新潟県一般県道227号
室谷津川線 旧道 第4部
2021年5月8日・2021年6月2日 探索
2021年7月24日 公開
待ってくれていた橋
右カーブを抜けると見えた、あの空中に架かる橋。あれは現道の橋に違いない。と言うことは、その下にある橋が旧道の橋じゃないか!。これは早く近づいて確認しなくては!。…焦る気持ちと裏腹に、動かない身体。身体が思う通りに動かない時には事故のもとだし、ケガのもと。気を付けて先に進まないと、万が一ケガでもしたらそこで探索が終わってしまう。
少し立ち止まって、気持ちを落ち着けて、改めて遠景から確認。こうして眺めてみると、やっぱり現道の橋と旧道の橋の高低差。いったい何メートルあるんだろう。もし常浪川ダムが完成していたら、私が立っているこの場所も水没してしまっていた。
橋を眺めながら旧道を辿っていく。旧道は急勾配で下りながら右へ左へ線形を変えながら、緩やかに高度を下げていく。等高線を無視してるかのような道と違って、牛車や馬車が上がれるような緩やかな(それでも結構勾配はきつい)勾配になっている。もしかして、ここは街道筋だったのか。そんな思いが頭に浮かぶ。左にはガードワイヤーらしきものがあるが、そこに張られていたワイヤーは弛みきって、もはやその存在意義を失ってしまっている。
・・・ま、こうでないと旧道を辿っているって言う気分が盛り上がらないんだけどね(笑)。
いかん、これはいかん。…萌える(笑)。
だって、山肌を切り取ったような路盤に、弛みきったガードワイヤー。そしてそこに茂っている低木の木々と、眩いばかりの新録の緑。この左カーブを眺めていると、遥か昔の砂利道だった当時に大きな身体を揺らしながらゆっくり登ってくるトラック、砂埃を上げながら登ってくる車の姿が目に浮かぶようだ。この旧道にそういった自動車が走っていたかどうかはわからないが、その雰囲気は十分であることは間違いない。そんなことを思っていると、思わず背中に背負ったリュックの重さを忘れていた。
旧道をある程度降りてきたところで、これから向かうであろう地点を確認してみる。この風景を見ると否が応でも気分が盛り上がってきて、そこにすぐに行きたくて仕方がないが、今日の探索は自転車ではなく徒歩だから、すぐにすっ飛ばしてそこに行くなんて訳にもいかない。新緑に包まれる天空の橋と地上の橋、現在の道と過去の道が交錯する場所なんてそうそうあるもんじゃないし、逃げるもんでもないから、ゆっくりいこう。
「橋ばっかり見てねぇで、オレも見てくれよ!」と言わんばかりに自己主張が強かったこの石垣。玉石を組み上げた旧道によく見られる石垣だが、旧道とは言えどそこそこ年季が入ってないと見れない。土と草に埋もれかかっているが、確実に時間を積み上げてきた風格を感じる。
上の二つ手前の画像を見ていただけるとおわかりいただけると思うが、この石垣が右側に延々と続いているし、道幅が広すぎるような気もする。やはりこの道は古くから街道として重宝されていたのかもしれない。
きたきたっ!
いよいよ、地上に残るあの橋に辿り着くことが出来る。それだけで嬉しくて気分は高揚している。旧道の橋はここから見る限り何の変哲もない鉄の桁橋だが、そんなことはどうでもいい。肝心なのは、こうして今までここに残ってくれていたことだ。
これまでの永い時間、ここで私を待ってくれていたかのように存在してくれていたおかげで、こうして旧道の橋を見つけることが出来た。おそらくこの旧道は、今まで誰も記録に残してはいない。私が見つけたのも何かの縁だろう。ちゃんと記録に残そう。そう思った。
一気に橋へ接近するよりも、ひとまず全体像を。そう思って、あえて少し離れて撮影してみる。この位置は沢にある砂防堰堤に通じる作業道の入口から撮影したものだ。ここから見ると旧道の橋はI型鋼の桁橋で高欄はガードレールと言う、どこにでもある桁橋だ。だが、そんな橋でも時間を積み重ねていけば、自ずと風格と言うものが身についてくるもの。
いいじゃないか、この橋。こういった橋や隧道をつまみに眺めながら、酒でも酌み交わしたいものだが、それをやると帰れなくなってしまうので、いまだに実現していない。だが、いつかテントでも張って実現したいと思っている。…変態だろうか(笑)(←今ごろ何を言ってる(笑))
さぁ、いよいよこの橋とご対面だ。
じっくりと愛でることにしようか。