新潟県一般県道440号
麓野積線 第9部
「時を超えて残るもの」
2023年8月12日 探索 2023年11月11日 公開
時を越えて残るもの
道端に立っていた標柱のような記念碑。もしかしてこの県道の出自に関わるものなのか?と言うことで、やや急ぎ足で近づいていく。が、県道の脇に更に上に上がっていく林道が分岐しており、その間は下草が茂っている楽しい地面だった。だが、そんなことには構っていられない。草を掻き分けて近くまで辿り着いたのが、この画像だ。
石柱に丹念に彫り込まれた文字。この碑は開通当時に建立されたものだろうか。そこには「昭和七年十月三日 起工、同十年十一月卅日(三十日のこと)竣功、工費 四千六百五拾圓」とある。昭和七年と言えば1932年、昭和十年と言えば1935年。となると、この記念碑が県道の前身の道に対して建てられたものなら、2023年を基準としてみると88年前に開通したことになるという、なかなかに歴史がある道だった!。
林道だからなぁ…何か記録が残ってないかな
あとで図書館行ってこよう
ここでは、それだけしか情報が得られなかったが、大きな収穫だったことは間違いない。この県道の名前は「麓野積線」であること、この碑が麓側にあることから、弥彦村を調べてみると何か掴めるだろうか。なんだかワクワクする。気持ちは逸るが、ここはひとまず先に進もう。
出ました!落石注意!
記念碑の画像をあれこれとしっかり撮影して先へ進むと、またまたこんな狭さになった。実に楽しい道だ。この道の前身が林道なら、この道の狭さも説明がつくと言うもの。途中、ガードレールがある場所はおそらくボックスカルバートで沢を越えているところだろう。道筋が変わってないなら、昔はここに橋が架かっていたかもしれない。いかにも「旅の道」といった雰囲気の道が、麓集落を目指して進んでいる。何かないかと道の周りを探してみると…
おっ!見つけた見つけた。こんな玉石積みの石垣がこっそりと隠れていた。これは開通当時からのものだろうか、なかなかに年季が入っている。こういったちょっとしたところに往年の面影を見つけたりすると、すごく嬉しくなってしまう。この水路を造るときに、当時の職人の方々が一つ一つ石を積み上げて造ったこの石垣が、数十年の時を越えて残っているとは。この右側には、実は上の画像の「落石注意」の標柱があって、新旧の競演になっているところも楽しい。
山中を静かに流れる沢の脇を走る道。緩やかな下り坂と、見上げれば高くなってきた空で、この道の終点(正しくは起点だが)が近いことを教えてくれる。路肩には落輪防止のためか、やや古さを感じさせるデリニエータが並び、通行する車を落輪から守っているが、相変わらず通行する車は1台もいないのが悲しいところだ。更に、前方の左側の斜面には崩れたのかベニヤ板で補修してある箇所も見える。さほど大きな崩れではないようで、簡易的な土留めといった感じだろうか。
先へ進んでいくと、立派な祠が現れた。見よ、路傍の仏とは思えないほどの立派な社が建立されている。そのお社には立派で頑丈な瓦に、杉板が新しい屋根の庇、立派に設えた扉に左右の雪避け。地域柄、雪への対策も「これ以上ない」というくらいバッチリ対応できたこのお社。この社を見ただけで、この道がどれだけ地域の方々に大切にされているか、わかろうというものだ。
この通り、建てられている白木も眩しい、建てられたばかりの社。中は覗かなかったが、きっとお地蔵様か馬頭観音だろう。あと少しとは言えど、まだまだ旅を続ける身、旅の無事を祈って深々と頭を垂れる。もしかしてこれまでのいろいろな場所の探索中に特に危険もなく過ごせているのは、こうしていろいろなお地蔵様に参っているからかもしれないと、ふと思った。
次回、道はいよいよ麓集落へ。