新潟県一般県道227号
室谷津川線 旧道 第3部
2021年5月8日・2021年6月2日 探索
2021年7月20日 公開
天空の橋へ
軽くなった気持ちと、相変わらず重い背中のリュックに相反するものを感じながら、てくてくと歩いていく。ここから先に見える道の様子はやや上り坂になっているようで、最近重くなってきた身体にはダイエットとしてちょうどいいかもしれない。今日はやや曇り空で光量としては不足気味だが、新緑が溢れていて目に眩しく、春であることを実感させてくれるこの道。沈まなくて本当に良かった。
旧道の周りの風景を楽しみつつ、体温をあまり上げないように極力ゆっくり歩きながら、先へ進んでいく。右の山側の斜面と、左の路肩から下の崖の斜面の線をこうして俯瞰的に眺めてみると、この道がどうやって造られていったかがわかるような気がする。この道はおそらく斜面を削り取って通したのだろう。左下には常浪川が流れているが、その水面まではかなりの高さがありそうで、よくもこんなところに道を通したものだと感心させられる。
ポツポツ、テクテクと歩いていくと、山側にこんな岩壁を見つける。私は地質にはさっぱりだが、これを見るだけでも何やら遥かな時間を感じてしまう。この岩、この道が作られる際に削られたか割られたかで、この形になってしまったのだろうか。
余談だが、実は私はこの旧道に入る前の道端に一つ石碑を見つけていた。それは旧道の入口の遥か手前の山側の法面にあったものだが、それによるとこの室谷津川線の遥か昔は、どうやら街道筋だったようだ。とすると、ここも遥か昔は多くの人が行き交っていたのか?。ここの岩場の下で一休みしていたかもしれず、姿が見えるようで実に楽しい。
のんびりと歩いていると、道幅が狭くなってくる。クルマが1台通れるかと言う道幅だが、中越地方で出会ったいくつかの狭路県道よりは各段に広い道幅だ。汚れたガードレールと、やや荒れ気味になってきた路面が、否が応でも旧道感を盛り上げてくれる。いやぁ、いいなぁ。都会から離れてこんな道をポツポツと歩いていると、いらないものが身体から全部出ていくようで気持ちいい。私が旧道や廃道に向かうのは、これが理由かもしれんと、今更ながら再発見する(笑)。
道は地味に上り坂で、常浪川に沿って進んでいる。前方に、これから進むであろう道が写っているのにおわかりいただけるだろうか。正面の三角形の杉の下あたりに路肩がコンクリートで補修されているのが見える。旧道の周辺は最初の時と同じく、道端に不思議な空間が目立つようになってきた。民家か田圃、畑などが広がっていたのかもしれない。
ところで、ここは常浪川の水面よりも遥か上を通っていて、現道は右側の更に高いところを通っている。ここに造られる予定だった「常浪川ダム」は、いったいどれくらいの規模で周辺を水没しようとしていたのか、考えたら空恐ろしくなってしまった。そして、今私がいるここも、湖底に沈むはずだったのだ。満水になれば、あたりをすべて飲み込んでしまうダム。一度水没した道や森、道路構造物は二度と元には戻らない。
おや?道の先が見えない?
道なりに進んでいくと、この地点に出る。何の目印もない一見するとただの農道だが、これが旧県道だったことはこれまでの探索で明らかだ。この道に入った時に感じていた違和感も、その原因がわかってからは慣れてしまったのか、あまり感じなくなってしまった。
ところで、ここからこの旧道の行く先を見てみると、進む先が見通せない。立ち止まって観察してみる。
進む先が見通せないと言うことは、この旧道は進行方向の正面に見えているこじんまりした林(?)から、下りながら右か左にカーブしているはずだが、路面の傾斜を考えると、おそらく右カーブだろう。つまり、正面の林のあたりから旧道は右に急カーブで下っているはず!。などと、つい独り言を言っていた。傍から見れば実にアヤシイやつである(笑)。
あったり!
思った通り、道は右カーブで下っている。それもまるで一気に高度を下げるかのような、急な下り坂。この時私は心から思った。逆側から探索を始めなくてよかった、と。こんな上り坂、歩いて登ろうものなら結構キツイぞ、これは。
自分の幸運さに感謝しながら(笑)前方を見ると、下り坂を抜けた先に何か見える!。慌てて地図を取り出して確認すると、私が今いる場所は、現道の橋と旧道の橋が接近している地点の少し手前らしい。すると、あの橋が…!
おおおっ!