一般国道290号
人面トンネル旧道 人面峠
前編 第4部

2020年7月24日 探索 2021年3月14日 公開

ヤブの中へ

前方は深い藪で周りは深い杉林、元は路面であったであろう場所は低木が生い茂り、路面に僅かながら見えているアスファルトが、まるで「峠はもうすぐだよ」と言って誘っているかのようで、ここが路面であったことを教えてくれている。
ところで画像左側に見える法面の一部は道路側に迫り出してきていて、ここだけ道幅が狭くなっているように見えた。崩落個所と思われる場所に草木が覆い茂っているので、崩れたのは随分前のことだろう。旧道化してから崩れた場所かもしれない。

その法面を見上げてみると、やはり思った通りだった。斜面の途中から崩れてしまって、木々の根でこれ以上の崩壊を防いでいるという状況らしい。なもんで、一見するとこの斜面は非常に不安定な状態になっているが、そこに生えている笹や、太陽の光を少しでも浴びようと水平に枝を伸ばしている低木(実に器用だと思うのは私だけか?)など、崩れないようにみんなで助け合っているのが実に健気だ。

少し進んだところで、路面のヤブが落ち着いてきた。やれやれと思って立ち止まり、少し休憩。先ほどから小雨が降っているが、ヘルメットと長靴のおかげで、さほど身体が濡れていると感じない。気温はさほど高くないものの、ここでペットボトルのお茶で水分補給して、ふと右側を見ると放置された犬小屋らしきものを見つけた。…こんなところに犬小屋の不法投棄?。でも、それにしては木々の根元にポツンと佇むかの方に置かれているし、小屋の周りには不法投棄らしきゴミもない。何だろうと思って近づいてみると…

安全を願って



やはり、犬小屋がポツンと置かれているだけだ。離れて見ていると木製のように見えたが、どうやらプラスティック製らしい。でも、これはどう見てもますますおかしく感じた。旧道や廃道を巡っていると、その旧道や廃道沿いの山中に不法投棄された投棄物の山に出くわすことは珍しいことではなく、この犬小屋も普段なら不法投棄物の一つとしてそのまま通り過ぎたかもしれないが、何となく気になって中を覗き込んだのがチェンジ後の画像だ。

なんと、お地蔵様がいらっしゃった!。そうか、この犬小屋はお地蔵様が風雨に晒されないように「お堂」の代わりとして置かれたものだったんだな。何となく気になった理由がわかったような気がする。もしかして、このお地蔵様に呼ばれたんだろうか。このお堂のおかげで、上から落ちてくる杉の枯葉に埋もれたり風雨に晒されることもなく、雪にも埋もれることなく、ここで峠を行き交う人々の姿を眺めているのだろう。…もっとも、この道の状態では行き交う人々の姿もなく、ハイキングとしても通れない状態だしねぇ。もしかすると私が久しぶりの峠の通行者で、つい呼んでしまったのかもしれない。それなら、むしろ非常に名誉なことだ。この探索の無事を願い、深く頭を下げて手を合わせる。

お地蔵様に別れを告げて少し進むと、これまでの深いヤブが落ち着いて穏やかになった「明るい峠道」といった雰囲気の区間に辿り着く。思わず、しばらく佇んでしまった。これぞ正にアメとムチ(笑)、旧道の面影を非常によく残した場所で、これまでのヤブを抜けないと見られない風景だ。こうした風景が見れて、山の雰囲気を感じれるからこそ旧道探索がやめられない。日頃のストレスや溜まった悪いものを吸い取ってくれているような気がする。

足元のヤブは更に少なくなり、これはよく見るとダブルトラックじゃないだろうか?と思えるような場所に辿り着いた。ここだけ見ていると、まるで鉄道の旧線跡のような雰囲気さえ漂っていて趣深い。
ところで空を見上げると相変わらずの曇り空で、小雨は降っているものの明るくなって近くに感じられる。この道と空の雰囲気からすると、峠もそんなに遠くなさそうだ。だが、このまま進むと峠を越えたところで日差しが溢れて、ヤブが一層深くなるような気がする。そうなると完抜は不可能だなぁ…と思いつつ、先へ進む。


あくまで私の私感だが、峠道には「陰」と「陽」があると思っている。すなわち、光が当たる側と当たらない側。それを如実に感じたのは三坂峠だった。そして、同じものをこの人面峠でも感じている。
ここまで、私はこの人面峠を旧下田村方向から上がってきた。だが、この空の雰囲気だと、これまでの道が「陰」で、旧栃尾市方向へ峠を越えると「陽」になるような気がしてならない。これが当たっているなら、峠を境に更にヤブが深くなるということになるのだ。

果たして通り抜けることが出来るのか?!

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