一般国道403号
大貝トンネル旧道
第8部(完結編)

2022年7月24日 探索 2023年3月12日 公開

三桶橋を渡って集落の中へ向かっていく。橋を渡るとすぐに三差路、旧道は直進の方向へ進んでいく。その方向を示すように、左側の側溝がその通りに進んで行っている。辺りは静かな山間の集落と言った印象で、およそ宿場町と言う雰囲気は感じられないものの、この雰囲気も私は好きだ。まさしく栄枯盛衰ではないか。栄えた昔を懐かしむようにこの集落はここにあって、人々の暮らしが紡がれている。

辺りをいろいろ見回しながら集落の中を歩いていると、空き地に石柱を見つける。おもむろに地面からニュッと生えているので、最初は石柱とは思わずにただのコンクリート柱かと思っていた。だが近づくにつれてどうも違うような気がして、ゆっくり近づいて見てみると!。

標柱ではないかっ!

これは驚いた。地上に出ている分が妙に長くて、そこに刻まれた文字は「境界標 新潟県」。新潟県の文字の下には横一文字に筋らしきものが入っている。ふむ、昔はここまで地中に埋まっていたと言うことか。こんな標柱は初めて見た。
普通は「新潟県」とだけ刻まれているものと思うけど、丁寧に「境界標」まで掘ってあるというのは…
でも、これでこの道が以前は国道(県道)だったことがはっきりした。

旧道沿いを眺めてみる。時間帯もあってか、人通りがさほどないので撮影してみた。路面の中央にある一本のコンクリートの筋は、新潟県名物の消雪パイプ。近くに掘られた井戸から飲料水に適さない地下水を汲み上げて、コンクリートの筋の下に埋設されているパイプに通して路面に流し、その力で融雪するというもの。降雪時には非常に効果を発揮するが、大雪時には積もる速度の方が早いため若干は路面に積もってしまうし、汲み上げる地下水が鉄分が非常に多いため、その鉄分で路面が真っ赤になってしまうという欠点がある。

これねぇ…白い車で一冬越すと、車の下半分が茶色くなってしまうくらい強烈なもの(濃色車でもついてるんだろうな、きっと)。雪のシーズンが終わると水あか取りで洗って、元の色に戻さなきゃいけないのが大変だったりするのだが…


今は車庫などが並ぶ寂しい通りになっているが、旧道がここを通っていたということはここがこの集落のメインストリートだったのだろう。この通り沿いに商店が並び、旅籠らしき古き建物もあったかもしれない。脇往還だったころには旅人が身体を休め、船着き場に向かう人、降りた人で賑わっていたこの通り。昔を偲ぶものは今は何もないが、先ほどの標柱だけが、この道が往時の賑やかだったころを今に留めている。

前方に見える白い柵のようなものは、現道の路肩の構造物だ。その手前の路面には「止まれ」の道路標示も見える。のんびりと辿ってきたこの探索も、本当にもう少しで終わりだ。

ここが合流地点だ。横断歩道の標識のところが旧道と現道の合流点だ。今は鋭角な丁字路になっているが、現役だった頃にはおそらく左側の空き地が道路で、もう少し緩やかなカーブで集落に向かっていたと思われる。で、こうして少し離れたところから見ると交差点の手前の道と、交差点から先の道の造り方が違うのがおわかりだろうか。

遥か昔、ここを高田へ向かう人たちが行き交いしたと思うと感激もひとしおだ。それから幾星霜の時が流れて、私は今ここに立っている。それでも道筋は変わらず(旧道から現道に変わりはしたが)、国道として人々を通している。

現道に合流して、少し離れたところから交差点を見てみる。今は山間の集落と言った雰囲気の三桶集落。そして位置からすると正面左側の林の先に、大貝の集落が隠れている。
探索はこれで終わりだが、何の変哲もない旧道でもじっくり見てみるといろいろな発見があるものだ。心残りは渡し船の跡を見つけられなかったことだが、これは草木が落ち着いたころにもう一度訪れて見てみることにしよう。

国道指定から外れても
今でも地域の人たちに大切にされている道
渡船から橋、そしてトンネルへと
二つの集落を繋ぐ道のりは変わっても
歴史はそこに静かに横たわっていた

一般国道403号
大貝トンネル旧道

完結。