一般国道113号
八ツ口旧道 第1部

2020年3月7日 探索・2020年3月19日 公開

その日、私は昼に入っていた所用を済ませて、この地点にやってきた。今は3月上旬。この時期でも新潟県と山形県の県境に近いこの地域は、道路でも山でもあちこちに雪が見える時期だが、御覧の通り今年は雪が全くなく、しかも今日は晴れで、少し動けば汗ばんでしまうほどの陽気だった。時間は14時少し手前、これから日没まではおよそ2時間。16時には探索を終える予定でいた。
ところで、実はここに来る前にあらかじめ今回の探索の出口側に立ち寄り、自転車を隠しておいた。ベースとなる車は入口側に停めておくので、探索が終わったあとで車まで戻るのに自転車で楽をしようという魂胆だ。ここから正面に見える橋は金丸大橋で、私は新潟方向を向いて立っている。新潟方向から来ると八ツ口大橋、龍ノ髭トンネルに続いて現れる赤い橋だ。画像では右に降りていく脇道が見えるがこれが旧道で、この道は途中で右に八ツ口橋(八ツ口大橋とは別)を分岐して、その道は荒川を渡って八ツ口集落へ繋がるアクセス道として今でも現役で活躍している。

同じ地点から、小国町側を見てみる。先に見える橋は前瀬橋で、脇を流れる荒川を渡って対岸にある前瀬集落へ向かう唯一の入口の橋だ。このまま国道113号を先へ進んでいくと、鉱山があった金丸(かなまる)の集落へたどり着く。山形県西置賜郡小国町との県境の集落である。この地点の手前左に入っていく道が見えるが、これが旧道だ。

現道から旧道に入って降りていくと、このような高さ制限のゲートがある。上を通る橋桁は現道の金丸大橋のものだが、更にそのすぐ先を米坂線が通っているはずだから、この高さ制限はこの旧道が国道として現役時代からあったかもしれない。そうすると、この高さ制限は荷物を積載したトラックには障害となっていたことだろう。旧道は脇を流れる荒川をトレースして進む線形を取っているため、ここは結構キツい急カーブになっているが、現道は並走する米坂線と同じように橋とトンネルで直進して一度対岸に渡る線形を取っている。この区間での改良は、こういった高さ制限の解消と線形改良、災害対策の面があって行われたものと考えられる。

先に進むと案の定、米坂線のプレートガーダー橋がある。高さ制限のゲートはこちら側から来ると米坂線のガーダー橋を越えたところにあり、やはり現役時代から高さ制限はあったようだ。その先の道は両側が林になっていて、旧道として趣き充分な雰囲気になっている。また米坂線の橋桁の幅が道路上の桁のみ短くなっていて、そのために橋脚が二本あることに注目。こうして少しでも道路からの高さを稼いでいたようだ。やはり、現役時代からこの部分はネックになっていたと思う。

高さ制限の区間を越えて先に進むと、この交差点に出る。右折した先にある赤い橋は「八ツ口橋」。さっき旧道の入口から小国町側を見た時に左側に見えた、前瀬集落に通じる唯一の橋「前瀬橋」と同じく、八ツ口集落とこの旧道を結ぶ橋だ。この橋も建造当初は前瀬橋と同じく、八ツ口集落へ繋がる唯一の道として架けられたものだろう。現在はこの橋の反対側から現道に通じる道がもう一本あり、利便性が増したと言える。こんなところにも線形改良の恩恵があるということか。ところで八ツ口旧道は、この橋の方向へ右折せずに荒川沿いを直進する。

分岐点から旧道方向を眺めた画像がこれだ。今の時期でこうなんだから、草が伸びてくるとヤブになると言うことの想像は容易だろう。入口には(一応)チェーンが掛けられていたであろう簡易なバリケードがあったが、封鎖していたはずのチェーンは外されており、まるでヘビの抜け殻のごとく旧道の路面にそのまま放置されていた。探索のベースとしてここに車を止めて身支度を整えて、辺りを見回してみる。

先に進む前にふと左を見ると、見事な風格のある石垣が組まれていた。今は緑色の苔や灌木、草に覆われているが、ここを通行した車や人たちはこの石垣を見ながら通っていた。ここから旧道の先を見ると、そばを流れる荒川の先に見事な山々が見えたりしていて、もしかするとこの道の先祖は小国新道かもしれないという気がしてきた。この辺は机上調査で調べてみることにして、もう少し石垣を観察してみる。

組んである高さこそ低いものの、玉石を積み上げた見事な石垣だ。こういう石垣は私の大好物で、放っておくとついつい眺めてしまうため、時間がいくらあっても足らなくなってしまうことが、これまでの研究の結果わかっている(当社比)。なので、ここも眺めはしたが(←眺めたのか(笑))、ある程度は自制したつもりだ。撮影して、後はのんびり画像で眺めることにした。では、これからいよいよ旧道に入っていこう。

入っていくと、かなり路面がぬかるんでいた。ここは山側から湧き水がかなりの量で流れ出しており、そのせいでこのように路面が水浸しになっていたが、今回は長靴を履いているので、臆することなく進んでいけるのだ。
そう、雨の日の小さい子供のように勇気百倍で進んでいったが、このぬかるみは外見よりも結構深く、くるぶし辺りまで埋まってしまった。トレッキングシューズなら探索の最初から大災害になっていたところだ。道はこの場所だけ幅が狭くなっていて、もしかするとこの部分だけ路肩側が崩れたのかもしれない。もともとの路面の幅員と考えるには、あまりに狭すぎる気がした。

先へ進んでいくと、このような風光明媚な場所に出る。ここはまだ道路として地図に記載されているはずで、灌木を刈れば車でも入っていけそうだ。歩くには非常に楽な区間で、自転車を持ってくればよかったか?と一瞬考えたが思い直し、荒川沿いの景色を眺めながらのんびりと先へ歩いていく。でも、先の方に見えるのは、あれは倒木じゃないか?。

山側を見ると、このような低い擁壁があった。路面との境が溝のようになっているが、これは元々あったものではなく、長い時間をかけて路面に木の葉や土が被り、路面自体が高くなってしまったことで、このように道の端が溝のようになってしまったのだろうと思われる。今でも立派に法面側を守っており、一級国道の名残りと言ったところか。ところで前を向くと…

おおっ!倒木!

これ、倒れて結構日にちが立ってるなぁ…。
いやぁ、自転車持ってこなくてよかった!。
いよいよ、この道が本性を表すかっ?。

期待に胸が膨らんだところで
以下、次回!(笑)

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