山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 荒沢隧道

第7部「失われた橋」

2023年10月14日 探索 2024年3月22日 公開

「失われた橋」

さて、ここが現道の笹根トンネル坑口。現代のトンネルらしい白いコンクリートが眩しい、美しいトンネルだ。その左側に、いかにも怪しげにガードレールが並べられている場所がある。これはいかん。実にいかん。入りたくなってしまうではないか(笑)

実は、ここが荒沢隧道から出てきた旧県道が現道と交差している地点だ。旧道はここで現道を横断し、右側に向かって山に沿いながら進んでいって笹根隧道へと入っていく。と言うことで私はここを左に入っていくのだが、覗き込んでみると…

おお!いかにも旧道と言う感じのいい道じゃないか!。しかも、封鎖しているであろうガードレールの先にはスノーシェッドも見える。しかも、これまでの大針洞門や隧道回廊のスノーシェッドよりも、さらに「道を護ってきた」と言う風格をビンビンと感じさせてくれる、たまらんシェッドだ。これはさっさと行かなけりゃいかん。逸る気持ちを抑えつつ、突撃だ!。

先へ進んで、封鎖しているガードレールのところまで来た。だが、何となく道の様子が変だ。目の前には古ぼけたスノーシェッドが横たわっている。何の変哲もないシェッドだが柱と柱の間が非常に広く、これで上から大量の雪が落ちてきたり雪崩でも起きたら、果たして支えられるのかしら?と思うほど華奢なスノーシェッドだ。
それはともかく…あたしゃ向こう側に行きたいのだが、道の状態に何となく違和感があるのだ。もしかして…と、ある予感が頭をよぎるが、ひとまず覗き込んでみよう。

うおっ!ない!

そう、道がないのだ。いや、正確にいうと「道がない」というのは当てはまらないだろう。道がないというよりも「橋がない」のだ。スノーシェッドの下にコンクリートの構造物が見える。これは、この構造物がある場所から見て、おそらくは橋台だろう。つまり、ここには以前は一本の橋が架かっていたはずなのだが((旧)河倉沢橋だろうか)、その橋が落とされたか撤去されたかで、橋桁がない。と言うことは対岸に行けず、必然的にシェッドに行けない訳で、となると…荒沢隧道の坑口に行けないじゃないか!。
これが法面が崩れているとでもいうのなら、高巻きでトラバースしてかわせば場合によっては行けないことも無いだろうが、渓谷に架かっている橋の橋桁が撤去されると、周囲は切り立った断崖なのでどうしようもない。

うう…ショックだ…。仕方ない、ベースの車に戻るか…

現道の河倉沢橋よりスノーシェッドを見てみる。欄干の上から撮影しているので、視点は見下ろしているようになっているが、実際はそんなに高さに差はない。こうして見ると、山の斜面に張り付くように、スノーシェッドに護られながら進んでいる旧道の様子がよくわかる。そのシェッドは左側でプツンと切れているが、おそらくあの位置が荒沢隧道の坑口の位置だろう。この道が現道に切り替えられたのは、この後の二つのレポートを経た最後にまとめて行うが、この荒沢隧道に関しては、旧道がこれだけ風光明媚なところを通るだけに、残しても良かったんじゃないかと思うのだが…

現道の荒沢トンネルを通って戻ってきた。ここから少し歩くと、最初の旧道と現道の分岐点に出る。右側は荒沢トンネルの坑口、そこに立つカーブミラー。このカーブミラーは荒沢隧道の坑口手前から右に向かっていたあの道が現道に合流する地点だ。だから、橋の欄干に左右の矢印のデリニエータが取り付けられている。でもって、その上に見えるのは…あの隧道への回廊のスノーシェッドではないか!。自然に溶け込んでいるその姿が、実に美しい。

旧道の荒沢隧道と現道の荒沢トンネルの坑口の位置は、高さが違うだけでほとんど同じと以前に書いた。それはこういうことで、現道と旧道双方の坑口の位置は高さが違うだけで、このようにほとんど変わらないのだ。で、荒沢隧道の坑口手前から右に向かっていたあの道は実は現道の荒沢トンネルの坑口の直上を通っていて、その道に現道から直接アクセスできるように、現道のトンネル坑口の右側から分岐する坂道があったりする。この辺の道の配置、実に面白い。

あ、そうだ。そういえばこの道の合流点に面白い標識があったんだった。

いや、自主規制と言われても…(笑)

場所が場所だしねぇ、ここはきちんと公安委員会に規制してもらって「止まれ」とした方がいいと思うのだが、どうか。それにしても、さっきの「落石注意」といい、今回の「止まれ」といい、今回はオリジナルの標識が多くてなかなか楽しい。

次回、ここから帰りに見た風景を織り交ぜながら、ベースに戻るまでをご紹介しよう!。

第8部
(完結編)
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