一般国道113号
八ツ口旧道

2020年3月7日 探索・2020年3月15日 公開

その年は、例年になく雪が少ない年だった。
その年のある日、仕事で小国町に訪れた帰りに見つけた廃吊り橋の主塔を撮影していたところ、たまたま近くにいた地元の60代くらいの建設業者の方が私に声をかけてくれた。こういったシチュエーションは探索者としては非常にありがたく、例えば町史や記録にも出てこない、生の貴重な情報が頂けることが非常に多い。探索をしている途中で話しかけてきて頂けることは私は結構あり、そのたびにその方と話し込んでしまうのだが、今回もついついその建設業者の方とその廃吊り橋の話で会話が弾んでしまった。その会話の中で出てきたのが、この道だった。

荒川沿いの山裾を進むその道は、実は国道113号の旧道で、国道時代には冬になると大雪で通行止めになり、春になって雪が融け始めると雪崩で通行止め、雪が無くなると今度は崖崩れで通行止め。実に1年の半年以上が通行止めだったそうだ。これを解消するために新道が対岸に造られて通行止めの心配はなくなり、山裾を進むそれまでの道は旧道となって関川村道となったが、そんな災害が頻発していた道なもんだから村道になっても維持管理が大変で、いつしか誰も通らなくなり、やがてその道の半分以上が地形図からも抹消されてしまった。途中にあるロックシェッドの手前までは今でも行けると言うことだったが、下の地図中、右下で現道から分岐して橋のたもとから灰色の二重の点線に変わり、更にその先で灰色の実線(この実線は私が追加記述した)に変わる地点までが地図上に表示されている道で、ここがおそらくロックシェッドの位置だろうと思われた。その先に続く薄い灰色の実線が、地図上から消えた旧道の名残だ。

国土地理院の電子地形図(タイル)に注釈を追記して掲載

ご存知の通り、それまであった道路が地形図から抹消されたということは、道路としての用途廃止を行ったということでもある。でも、だからと言って道が完全になくなってしまったということではない。道の痕跡と言うのはそうそう簡単にはなくならないし、いくら一年の半分が災害で通行止めになっていたとは言っても現役の一般国道として活躍してきた道なのだから、当然道路を守るための構造物は今でも残っており、それらは荒川の対岸を走っている現道からも確認することが出来る。

この画像は、対岸から見た旧道の様子だ。
山に谷が切れ込んでいて、その下の水面に近いところの中央右側に構造物が見えるが、これはロックシェッドで今でも通行することが出来ると思う。だが、画像を拡大して確認してみると、結構傷んでいるようにも見えるのがいまいち不安なのだが…。このロックシェッドの他にも橋などの構造物が対岸から見えて、いかにも旧道といった雰囲気満載の道だ。この風景を見ると、この旧道がいかにも私を誘っているように見えた。

実は私は、この旧道の存在は以前から知っていた。そして、いつか通ってやろうと思っていたのだが、この旧道は夏には夏草が繁茂しまくって通行できる状態ではなく、冬には大量の積雪で非常に危険。春には雪解けのタイミングが難しく、秋には夏草が枯れる時期と降雪のタイミングが取りづらく、人を拒む旧道とはまさしくこのことかと思いながら通行できるタイミングを見計らっていた。そんな時に先ほどの建設業者さんのお話。
今年(2020年)は記録的に雪が少なく、積雪はない。しかし、寒さのために草は冬枯れで枯れている。「あの道を通るなら今年だよ」と言ってくれた業者の方の一言と、その週の週末が晴れの予報となったことが、探索決行のきっかけとなった。全行程は地図上で1.75Km、抹消区間は1Km。旧道としてはさほど長い道のりではないが、抹消された区間に何があるかわからない。探索時間はおよそ2時間程度を見込んだ。

通るからには一発勝負。
一度通れば、おそらく二度と通る機会はないだろう。
旧道から見える風景をカメラに収めて
絶対に完抜する。
そう心に決めて装備をしっかり整えて
旧道の入口に向かった。


その旧道の名は
一般国道113号 八ツ口旧道。


古くは小国新道と言われた
新潟県岩船郡関川村から山形県西置賜郡小国町に至る
国道113号の旧道の中でもエース級と
言ってもいいくらいの旧道だ。

さぁ、いくぞ!

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