一般国道113号
八ツ口旧道 第6部

2020年3月7日 探索・2020年4月8日 公開

貫禄の石垣を越えて

ロックシェッドを出てすぐ、路面が荒川に向かって斜めになるのと同じように、急な上り坂になって高度を上げていく。その道の途中で恐怖感を抑えて路肩側を撮影してみた。すると、路面から見るだけでは決してわからない場所に、強固に組まれた石垣が見えた。画像で言うと上部中央に見える木の根元辺りに見える石垣だ。だが、その手前に妙に新しい石垣が見える。これはきっと、この部分だけ後年になって崩れた部分だろう。ここだけ組まれたのが新しいから他よりも傷み具合が少ないし、組み方も違う。こうして目立たないところで道路を支えてきた構造物を発見してしまうと、なぜか感激してしまう。そこで何気なく更に川側を見てみると…

ひゃー…滑ってるなぁ…

真ん中の部分だけ、他の部分と明らかに違う滑り方をしているのがわかって頂けるだろうか。この滑り方はどう考えても周囲よりも後年に滑っている。ここに沢があって、その沢沿いに滑ったんだろうか。下が荒川じゃなけりゃ、雪が積もると滑り台になりそうな角度で落ちてるし、よく見てみると滑った部分だけ溝みたいになってるじゃないか。
なるほどねぇ。この道が現役だった当時を考えると、新道を作って切り替えた方が早いと考えるのは仕方ないかもしれない。

で、路面に戻ると先が見えなくなるほどの、この灌木の嵐だ。ここはやっぱりリュックに装着してあるナタの出番かと思ったが、こんなところでナタを振り回して灌木を切っていると、それこそゲームの主人公になってしまうのでやめておいた。まだバトルアックス(謎)を振り回すには早いだろう。仕方なく灌木を搔き分けて先へ進んでいくと…

おおっと!

来ましたねぇ!。こうでなくちゃ。崩れた石はまるでナイフみたいに先が尖っている。おまけにその石が路面の大半を覆ってしまっていて路肩も崩れてしまっているもんだから、どこを通りましょうかという状態になっている。おまけに倒木もあるじゃないか。ここで立ち尽くしてしまったが…。
だが、その奥を見て頂きたい!。路肩をガッチリと固めている石組みの強烈な擁壁が見えるだろうか!。冗談じゃない、こんなところで立ち尽くしている場合じゃない!。あの擁壁を見ないことには死ねない!(←オーバーだ)。慎重に、大胆に進もう!。

これはあかん!

あっ、思わずよだれが(←危険爆)
がっちり組まれた玉石の石垣と、その上にある錆びまくったガードロープの支柱が絶妙なアクセントで、非常にいいじゃないか!。これは何が何でも手前の落石の障害を乗り越えないといけない。これを読まれている方は、私のこのテンションを不思議に思うかもしれないが(いや、きっと不思議に思っていると思う)、実際にこの場面と擁壁にいきなり出くわすと、このテンションになること請け合いだ(←自慢にならないぞ(笑))。

落石を乗り越え、倒木を跨ぎつつ、少しづつ擁壁に接近していく。路肩に立ち並ぶ錆び尽くしたガードロープの支柱が、ここが旧道であることを物語っている。お忘れかもしれないが、ここは上り坂が続く勾配区間だ。地形図で調べた事前調査だと上り坂が終わるのは三本目の橋の付近なので、落石を乗り越えて倒木を跨いでいる途中でも上り坂と言う、ちょいと苦しい区間だ。しかし、そんな私を廃道と正面の山が励ましてくれる。

よっしゃ!

落石と倒木を乗り越えて、擁壁の上の路面に立った。さっきまでの灌木の林が嘘のようになくなり、往時の姿を色濃く残した路面がそこにある。人通りと車の通りが無くなり廃道となっても、見事な擁壁が路肩を必死に守っているこの道は、その昔は新潟と山形を結ぶ大動脈だった誇りをもって私を迎えてくれた。こんな道の風景があるから、旧道や廃道の探索が一向に止められない。
ここで少し視点を変えて荒川の方向を見ると…

見事な景色じゃないか!。みんな、こんな景色を見ながらこの道を通っていたのかなぁ…と、思わず足を止めて見入ってしまった。青空を映した荒川の水面と、対岸の先に見える赤い橋がいいコントラストだ。この赤い橋は現道の八ツ口大橋で、ゴールはあの橋のすぐ近くのはずだから、まだまだ先は長い。しかし、この道ならまだまだ楽しませてくれそうだ。


全行程の内、三分の二まで来た。こう聞くと、もうすぐゴールという風に思えるかもしれないが、そこがこの道の半端じゃないところ。きっとまだまだ楽しませてくれると思う。
まずは次の橋を目指して(注意しながら)楽しんで進んでいく。

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