山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 荒沢隧道

第3部「隧道への回廊」

2023年10月14日 探索 2024年3月6日 公開

隧道への回廊

見つけた!

左カーブを抜けた先にあったのは、二つ目のスノーシェッド。事前に地理院地図で確認して、スノーシェッドが二つあることは予想していた。まさに地図通りだったということだ(もっとも、地図は出来るだけ正確であってもらわなくてはいけないのだが)。しかし地図で見るのと想像するのと、現実にその景色を見るのとでは全く違う。
今、私の目の前に広がる景色は、今この瞬間しか見ることが出来ない貴重なものだ。目に焼き付けておかなくては、そう思いながら、スノーシェッドに向かって歩いている。

灰色と緑と黄色と赤と…えーと…そのほかの色!(笑)。
少し早めの紅葉だろうか。それにしては暑くて、夏みたいでもあるが。
でも、数多くの色が織りなす、この不思議な景色。それは実に美しい。

シェッドに向かって歩きながら、ふと視線を右側に落としてみる。そこには暖かな陽射しに照らされて白く光る現道の姿があった。こうして見ると、現道と私がいま通っている旧道は、さほど距離を空けずに平行しながら進んでいる。地図上ではこの先、現道の荒沢トンネルと旧道の荒沢隧道は、高度は違うが並んで坑口があるはずだ。となると、私がもう少し進むと荒沢隧道の坑口に辿り着くはず。気持ちは逸るが、坑口は逃げないので(←当たり前だ)急いでも仕方ない。せっかくなので景色を楽しみながら進もう。

隧道の前にスノーシェッドとご対面。先ほど出会った白き肌の守護神と違って、今度は屋根から蔦がぶら下がって自然と戦う姿そのままの、勇壮なスノーシェッドの姿。そこには戦ってきたもの特有の、独特の風格と迫力がある。まるで「この道はオレに任せろ」と言っているかのようでもあって、実に頼もしい。そのスノーシェッドに守られている道はやや上り坂、位置からするとこの先ほどなくして目的の隧道に辿り着くはずだが、その姿はここからでは見えない。まずはこのスノーシェッドとお友達になることにしよう。

シェッドに入る直前に、遠慮がちに右側を見てみると現道の姿が見えた。おや?。あそこに見えるのは現道の荒沢トンネルの坑口じゃないか?。となると、旧道の荒沢隧道の坑口も私が今いるこの場所からすぐ近くだろうが、荒沢トンネルの坑口の上に見える擁壁はいったい何だろう?。一見すると、擁壁の下に道のようなものが見えるな。あれは坑口からダムの方に向かっている道だろうか。あの道を確かめるためにも、先へ進んで隧道を目指そう。

スノーシェッドに抱かれてみる。そういえば、これまで休憩を取っていなかったので、ここで小休止することにしよう。出発するときにポケットに押し込んだペットボトルのルイボスティーを飲みながら、じっとりとかいた汗をタオルで拭うと、スッキリして生き返った気分だ。元来汗かきの私には、これが非常に気持ちいい。

道は画像を見てもおわかりいただけると思うが、かなりの上り坂。スノーシェッドの細めの脚の間から差し込んでくる、中秋の暖かい(当日は暑いくらいだったが)豊かな光が、シェッドの内部を光があふれる道にしていた。このスノーシェッドは隧道へ向かう回廊の役割を果たしているようで、こちら側から上がってくると、隧道へ向かう者を門番のように迎えている。そして、ここから見えるスノーシェッドの出口のその先には…

荒沢隧道だ!

あれが荒沢隧道か!。だが、その坑口はガードレールのバリケードと、右へ向いている矢印のデリニエータで塞がれている。事前調査によると坑口は塞がれていて、通り抜けできないと聞いていたので、今こうして坑口がはっきり見える状態で相対するとは思っておらず、興奮している。もしかして通れるか?!。

スノーシェッドを出て隧道に向かう道と、右に逸れる道。どちらも道はなかなか荒れていて、一見廃道のようにも思えるものの、実際はそれなりの交通量はあるようで、路面に草が侵食してくることもなく、何とか道の体裁は保たれている。隧道は目の前、坑口の周辺を確認しつつ、隧道に入れるか確認だ!。

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