一般国道403号
大貝トンネル旧道
第2部

2022年7月24日 探索 2023年2月16日 公開

雪崩と戦うものたち

前回は山を回り込むような序盤戦だったが、ここからは言わば本番だ。
これは旧道と現道が交差する交差点の真ん中で撮影したもので、向かって右側が第1部でレポートした旧道のいわゆる「前哨戦」部分、左側がそれに繋がる旧道だ。正面に見えるトンネルが大貝トンネル方向で、手前にある橋が白倉大橋。御覧の通り白倉大橋は大貝トンネルの坑口と直結するような形で繋がっている。この橋が越えている谷はかなりの高さになっていて、高いところが得意じゃない私は、下を覗き込むことは止めておいた。
これから進む左の旧道は等高線に沿って一気に下へ谷を下りて登りに転じ、大貝の集落を目指す。それでは、その旧道に突っ込んで行こう。



今までとは違った、とても広い道幅の道が結構な下り勾配で進んでいる。普通車どころか大型車が優に離合できそうな道幅だ。前方左側の斜面に鉄製の柵状のものが見えるが、これはおそらく雪崩防止柵だろう。この道を守る道路構造物を見たのは、これが初めてだ。
チェンジ後の画像はその雪崩防止柵の位置を示したもので、今は夏で深い緑に包まれているが、下草などが冬枯れする雪の季節だと柵の全体がより見えると思う。雪崩は柵の位置からすると左上の斜面上部から滑り落ちてくるのだろうが、それがもし道路に落ちてきたら。
それを守るために、この道が旧道となって交通量が少なくなった今も、彼らは雪崩から道を守り続けている。

少し進んで雪崩防止柵の下を越えると、あれだけ広かった道幅がいきなり狭くなって、2車線(対面交通が出来るかどうか)の道幅になった。おまけに勾配もいきなり急になって、一気に谷底に向かっていくように下っていく。
今は緑深い時季、夏の強い日差しが濃い緑をひときわ際立たせているが、自転車を停めてキョロキョロしながら景色を楽しんでいると、正面の斜面にも雪崩防止柵らしき鉄骨の構造物が見えた。いったいこの道はどれだけ雪崩が起きてたんだろう?。これでは危険すぎて冬季通行止めにもなるわな。そう思う局改(局所改良)で別ルートの道を開通させても仕方ないのかなと思う。

だが、この道は国道403号の旧道として、まだ生きている。道を追いかけて探索する者として、これは単純に嬉しい。

今も残る国道403号の旧道。この先、どんな風景を見せてくれるのかワクワクしながら進んでいるが、夏の日差しも強く降り注いでいるので非常に暑い。路肩の木陰で少し涼んでいるが、現代の道だとこうはいかないことに気づいた。現代の道全てとは言わないが、道幅も広く車での通行に快適な道は歩行者や自転車にとっては日陰も少なく、こうして休む場所がなかなか少ないのだ。
時代と共に造り方も印象も変わっていく道を比較対象することはすごく楽しいし、そこから歴史を知ることが出来るので、面白くてワクワクする。

おっと、プーさん(クマ)が活動時間に入る前に大貝の集落を目指すんだった。先を急ごう。
ブレーキ一杯握りしめて下りの坂道を降りていくが、その前に・・・。

右側に残るガードロープの支柱。昔そこにはワイヤーが張られ、人や車の転落を防いでいたのだろうが、今は見る影もなく支柱からワイヤーが外れてしまって、弛みきってしまっている。どれだけ高いのか、コンクリートで固められた路肩から下を覗き込むこともできたが、それよりも目を奪われたのが対岸に見える、これから進むであろう旧道の路盤だ。山肌に張り付いて進むその姿は山岳国道そのもの。まずはあそこを目指そう。

右カーブを曲がって、ガードロープの支柱が壊れていた場所から見えていた、あの旧道の路盤の場所までやってきた。そこで目に飛び込んできたのは、現道の大貝トンネルと白倉大橋。旧道と現道が一つのアングルに入るとは嬉しい。特に、山の中腹にいきなり坑口がある大貝トンネルの姿に目を奪われる。
現道が今後、何かの理由で廃道化して白倉大橋の桁が外されたりでもしたら、どうやってあの坑口に到達しようか。下から登るか、脇から攻めていくか・・・などと、あれこれと考えてしまった。この区間、2005年(平成17年)12月14日に供用開始したばかりだってば(笑)。

この風景を見てそんなことを考えるのは、
やはりこの道路の探索を楽しんでやっているからだろう。
さて、先へ進もうか。

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