山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 荒沢隧道

第2部「白き肌の守護者」

2023年10月14日 探索 2024年3月2日 公開

白き肌の守護者

左カーブで回り込む、崖の道。そこを回り込んで先を覗き込んでみると、思った通り明るい陽射しが降り注いでいる。但し、現道に。右側に灌木が生える斜面の下に、何やら白い帯のようなものが見えるが、これが現道だ。つまりこの旧道と現道は寄り添うように進んでいる。で、現道にはそれこそ路面が白くなるほど日差しが降り注いでいるが、旧道にはさっぱり日差しが来ていない。これって、この道が現役だったころも同じだったんだろうか。ま、太陽と陸地の角度の関係もあるのだろうが…。

ところで、その日差しが降り注がない道は先ほどよりも次第に荒れてきて、細かい石なども見えるようになってくる。下草もそこそこに侵食してきて、なかなかいい雰囲気だ。第1部の最初で私は「なんかこの道、途中でなかなか素敵な状態になっているんではなかろうか」などと書いたが、まさしくそんな感じになりそうだ。

やっぱりあったぞ!

吹き付けコンクリートでガッチリと固められた山側の崖、微妙に角度が付けられている路面。回り込むようになっている道形で、路外逸脱を少しでも少なくするために付けられた角度だろうな。そして、その先に見えるものは…。濃いグレーの路面と崖に、濃い緑の針葉樹。そしてその針葉樹を貫くかのように設置されているのはスノーシェッド。完成から多くの時間が流れているのだろうが、そのコンクリートの白い肌は長い時間が過ぎた今も健在。それはまるで白き肌の守護者として、山中の斜面に異様に目立つ姿を晒している。

期待に胸を弾ませながら近づいていくと、目の前にその全貌が見えてくる。なかなか立派なスノーシェッドだ。見た目にはそんなに時間が過ぎているようには思えないが、これと似た構造の物をどこかで見たことがある…さて、どこだったっけ。思い出そうとしてあれこれ悩んでみるも出てこない。ひとまず、先日行った大針洞門の姿と私の頭の中で比べてみると、構造的にはさほど変わりないようにも見える。足の細さも健在だ。おそらく同じ年代に設置されたものではないだろうか。
さて、やっぱり一番の楽しみは中に入って眺めること。それではっと…!

おお~!

シェッドの足が細いなぁ!。大針洞門には、その細い柱と柱の間に確か紅白の柵があったはずだが、ここはそれもない。仮にここから落ちると、現道との間にはかなりの高低差があるし、そもそも造られたころには現道はない。てことは、元々ないんだな(笑)
路面もアスファルト舗装のはずだが、自然に土のコーティングがされていて未舗装のようになっている。そして壁際の路面には草、しかもシェッドを出て先の左カーブの、なんと開放的なことか。ガードレールもデリニエータも、なんにもない。こんななんにもない道が私は大好きだ。それは良いのだが…

今度はいきなり狭くなった。結構狭くなってしまったぞ!。この幅って車1台通ればギリギリで、落ちたら下に真っ逆さま、こりゃ現役時代は通るのに苦労しただろう。しかもこの道は俗にいう(←当社比)「左直角右直角」の道、おそらくは山の斜面を削り取って道を通したのだろうが、よくもこんなところに道を通したもんだ、と毎回感心するばかりだ。そしてこんな道こそ、旧制道路標識の1枚でも残っていてくれると非常に嬉しかったりする…ということで周辺の茂みを捜索してみるが、それらしきものは見当たらなかった。1~2枚でいいので残しておいてくれると、道を愛するものとしては非常に嬉しいんだけどなぁ(笑)

と思って進んでいると、出てきたのはカーブミラー!。しかも、その足元には半ば草に埋もれているガードケーブルの姿も見える。路肩防護施設が何もないと書いていたが、実はあるべきところにはちゃんと設置されていたようだ。そして、今も残るガードケーブルはこうした道にありがちな、言わばダルダルに緩んだものではなく、比較的ピンと張ったものだったことは嬉しかった。それにカーブミラーも蔦に覆われてはいるものの、今も役割はちゃんと果たしている。ミラーの鏡面は、見通しの悪いカーブに迫りくる車をちゃんと映すと言う役割には十分すぎるほど綺麗だった。

これが、この道が廃道じゃない
証拠だろう。

舞台は一歩づつ本丸へ。
この左カーブを抜けると、そこには…!

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