新潟県一般県道227号
室谷津川線 旧道 第11部
2021年5月8日・2021年6月2日 探索
2021年8月21日 公開
室谷集落を目指して
ここからは後編だ。前編とは探索日が違っていて、前編から一カ月ほど後に探索した。一カ月と言うと、期間としてさほど長くないように思えるが、さにあらず。こういった山々の中では、一カ月と言う時間が過ぎれば草は生えるし木は伸びるしで、風景なども変わってしまう。
と言うことで、今、私がいるところは名古津集落。前回の最後のゴール地点が、スタートになる。古くは街道だったこの道筋が、後半でどんな風景を見せてくれるのか楽しみだ。
また、前回の探索は土砂崩れなどで通れなくなっている時のことを考えて徒歩で行い、結構な距離を歩くことになったが、今回は自転車と言う強力な相棒がいるので、機動力が上がっている。前回よりは少し楽な探索になるはずだが、見落としのないように注意するようにしたい。
さ、それでは探索スタート!
おお~、いい雰囲気の道じゃないか。道幅は1.5車線ほどしかないが舗装はしっかりしていて、今でも何がしかの通行はあるとみた。当然、自転車で走っても非常に快適で、しかも若干の下り坂。最初からこんなに楽でいいのかと思ってしまう。
だいたいの場合において、こういう時には後で帳尻が合うようになっていて、この後自転車が使えなくて押して歩く羽目になったりする。今回はどうだろうか。何もないと嬉しいが…
カーブを曲がって、これから進む道筋を眺めてみる。道の左右は下枝が綺麗に枝打ちされた、まっすぐな杉の木が生えている。その太さはかなり大きくて立派だ。まだ始まったばかりで少ししか進んでいないが、自転車を停めて耳を澄ましてみると、ここでは鳥の囀りが聞こえる。この風景も相まって、ここが旧道だということを実感させてくれるが、道の雰囲気はどことなく林道っぽい。ここが県道の旧道だという証明が何か欲しくて、旧道の周囲を探してみると…
おっ、あったあった。カーブミラーにはおおよそ設置者が表示されているはずで、これが県道かそうでないかの判断材料になったりするが、早速確認してみると「新潟県」の文字が見える。やはりここは県道の旧道だったか!。
進む道は間違ってなかった!(←そんなに大したものじゃない(笑))。と言うことで、安心して進もう。ところで、このカーブミラーは鏡の向きが若干曲がっているようで、ここから見ると路肩の草原しか映っていない。これも愛嬌と言うところか。
森の中を進む旧道。旧道の左右には杉の木ではなく雑木が茂っているが、この道がもし未舗装だったらどんな風景だろうか、想像してみる。きっと馬車や牛車も通っていただろう。沿線には馬頭観音もお地蔵様も見当たらないが、いかにも街道筋らしい道筋が頭の中に蘇ってくる。会津沼田街道の本名から分かれて津川へ向かったこの会越街道は、津川から越後街道に入ると、そのまま新発田に抜けることが出来たので、通る人々はそれなりに多かったのかも。
道の脇には形が崩れてひしゃげたガードレールがある。おそらく冬の除雪の際に曲がったものだろう。この辺りは冬になるとメートル単位で雪が積もる豪雪地帯、県道となってからもこの道は奥に室谷の集落があるので通行止めにも出来ず、冬の除雪は大変だったことは想像に難しくない。それに、心なしか前半の風景よりも旧道臭が濃いような気がする。
左右に緩やかな弧を描いて進む道は最奥まで来るとこのように右にカーブしながら、一気に高度を下げていく。名古津集落に入る手前辺りから離れていた常浪川がまた近くまで寄って来ているようで、正面の林を抜けてくる風が他の方向から吹いてくる風よりも涼しく感じられて、探索を始めたばかりと言うのに蒸し暑さで若干汗ばんでいた身体に気持ちいい。
下っていくと、山から流れ出た小さい沢の水が路面を渡って、更に下にある常浪川を目指して流れていた。
この小さい沢の水量がもう少し多くなれば「洗い越し(道の上を川が流れるようにしてあるもの)」のようになっていたんだろうなぁと思いながら、そのまま近づいて眺めてみることにしたが、この道の傾斜も結構きついことにお気づきだろうか。正面の上部の山の中腹に電柱が規則的に並んでいるが、これが現道の227号だ。
これに対して旧道は(先ほども書いたが)常浪川に向かって一気に高度を下げていくので、このような急勾配になっていた。勾配標識がなく数値的にはわからないが、「坂を上るのに息が上がって、嫌になるほどの勾配」と言えば、わかっていただけるだろうか。
さっき「この小さい沢の水量がもう少し多くなれば…」と書いたが、近づいて見てみると、その水量は決して少なくなかった。むしろ、結構な量の沢の水が手前に見える窪地に一旦入って、そこから路面に流れ出すという、非常に小さいダムのような形になっていた。その水に触れてみると、とても冷たくて透明で、この近くには閉塞したトンネルもないからトンネル内部の溜水が流れ出しているわけでもなく(笑)、間違いなく雪解けの湧き水だろう。
顔を洗ってみると、冷たくて気持ちよかった。
左に見える林の外側を流れる常浪川に寄り添うように、右に左にくねくねと曲がりながら室谷を目指す旧道。もう少しで川岸に出るはずだが、そこに待ち構えていたのは…?!
…やっぱり辻褄はきちんと合うもんだ(笑)