新潟県主要地方道59号
大和焼野線
後山トンネル旧道 第9部
2023年4月22日 探索 2023年6月28日 公開
道と言う名のヘビ
消えた白線に別れを告げ、先へ進む。路肩には相変わらずのガードワイヤーの支柱が、ワイヤーと言う主を失って「オレだけじゃどーにもなんねーよ」とでも言わんばかりに立ち尽くしている。視線を少し上げると、山の斜面を少しだけ削って道を通しましたとすぐにわかるような造りをしている道の姿が見える。あれがこれから向かう道の姿だ。その道の先はもうほとんど頂上に近く、あそこが後山峠の最高到達点だろう。果たしてどんな風景が見えるか。
道はだんだんと細くなり、今や普通車1台が通れれば良いくらいの道幅になってきた。山側の斜面から落ちてきたであろう細かい石片が、路面の至るところに散乱している。ただ、こうして歩いているのが恐れながら歩いているかと言うと、そうでもない。むしろ、私がこの道を楽しんで歩いていることは、ここを見られている皆さんも既にお気づきのことと思うが、入口にバリケードもなく、通ろうと思えば車も通れる状態なんだけど、全く車がやってこないこの道を私は独り占めしている状態なのだ。これが楽しくない訳がないではないか(笑)
道の周囲には針葉樹もなくなり、広葉樹だけになってきた。その木々はさほど背が高くなく、でも充分に(充分すぎるほど)森を感じさせてくれる、なんだかいつかどっかで見たような、そんなことを感じさせてくれる森だ。空もグッと近くなって、抜けるような青空が眩しい。…と、ここにも路肩側に擁壁が。これより上には(目視だけど)道はないはずなので、この道の至る所で見られていた雪崩や土砂崩れの跡の全ての起点ここなのか?!。…そんなことはないか。
山の稜線に沿って…いや、この場合は「等高線に沿って」と言うべきか、山肌に沿いながら進んでいく旧道。勾配も最初のころから比べれば随分と緩やかになり、自転車を押す私の身体も随分楽になってきた。多少は体重が落ちただろうかと期待を持ってみるが、結果はわかっている。
この辺も路面には小さい石が散乱していて、これは山から「落石」で落ちてきたものだろう。細かく割れるこの辺の地質、よく見ると中には破片の割れ口が鋭く尖っているものもあり、こんなのにタイヤが乗り上げると場合によっては簡単にパンクしてしまう。気を付けないといけない。
何となく直感でわかる。峠は近い。ここでまた登り坂が続くのは、最後の悪あがきと言うやつか。道幅は普通車1台がやっとの幅になり、思わず「これで現道時代はすれ違いはどうしていたんだろう?」と心配になってくるが、もしかするとそこまで交通量がなかったか…。
ところで私は今日、この道を歩きながら、こう思っていた。
「今日はこの道を、歩きと自転車で探索出来て良かった」
歩かなきゃ、これまでの風景は見られない。特に上から見て後山隧道が見えたあの風景は好きだ。それもこれも歩いて探索していたから見れたもので、これが車や自転車なら私は見落としていただろう。自転車ではなく歩いてきたおかげで、美しい風景をたくさん見させてもらった。
今まで随所にあったガードワイヤーが取り付けられていた支柱が、この辺は妙に残っている。おかげでこうして画像として眺めると、もしかしてワイヤーが残っているのかと錯覚してしまうほどだ。等高線に沿うように進んでいく旧道は、右へ左へクネクネと曲がりながら山頂を目指すが、それはまるで山に絡みつき守護する大蛇のようにも見えてしまう…と言ったら言い過ぎか。頂上まであとどのくらいかな?と、カメラを望遠レンズに交換してファインダーを覗くと…
おおっ!