新潟県一般県道227号
室谷津川線 旧道
 第16部
(完結編)

2021年5月8日・2021年6月2日 探索
2021年9月10日 公開

路肩落ちてるやん!

前回の最後で私は「何があるかわからない。気を付けていこう!」と書いた。その直後に出てきたのがこれだ。やっぱりと言うかなんというか…言わんこっちゃないと言う気分だ(笑)。
いや~削れてますなぁ、路肩。すぐ隣は常浪川なので、路肩が削れてしまった原因は常浪川の水量が上がって氾濫したからだろう。路面から水面まではかなりの高低差があるので、ここに仮に擁壁を造るとしても、結構大掛かりな工事になるだろう。
こういう場所では、崩れている方に行ってはいけない。確か前にも書いたと思うが、こういった場合は崩れた方に行ってはいけない。アスファルトの下は「空洞」ってことがあるからだ。その状態で万が一アスファルトが折れたら…考えただけでも背中が寒くなる。

この画像を見て「なんだ、そう言っておきながら近くまで行ってるじゃないか」と思わないで頂きたい。これはカメラに三脚を付けて伸ばし、リモコンでシャッターを切って撮影したのだ。ちゃんと撮れてるか不安だったが、成功したようだ。この画像を見ても路面から水面まではかなりの高さで10mはあるだろうか。崩れたであろう石がゴロゴロしているのが見える。そこを流れる常浪川は、まるで岩の間を流れるような流れで、下に見える平べったい岩の上から撮影したら、素晴らしい画像になるんじゃないかと思った。

さあ、旧道に戻って歩みを進めるとしよう。さっきの危険な地点を過ぎると道幅はかなり広くなって、軽自動車なら余裕ですれ違い出来るくらいの道幅になった。路面には枯葉が積もってはいるものの、車が通ったダブルトラックがしっかりと刻まれていたりして、この辺はある程度の車の通行はあるようだ。
私はここを自転車で通ったが、私が通った時は周りの林から風が吹き抜ける音と小鳥の囀りだけが響くという、実に静かな空間だった。

ここまで来て、ようやく民家が見えた。左には「不動滝」と言う看板が見える。この滝は後日調べてみると常浪川の対岸にある滝で、落差は20mあるのだとか。この時に行かなかったことが悔やまれるが、これは後日訪れることにしよう。道の雰囲気がだんだん明るくなってきた。きっと、もうほどなくして終点だろう。予想はしていたものの、ここまでいろんなことがあって、何より長かった!。

見えた!あそこが終点だ!

もう少しということで気分も上がってくるが、こういった場合にありがちな最後の急勾配。ま、ゴールは目の前に見えているので自転車から降りて、歩いて上がることにしよう。先には「室谷洞窟」の看板も見える。不動滝といい、室谷洞窟といい、ここには自然のスポットが溢れている。出来ればここはもう一度訪れてみたい。

ここが県道の終着点だ。右から合流してくるのが現道で、「県道管理境界」の文字が見える(私は初めて見たが)。左に行く道は林道本名室谷線で、現在は路面状態悪化と落石頻発のため、通行止めになっている(→新潟県東蒲原郡阿賀町のWEB)。この先には県境の塩の倉峠があるはずだが、いつの日か通行止めが解除になったら訪れてみたいと思う。

ここが終点だ!。長かったこの旧道の探索も、ようやく終わりを告げる。
さて、今度は机上調査に入るわけだが、この文章を書いている9月初旬は私が住む新潟県でも特別警報が発令されて、新潟県や新潟市の施設が軒並み休館になっていて、なかなか思うような調査が出来なくて欲求不満状態だが、少ない情報の中、進めてみることにしよう。


まずは常浪川の素性を調べてみることにしよう。
常浪川は新潟県と福島県の県境に位置する中之又山(標高1,070 m)を源として、室谷川の名前でまずは室谷を目指して流れる。途中で林道本名室谷線と寄り添って室谷を目指し、室谷からは「常浪川」と名前を変えて県道227号旧道に寄り添って流れ、阿賀町津川の市街地の麒麟山近くで阿賀野川と合流、新潟市を目指して流れていく。室谷川や常浪川の沿岸には七折峠でおなじみになった「河岸段丘」が発達している。

この常浪川に計画されたのが、常浪川ダムだ。
1972年(昭和47年)に建設事業着手となったが、1999年度(平成11年)に発電事業者がダム事業から撤退し治水ダム事業に変更。その後何度も検討を経て事業は継続され、2005年度(平成17年)に付帯県道である新潟県一般県道227号室谷津川線の付け替えが完成するなどしたが、2011年度(平成23年)に事業中止が決定した。着手してから、実に39年の月日が流れていた。

この大谷沢橋は第5部で紹介したが、竣功は1971年(昭和46年)3月だ。
阿賀町広報紙である「広報あが」の2005年12月号を見てみると、県道付け替えに関する記事が掲載されていた(←レーデクさん、情報ありがとうございます!)。
それによると、常浪川ダムに関する付帯県道の付け替えは1984年(昭和59年)に開始している記述があるから、この橋は竣功してから13年で県道の付け替え工事が始まり、やがてはこの橋の右側にある玉石積みの砂防堰提と共に、水没する運命だったことになる。

また、新潟県が発行した常浪川ダム建設事業の検証に係る検討結果報告書(2021年9月現在、WEB上で公開中)では、その2-10ページに「S44.8.12 洪水を伝える「広報かみかわ(S44.9月号)」が転載されており、それによると常浪川の源流である室谷川に降った大雨が鉄砲水となって下流の室谷・広瀬・栃堀の集落を襲って被害が発生したほか、そこを走る道路(現在の旧道)にも被害が発生したとある。詳細はリンク先の記述に委ねるが、これを見ると昔から脇を流れる常浪川の氾濫に被害を受けていたようだ。

こういったことから、治水目的で(当初は発電目的も)常浪川ダムが計画されたようだが、その計画は中止になり、現在に至る。ここまでの付替県道・集落移転は100%、用地取得は92.3%と、あとは着工するだけになっていたわけで、ダムに振り回されたと言ってもいいのかもしれない。

ここもダムが完成すれば水没する運命だったことを思うと、それは非常に惜しい。
こういった道は一見ありそうでなかなかなく、川沿いを進んでいる県道しかないと言う条件を考えると、私が知る限りでは今のところ、この県道227号旧道ともう一カ所しかない。

途中、1t袋のバリケードなどもあったり、路盤がごっそりなくなっていたり、路肩が落ちていたり、いろいろあったが面白い旧道だった。

古くは会越街道、今は新潟県一般県道
歴史に振り回されて、今に存在する道
これからもその美しい風景で
通行する者の目を楽しませてほしい

新潟県一般県道227号
室谷津川線 旧道

完結。