一般国道290号
人面トンネル旧道 人面峠
前編 第3部

2020年7月24日 探索 2021年3月10日 公開

狭くなってきた峠道

とうとう舗装されている道幅は車がどうこうの問題ではなく、人ひとりがやっと通れるだけになってしまった。こうなるとヤブ漕ぎも近いな…と思いながら先へ進んでいく。この先はどうやら笹が多いようだし、左右の森もなんだか深さを増してきた。人ひとり歩けるだけの道幅しかない旧道は、昔は広かったであろう元の道幅の範囲内で、右へ左へひょろひょろとふらつきながら進んでいるようだ。だから一見すると前方がヤブのように見えて、そのたびにヤブ漕ぎの覚悟をしなければいけないと言う繰り返しになっている。これから進んでいく前方の確認もあるし、もとより峠はまだ前半戦。先へ進もう。

多少先へ進んでも状況は変わらず、相変わらずのヤブだ。ここはまだそうでもないが、この調子でいくと、この先はどうなっていることやら先が思いやられる。私の装備はと言うと、手には皮のグローブ、頭にはヘルメット、足には長靴、胸には今回の相棒のD300がいて、一緒にヤブと戦ってくれている。ここはD300が壊れないようにしないといけない。水除けのために持ってきたビニール袋をかぶせた。

相変わらず道はヤブの中だが、ここで地理院地図をプリントした地図で現在位置を確認してみる。この空の位置と雰囲気、それに道の状況からすると、おそらく人面峠直前までは来ているようだが、峠自体はまだ超えていない(ここが峠なら道の前方がもっと明るくなっているはずだ)。だが御覧の通り道の状況は最悪で、こうして歩いていても路面が見えないほどのヤブに包まれている。それにしても…ヤブが深いなぁ!。

ヤブ漕ぎしながら先へ進んでいく。だが、こう見えてもなぜか路面にはアスファルトが残っていて、ぬかるんでいない分だけ非常に歩きやすく助かっている。ただ、こういったヤブにお決まりのツタも非常に元気で、笹の合間のあちこちにあるから、足を取られないようにしないといけない。こんなところでコケたくはないし、ケガはしたくないもんね。慎重に進もう。

濃くなってきたぞ!

いかん、ますます濃くなってきた。こりゃどう見ても森だなぁ。背が高い杉の木が元々の道幅を教えてくれてはいるものの、それは高いところから見ての話しで、地上から見るとこのようなヤブなのだ。でも、この旧道は地理院地図ではちゃんと二重線の「道路」として表現されているのだが…三坂峠以上に道になっていない道は、私の前に立ちはだかっている。さすが地理院地図。

ヤブに苦労しながら先へ進んでいると、路面のアスファルトが大きく見えている場所に出会えた。ここは上に木が覆い被さっていて、それもあって路面が草に覆われなかったのだろうと思う。そういえば心なしか周りの草も背が低いようだ。何らかの理由で路面に覆いかぶさっている木が周りの草の生育を阻んでいるのかもしれない。少しヤブも落ち着いてくるのかなと思ったら、それは甘かった…。

落ち着かないね、ヤブ!

わかっていましたよ、何となくね。ええ、わかっていましたとも。さっきの覆いかぶさった木の効果だけでは、このヤブが落ち着かないだろうなってことを(笑)。この人面峠の旧道は、その入口に案内の標柱が立っていたはず。入口だけ見ると「ハイキングでも通れますよ」というような雰囲気だったけど、実際は違った。これじゃ結構(かなり?)ハードではないか。

これだな

この旧道が誰も通らなくなった(車が通行できなくなった)一つの理由は、これかもしれない。目の前にある倒木だ。それまでの道に新道としてトンネルが開通して峠越えの道が旧道化しても、そうそう簡単に廃道になったりはしない。そこには何らかの理由が必要で、その理由の一つとして「倒木」は意外に多いと思う。倒木が廃道化を招いた例としては、国道113号の八ツ口旧道国道49号の石間石戸旧道がいい例で、この二つの旧道はいずれも町道として管理が移管した(八ツ口旧道は関川村道、石間石戸旧道は三川村道(のちに阿賀町道))ものの、災害の多さと倒木がきっかけで廃道化してしまった。逆に新潟県一般県道393号沖見峠トンネル旧道の場合は、地元の集落の方々がしっかり管理されていた(おそらく管理主体は新潟県)こともあって、今でも車の通行が出来る(軽トラや軽バンに限られる。普通車は途中の極狭ヘアピンカーブが通れない)。管理の仕方や、その後の災害の発生のいかんによって旧道の運命が決まると言っても、過言ではないのかもしれない。


ここから先、峠はさほど離れてはいないだろう。そこを過ぎれば明るい道が待っていると思うが、これまでの道の様子から、おそらく管理は全くされていないと思う。もしかして、激ヤブだったとしたら…その時はおとなしく撤退することにしよう。だが、今はその時じゃない。

進め!峠はもうすぐ!

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