新潟県一般県道440号
麓野積線 第7部
「夏色サマーセット」

2023年8月12日 探索 2023年11月3日 公開

夏色サマーセット

前回のレポートの代名詞にもなった県道の境界標、そう、「県道の証明」の看板を過ぎて、先へ進んでいく。左右は深い森の中。右側はここから見ると深い森のように見えるが、実は細い沢が流れている。それは、麓集落の方向へ降りる川の源流でもある。
左右の杉林が空気を冷やし、峠を過ぎたあたりよりも標高は低くなっているはずだが、心なしか空気が涼しいような気がする。今年の夏は暑いと先ほども書いたが、そのせいだろうか、山の中にいると聞こえるはずの小鳥のさえずりが全く聞こえない。きっと、木陰に潜んで涼んでいるのだろうと思うが、全く聞こえないというのは何だか寂しいものだ。

右側の路肩から下を覗き込んでみる。思った通り、細い水の流れが見える。その水はとても綺麗で澄んでいて、小魚でも泳いでそうだったが確認はしなかった。この細い流れがやがて大きくなって、弥彦側の麓集落へ向かっている。地図を確認すると麓集落の付近は水田地帯のはずで、この水が米を育てていると思うと感慨深い。その脇に、まるでアクセサリのように立っている、しっかりと「新潟県」の文字が刻まれたデリニエータ。最高だ。

少し進むと、道の右側(つまり川側)に小さい橋が架かっていて、その先にこんな素敵な道が隠れていた!。たぶんこの道は私有地の道だと思うので踏み込むことはしなかったが、こういう道は見ていても楽しい。適度に刈り込まれた下草は、この道がまだ生きていることを証明しているし、左側の木には「立入禁止」の看板が括り付けられていて、小さい作業小屋もあるところから、この辺で林業を生業にされている方の山なのかもしれないと、あれこれ想像してみる。…そうだ!。

もしかしたら、こちらが古くからの道かもしれない?

なくはないかも。真偽のほどはわからないが、馬車が通っている場面を想像するのに非常にたやすい道だった、と言うことだけは言っておこう。

道の脇に沢。こうした風景は結構あるようにも思えるが、新潟県では結構少ない(もっとも、脇に流れている川がもっと大きい場合は、あちこちにある。一例はここ。極端かもしれんが(笑))ように思う。大雨が降った際に危険なためだろうか。しかし、雰囲気は実に良い。

沢の方を見ていると、なんと沢の水面の際に杉の木が伸びている。路面にはダブルトラック、その中央には苔。山側の路肩には、なぜかパイロンがある。いやぁ、実にいい。これが新潟県の400番台の県道だ。400番台でこんなんだから、500番台は推して知るべし!と言ったところだろうか。ちなみにこんなのだ。

リンクを開いた方にクイズ!。県道はどっちだ!(笑)

正解はページの下部にGO!

少し進むと、ほどなくこんな建造物が山側に現れる。こうした山中で意外と結構見かける、コンクリート柱で組み上げた斜面防護施設の擁壁だ。その表面はまんべんなく苔生していて、しかもコンクリート柱で組み上げられた擁壁の隙間から、小石が見え隠れしているじゃないか。その擁壁の周辺の地面の様子を見てみると、どことなく土が上から流れ落ちてきたようにも見える。

こんな山中で流れてきた土を必死に止めて、古くからの道を必死に守り続けるコンクリート柱の擁壁。自身を犠牲にしながら身を挺して道を護るその姿は実に美しい。こうした普段注目を浴びることのない道路構造物の地味~な姿を記録するのも、一つの役目なんだろうな。

くねくねと左右に緩やかなカーブを繰り返しながら先に進む峠道。右の谷側は先ほどの川が流れているが、路面から水面までの高さはさっきよりも高くなっている。落ちたら終わりという訳で、路肩にデリニエータが立っている、ということのようだ。この道を牛車や馬車が通っていた時代には、こうしたカーブでも警告は要らなかっただろうが、今ではそうもいかない。

この道に初めて車が走った際は、どんな様子だったんだろうか。
自動車と言うものが日本に入ってきて本格化してきたのは、1940年代後半から1950年代初頭。それはつまり、この道も…

牛車や馬車が行き交う道から
車が行き交う道に。

それは一つの文明開化を意味する。この道にはたぶんバスは通っていなかっただろうが、弥彦から寺泊に抜けるのに、あるいはその逆で抜けるのに、オースティンA40サマーセットA50ケンブリッジのような自家用車やタクシーなどが走っていたかもしれない。寺泊には長岡鉄道が、弥彦には国鉄が鉄道を開業させていたから、あながち全くないとも言えないだろう。乗っているのは、白い日傘をさして歩いているようなご婦人とか。また、冬は雪が積もって通れなかっただろうから、走っているとしたら季節は夏だろうか。その頃は当然未舗装。クラシックな車が砂埃を上げながら走っている風景が、私の頭の中に浮かぶ。そんな素朴な風景が、この道には似合っている。

さて次回。途中で登山道などを分岐しながら進む道、段々とこの道の素性が明らかに?!

第8部
「森に隠れたふとんかご」へ

正解:左。この道は左に行くと斜面を回り込んで、この小さい山を上がって行く。