押して上がると、息が上がり気味になる。呼吸を深くするようにして登っていくと、随分楽になった。

振り返ると、こんな感じだ。こうしてみても、この辺りの勾配は一見やや急であるように見えるが、全体から見れば緩やかな勾配で上がっているので、まさに車道と言えるだろう。この道も峠に向けてラストスパートに入ったようで、その道と空の様子は「峠までさほど距離はないなぁ」と思わせるに十分。つい「ここでいきなり隧道とか現れてくれたら楽しいのに」などと思ってしまうが、そもそも隧道が現れるような道形じゃないし、それは贅沢と言うものか(笑)。

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