一般国道113号
八ツ口旧道 第9部

2020年3月7日 探索・2020年4月20日 公開

今も守る擁壁を越えて、最後の橋へ

前回、4人の思い出が詰まったであろう橋を後にした私が次の橋を目指して先へ進もうとすると、目の前にこんな風景が広がる。…いや、目の前に広がったというよりも、見ないようにしていたという方が正解かもしれない。だってねぇ、あんなに思い出が詰まった素敵な橋のあとに、いきなりこんな風景が目の前に出てきたら、そう思うって。

崩れとるやないかい!

まぁこの道のことだから、ここに来てちょっとやそっとでは驚かなくなってきた私だ。でも、ここから見る限り私が行こうとする先の法面は崩れてしまっていて、路面幅いっぱいに崩れた土砂が覆ってしまっている。崩れた斜面が安定していれば、高さ的にはさほどでもないので通るのは大丈夫なんだが…と思いつつ調べてみると、結果的にこの斜面は崩れてはいるものの安定していて(もちろん注意は必要だが)、乗り越えていくことが出来た。そして乗り越えていった先に、(私にとっては)ご褒美ともいうべき垂涎ものの構造物が現れた!。

この擁壁はなんだ!

三段に別れて建造されている路肩側の擁壁!。その一段一段が全て石垣になっていて、上を通る国道を支えるべくきれいに組み上げられている。おそらく、この道が最初に開通した際は周りの様子と同じくただの崖だったのだろうが、その後に何らかの理由でこの部分が崩れてしまったのだろう。そこでこの擁壁を組み上げて、道の復旧を図ったと思われる。それにしても、この高さの位置で石垣を組み上げてしまうとは、高いところが苦手な私には絶対無理な話だ。

視線を上にあげてみると、崩れたであろう山側の法面の様子がよくわかる。実際、この画像の通り後世になっても崩れてしまっており、ここだけ道幅が狭くなってしまっている。画像中、路肩から何かがぶら下がっているが、これは錆びてしまったガードレールで、同じような構造物が手前の木の根元付近にも見える。この区間のガードレールは注意の意味か、黄色く塗装されていたようだ。

おそらくだが、ここがこの旧道の最高地点だろう。右に見える荒川の水面を見るとわかって頂けると思うが、この地点の高度はかなり高い。それに、この旧道に入った最初は小さく見えていた八ツ口大橋が、こんなに近くに見える。この擁壁の位置を過ぎて道は左カーブになっているので、この左カーブを過ぎると最後の橋が見えてくると思われたし、ゴールももうすぐだろう。最後まで致命的な支障もなく通行できることを祈る。

上の画像で見えていた左カーブを過ぎると、灌木と落石に溢れた道の先に最後の橋が見えてくる。これを過ぎるとゴールは近いはずだ。ここは真っ直ぐに目の前の橋を目指すべきなのだろうが、まずその前に目の前の灌木の林を越えなくてはならない。幸いにさほど激しい林ではないものの、それに付随する蔦の類はたくさんあるだろう。ここはさっさと通り過ぎてしまうに限る。
だが、ここから見える道の勾配はかなり急で、これは現道時代のものではないだろう。多分、手前の崖崩れが影響を及ぼしていると思う。

橋へと一直線に続く道を歩いて降りていく。最後の橋へ近づく部分は灌木もほとんどなく、まるでこの方向からの来訪者を歓迎するかのように進路を開けてくれていた。この道が現役だったころは、ここはどういう線形になっていたのだろうか。ドラえもんがいてタイムマシンがあるなら時を遡って見に行くところだが、残念ながら私は持ってないので今の線形を見ながら想像するしかないが、多分もっと緩やかな線形になっていたのだろうなと思う。
でも、ここでなんだかんだと理屈をつけても、今私が立っているここから見える橋の風景や、その橋の袂から見える風景はたぶん美しい、そう思った。早速降りていこう。

いよいよ最後の橋へ着いた。ほら思った通り、廃道らしい独特の雰囲気を持った美しい橋じゃないか!。
橋に名前を刻み付けたあの4人の若者も、この橋を渡ったのだ。だが、さすがにこの橋に名前を刻み付けることは出来なかったらしい。コンクリート造りの橋だからだろうか。デザイン的にはこれまで見てきた辯當澤橋や栗松澤橋旧橋に似ている雰囲気を持つ橋だ。実に美しいと思うのは私だけだろうか。


ゴールまではもうすぐ。だが、今は目の前に現れたこの最後の橋をじっくりと観察だ!。

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