新潟県一般県道227号
室谷津川線 旧道 第2部
2021年5月8日・2021年6月2日 探索
2021年7月16日 公開
沈まなかった道
もしかしたら、この道はいつか通れなくなるはずだった道なのではないか。そんな気がしてきた。旧道にしては妙にきれいで、山側に新しく道を造る理由が見当たらない。仮に交通量増大とか(まず違うと思うが)道路の整備が目的としたなら、この旧道を拡張すれば済む話だ。それに、そう私に思わせた理由として「旧道が通る標高に対して、現道が通る標高が高すぎる」と言うことがあった。
現道はこの旧道の右側の山中を通っているが、既にここからは見えないほど高いところを通っている。
単なる道路の付け替えなら、この高低差はあまりにも変じゃないか?。
現道はどのあたりかと山側を眺めているときに、ふと視線があった(とでも言うのだろうか)のが、この旧道脇の低い擁壁。草に埋もれてしまっていて、一見すると石垣のようにも見えるが、実はコンクリートパネルを組み合わせたものだが、それでも低すぎやしないだろうか。この擁壁の上には「以前は何か建造物があったんじゃないか?」と思わせる平場があるし…。
いろいろ考えながら歩いていると、蒸し暑さも忘れて歩いていた。ふと我に返り、のどが結構乾いていることに気づく。熱中症にならないためにも、少し休憩して水分補給することにしよう。左に見えるガードロープの支柱に腰掛け、日陰で麦茶を飲む。やや生温くはなっているものの、あまり冷たいと身体に吸収されるのが遅くなってしまうので、このくらいがちょうどいい。あたりを眺めると、旧道脇に妙な平場が多くて、旧道なんだけどそれらしくない、なんだか不思議な雰囲気の道でもある。
一息ついてリフレッシュも出来たし、塩分を補給したことで頭もすっきりしてきた。先へ進むことにしよう。ここまで来ると道路に積もった枯葉がダブルトラックをくっきりと描いているが、交通量が多いと言うことではなさそうだ。こういうところのガードロープは、長い間放置されていると弛んでしまったりしているものだが(それがまたいいんだけど(笑))、ここはそうでもなく比較的ピン!と張っている。この道の今の素性はおそらくは「阿賀町道」だが、管理はされているようだ。
少し先へ進むと、右側の山側は高さを増してきており、こういった結構な高さの擁壁が登場するようになった。相変わらず旧道は常浪川にぴったりと寄り添って室谷を目指しているが、ここから見える通り左側に少し空き地があって、そこに何やら白い看板が見える。ここからでは内容が見えないし、てっきり電力会社のダムの放流警報の看板かと思って近づいてみたら…
やっぱりそうだったか
看板の左側が割れてしまっているが、そこに書かれていた文字はおそらく「常浪川ダム」だろう。私はダムには素人だが、ダム高66.4m、提長高285mと言えば、結構な大きさのダムのように思える。事業主体は新潟県とあるから、ここまで続いていた旧道沿いの妙な空き地を含め、この旧道の周辺一帯がダム建設予定地として県に買収されたものの、おそらくは建設中止となってしまったために放置されているものと思われる。今、ここでわかる情報は、この看板の情報しかなく詳細はわからないが、今残されているこの自然を見ると、中止でよかったのかなと言う気がするのは私だけだろうか。
常浪川ダム建設予定地の看板を見て、今までの疑問が解けたようでひとしきり納得した私が先へ進もうとすると、ふと路肩に目が留まる。一見すると古い錆びついたガードレールに見えるが、その基礎の部分を見て頂きたい。しっかり(と言うか思いっきり)宙ぶらりんになっている。常浪川の水位が雨などで上がった際に削られてしまってこうなったのだろうが、この旧道は常浪川に沿っているだけに、実は災害で通行止めと言うことも多かったのかもしれない。この道が通行止めになってしまうと、一番奥の県道終点である室谷集落に住んでおられる方々は、孤立してしまうことになる。
もしかすると、災害のための県道改良と言う目的もあったのか?などと、あれこれ考えこんでしまった。
ひとまず納得して先へ進む。一つ謎が解けたというか、大きなヒントを見つけたせいで、先ほどまで考え込んで重かった頭が妙に冴えてしまって、気持ちは非常に軽く進める気がする。但し、背中のリュックは相変わらず機材などで重く、軽くなったのはあくまでも気持ちだけで、足取りは重いことをお断りしておく(笑)。
おなじみの地理院地図をプリントした地図をポケットから取り出して眺めてみる。その地図上だと、この先に現道の橋と旧道の橋が接近している場所があるようだ。おそらくは、旧道上から見上げると現道の橋が見えるだろう。
どんな景色が見えるのか、非常に楽しみだ。まずはその場所を目指そう!。