山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 荒沢隧道

第4部「埋め込まれた銘板」

2023年10月14日 探索 2024年3月10日 公開

埋め込まれた銘板


2枚目…国土地理院の電子地形図(タイル)に注釈を付記して掲載

スノーシェッドを出て、隧道ご対面。ここから隧道を通って直進する道筋が、旧県道349号、ここから右に行く道は…と、手元の地図を確認してみる。チェンジ後の画像が、このレポートの最初で紹介した地理院地図の地図だ。

この地図は今回の探索場所を赤線と赤矢印で示していて、右側が探索の起点側になっている。この図中では赤線で隧道の位置を示しているが、その隧道の起点の位置から川の方に進む道が見えるだろう。この道は荒沢ダムの管理事務所へ通じる道だ。この旧道の荒沢隧道と現道の荒沢トンネルは、高度が違うだけでその坑口はほぼ並行しているが、現道の荒沢トンネルから川側に向かって短い道が分岐しているのが見えると思う。
実はこの短い道はもっと先に延びていて、私の目の前に見えている隧道の坑口からダムの方向に向かう道と最終的に繋がっている。まずは隧道の周辺を眺めてみよう。

隧道の周辺は、このように鬱蒼とした森に囲まれている。針葉樹の杉がほとんど見当たらないので、自然のままの森だろう。そこに道を通し、崩れるのを防護するために設置された強固な擁壁。隧道の坑口付近も蔦などの植物に囲まれていて、ここから銘板なんか見えやしない。おかげで隧道自体が実に鬱蒼とした雰囲気になっているが、ここから見ると隧道の坑口はどうやらしっかりとフェンスで塞がれているようで、中を通行することはかなわないようだ…。残念に思っていると、どこからか水が流れる音が耳に飛び込んできた。おや?どこだろう?とあたりを注意深く見回してみると…

…あれだな。強固な擁壁の上に、なんと滝を見つけた。しかもかなりの水量で流れていて、近くで見られればちょっとした名所になりそうだが、残念ながらこの辺りには滝まで行けそうな道もないし、その案内もない。どうやら人の手が入っていない自然のままの滝のようだが、あの水はいったいどこに流れているんだろう。まさか、隧道の中に…?。一瞬いやな予感が走ったが、ほどなくして滝の水がどこに流れているかすぐにわかった。

前回のレポートで登場した「隧道への回廊」のスノーシェッドを隧道側に抜けた直後の右側に(ここは隧道への直進と右へ向かう道の交差点部分である)このように片側だけ柵がしてある場所があった。実はこれは橋で、この柵らしきものは欄干らしい。そして、さっきの森の中の滝の水は、この橋の下を流れているようだ。橋の銘板らしきものが欄干に取り付けられている。早速確認してみよう。



まずはシェッド側から確認してみる。そこにはひらがなで「なかやまばし」とあった。てっきり沢の名前か何かなのかなと思っていたが、実際はあまりにも普通だった。その銘板は親柱などではなく(そもそも親柱がない)、欄干に直接取り付けられていた。チェンジ後の画像は、その反対側の銘板の画像。「中山橋」と記されているが、滝の名前や沢の名前などはなく、わからないままだ。もっとも欄干が片側だけしかないということもあり、銘板が付けられないということもあっただろう。

そして隧道から右に行く道の先を眺めてみると、なんと擁壁に一文字づつの石板が埋め込まれていて、ご丁寧に手の形をした石板まで作られている、なんとも素敵な擁壁がそこにあった。その石板には「☞荒沢ダム」とあり、どうやらここがダムへと向かう道のようだ。だが、その道の状態は御覧の通り枯葉が積もり、お世辞にも常時何らかの交通があるような道ではないように見える。なんとなくだが…実にもったいない。素敵な石板が埋め込まれたこの道、こんな風に廃れ行くには非常に惜しい気がするが、どうだろうか。

これが、その道の先を眺めた風景だ。いいじゃないか!明るい雰囲気に包まれた、実に素敵な道だ。荒沢ダムと一文字づつ刻まれた銘板5枚(1枚は☞)が埋め込まれた擁壁が左側に見え、路面には枯葉が積もり、およそ車はほとんど通らないような道。その路面は湿り気があって一部はやや泥濘んでいたりする。こんな素敵な道をこんな風に放っておくには実にもったいない。

この道を通ってみたいところだが、今は荒沢隧道を先に愛でることにしよう。もしかしたら…!と言う、一縷の期待を込めて。

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