一般国道113号
八ツ口旧道 第7部
2020年3月7日 探索・2020年4月12日 公開
灌木の林と派手な崖崩れを越えた先の路肩に組み上げられた見事な玉石の石垣と、脇を流れる荒川の景色に励まされて先に進むと、また灌木の林だ。でもその生え方は先ほどよりは大人しく感じられた。これならまだ描き分けていける程度の灌木だ。その中に、ガードロープのエンド部分が半ば埋もれて存在していた。枯草や枯葉が降り積もり腐葉土となって埋もれたのか、それとも長い年月をかけて土などが降り積もってしまったのかわからないが、近くに崩れた跡もないようだから自然に埋もれたものだろう。それにしても、それが結構な厚みということは埋もれ具合から想像がつく。
で、ふと顔を上げると…
絶景じゃないか!
空と水面の青さに杉林の緑、山の頂上付近に薄く降り積もる白い雪。この旧道の、ここからしか見ることの出来ない貴重な風景だと思う。この旧道をここまで歩いてきた私への御褒美だと勝手に受け取って、しばし見とれてしまった。これこそ、日本の原風景ではないか。素晴らしい。
先ほどの景色を堪能して前を向くと、まだまだ上り坂の道が続く。辺りに警戒標識の一本でもないかと辺りをウロウロしてみたが、その痕跡は残念ながら見あたらなかった。路面をよく見ると、真ん中に見えているガードレールの支柱のすぐそばに縁石があるのが見える。縁石より外側は歩道だったのかもしれないが、それより路肩側には何も転落防護施設がないのが実にシュールじゃないか(笑)
それにしても、左側にはコンクリートの擁壁、それにこの広い道幅。国道の貫禄十分な道幅だ(灌木さえなければ)けど、ここは結構きつい上り坂で、峠のような区間だったのかもしれない。でも今の車より遥かに非力だった昔の車は、ここを越えるのに苦労しただろう。
結構急な勾配を注意深く上がっていくと、灌木の林も落ち着いた辺りでようやく本来の路面(だと思うんだけど)の雰囲気を取り戻した。この道はたぶん未舗装だったまま旧道化したのだろうと思う。なので、灌木の林になってしまった。きっと、砂煙を上げながら車や道が往来していたことだろう。
と思いながら先を見ると、路肩に何か構造物見える。思わず歩みが早くなるが、息が上がらないように気を付けて(←この辺、自らに歳を感じている)上がっていく。
おおおっ!
玉石積みの石垣ではないが、それなりの貫禄を感じさせてくれる擁壁がある!。
ここから見ると元の地盤が抉られたようになっていることから、路盤が何かの原因で崩れてしまい、その復旧として擁壁を造って路盤を作り直したと思われる。
ここまで来るまでにいろんなところで災害の跡を目にしてきた。やはりこの八ツ口旧道の区間は災害が多発していたようだ。なもんで、局改として八ツ口の集落側に新たに道を通したのだろう。
ということは八ツ口の集落も、そこから山へ上がっていくと過去に存在した鉱山街も、あの八ツ口橋の道一本で繋がっていたことになる。それが今は冬でも通行止めにならない道が集落のすぐ近くを通っている。集落の方々のこの安心感たるや、それまでと比べることは出来ないくらいじゃないだろうか。
あら、路面が斜めになっとるやんか!。…と一人で道にツッコミを入れてみる。周りに誰もいないから気軽にツッコめるので実に気持ちいいが、ここで少し想像して頂きたい。
50近くなったオッサンが道に対してボソボソとツッコミを入れている姿を。我ながら実に滑稽で、それを想像して笑ってしまった(笑)。
それはさておき、斜めになっている路面は、角度が結構急だ。おかげで非常に歩きにくかったが、これは山側から崩れてしまって斜めになったものだろう。崩れた部分に灌木が見えることから安定はしているようだが、ひとまず慎重に進むことにする。そろそろ二本目の橋が現れてもおかしくないはずなんだが…。
斜面を乗り越えて進むと、ようやく元の路盤に戻った。路面にはいろいろと倒木があったりするが、歩きなので一向に問題はない。路肩には錆びたガードレールがあったりして、ここが道路だったことを教えてくれている。そこを通行する人や車がいなくなった道路の独特の雰囲気と、そこから見える独り占めの風景が私は好きだ。この風景があるからこそ、旧道を探索していると言っても過言ではない。
この道の先は左カーブになっている。おそらくこのカーブの先に二本目の橋があるはず。…だよね?。
いやぁ、また灌木があるなぁ。何がいやって、灌木はいいんだけど、それに付属して蔦があるのよね。その蔦が進もうとする私の足に絡みついて、ひどい時だと転ばそうとするのだ(←お前がよく見てないだけ)。仕方ない、あまり気が進まないが路肩側を進もうか…と、思った瞬間!。ちょっと待った!。あのカーブの先に見えるのはもしかして橋じゃないか?!。やっと到達したか?!。