山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 荒沢隧道

第6部「薄暗闇のスノーシェッド」

2023年10月14日 探索 2024年3月18日 公開

薄暗闇のスノーシェッド

今通ってきた道を引き返そうと歩き出したところ、こんなものを見つけた。これはあの「隧道への回廊」のスノーシェッドに入ろうとしたところで、シェッドの柱に取り付けられていたのを見つけたものだ。設置者は山形県。「落石注意」とあるが、その字体はなかなか面白いフォントをしている。なかなか見えにくいここに設置するなら、正規の標識である警戒標識の「落石注意」を手前にでも設置した方が、よほど効果的なんじゃなかろうかと思うのだが…。

目指す方向が違うと、こんな風に全然違った印象になるのが面白い。隧道に向かって進むときは、あんなに明るい印象だったのに、隧道から離れる方向の時はこれだけ暗くなってしまうのだ。その姿はまるで「薄暗闇のスノーシェッド」(まるで名探偵コ〇ンみたいだが)。

直前まで太陽の光が降り注ぐ非常に明るい場所にいた為か、ここから見る景色はとても暗くて、隧道に向かう際にはシェッド内を明るく照らしていた光も失われ、スノーシェッド自体もあちこちで傷んでいるように見えるし、シェッドを出たその先の路面も草むらに覆われているように見え、すっかり廃道になっているかのように見えてしまう(もちろん実際には違うのだが)。

スノーシェッドを出た先の路肩にある、すっかり蔦が絡みついてしまったカーブミラー。その鏡面は仕える道の交通がほとんど失われてしまった今でも、迫りくる対向車を映し出すべくカーブの頂点に立って、行き交う交通に睨みを利かせている。今、このカーブミラーに映し出されるのは、私のような道路探索者か、地元の方々や道路管理者か、あるいはクマやイノシシ、サルなどの自然の生物か。車の交通はほとんどなさそうだが…(失礼!)。



蔦に覆われたカーブミラーから、周囲をキョロキョロしつつ進んでいると、こんなのを見つけた。草に覆われて見えにくいが、よーく見ると路肩の草の先にガードワイヤーとその支柱が隠れていることに気づかれると思う。そう、ここは路肩が落ちてしまい、その分だけ道幅が狭くなっていたのだ。この位置はそう、あの「白き肌の守護者」の先のあの区間である。路肩はひび割れ、ここに荷重をかけると崩れ落ちそうな感じさえする。

チェンジ後の画像は、少し離れた位置から角度を変えて撮影したものだ。崩れ落ちたガードワイヤーは見えにくくなってしまうが、その代わり路面の崩れ方がよくわかっていただけると思う。そして、崩れた部分の先に見えるコンクリート構造物は現道の橋だ。実は旧道と現道はこれだけ接近していた。

場所は少し飛んで、ここは現道上。現道は荒沢トンネルを出た後に笹根トンネルに向かうが、その途中に橋を渡る。この橋の名前は河倉沢橋(かわくらさわはし)と言う。その完成は平成23年と言うから、西暦で言うと2011年。東日本大震災が発生した年だ。

その頃の私は今のように道路の面白さには気づいておらず、ただ赤十字ボランティアの救護活動で新潟県は鹿瀬の奥に向かっていた途中に、当麻トンネル旧道に気を取られていたくらいだ。それが、今となれば…(笑)。

閑話休題。
橋の銘板は地元の小学生の方が書かれたものらしく、銘板にも名前が彫り込まれている。公道上にある現道の橋の銘板であるし、おおよそ一般に公開されているものだろうから、ここでも特に伏せることなく、そのままとさせていただいた。

と言うことで、ここは笹根トンネル坑口。旧道はこの現道を左から右に横断するように通っていた。左側に見えるガードレールの部分が旧道、対して右側にガードレールの切れ目部分が見えるが、これが笹根隧道に向かう旧道だ。と言うことは、ここから左に入っていけば荒沢隧道の坑口があるはず。残念ながら通ることは叶わなかったので、せめて坑口だけでも拝んでおきたい、

そう思いながら、ここを左に入っていく私を出迎えたものは…?!

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