山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 荒沢隧道
第5部「玉石積みのスパンドレル」
2023年10月14日 探索 2024年3月14日 公開
玉石積みのスパンドレル
さて、いよいよ隧道本体へのアプローチだ。正面に相対してみると、なかなか風格ある坑門じゃないか。しかも珍しいことに、坑門やその周辺(いわゆるポータル)がすべて玉石積みになっている。そう、坑口周辺のポータルの化粧のような役割を、整然と並んだ玉石が果たしているという訳だ。その玉石で彩られた坑口の周辺は、どこからかの水でぬかるんでしまっている。その水は隧道の坑道から出てきたものか。それとも…
坑口の右側の風景。玉石に彩られた部分もあり、緑の毛皮を着たコンクリートの擁壁も見えて、なかなかにおいしい風景だ。画像の正面には何やら石碑のようなものも見えるが、この時は隧道の前にいることで非常に興奮していて、この石碑を確認するのをすっかり忘れていた!(^^;
恥ずかしながらレポートを書くときに画像を見て初めて気が付いた。で、この期に及んで画像を拡大してみると…一番先頭に庚申塔の「庚」の文字が見えることから、この石碑は庚申塔かなぁという気がするが…(←最初から見ていればすぐに解決できたものを、この辺が詰めが甘いんだよなぁ)
坑口の左側を見てみよう。こうして見てみると、スパンドレル(坑口の脇の壁)やパラペット(坑口の上の壁)がすべて玉石積みなのがよくわかる。今は草に覆われていてほとんど目立たなくなっているが、これ現道時代だった頃はどんな感じだったんだろう。
回廊のスノーシェッドを抜けて直進し、この隧道に突っ込んで行く道と、右に逸れてダムに向かう道。一見するとダムへ向かう道の方が県道のように見えるから、もしかして間違える人も多かったのでは(笑)
坑口は…しっかり塞がれてるなぁ。こりゃどう頑張っても入れなさそうだ。
扁額も何もないもんだから、それこそシンプルに穿たれているだけの飾りが全くない隧道で、単純な作業道に見えなくもない。でも県道なんだよねぇ(←実はこんなのが大好物だったりする。あ、涎が(笑))
見事なまでに玉石が積まれたパラペット。そのためか扁額も何もない、実にシンプルな印象になっている。あらかじめ調べておかないと、この隧道の名称がわからなくて困ってしまうだろうな(もっとも、隧道の名称がわからなくて困ってしまうのは工事関係者の方々か、私と同業者の方々くらいだろうが)。土被りもすごく薄くて、こうしてずっと眺めていると森林鉄道の隧道に見えてきたりもするから不思議だ。巻き立てはコンクリート、これは開設当時からのものだろうか。それにしても、しっかり塞がれてるなぁ。入れないなら、中だけでも見れないかなぁ…。
と、言うことでフェンスの網目にカメラのレンズを合わせて、フラッシュを焚いて中を撮影してみた。中は綺麗にコンクリートで巻き立てられていて、路面もコンクリート舗装されていたりして、今でも全く問題なく通れそうだ。隧道の天井にはケーブルが敷かれていたりするが、それが落ちていることもなく、何よりもこの隧道は全長が確か700m近くあるはずだが、反対側の坑口のシルエットが綺麗に見えている。と言うことは内部崩落は起きていないようで、綺麗に貫通しているのが素晴らしい。
通りたかったなぁ!
ちきしょー!(笑)
名残惜しく(未練たらしく、とも言う)、しつこく隧道の坑口周辺を見ていると、またまたどこからか水の音がする。頭上にある滝とは違って、もっと私に近い位置で音がしているようだ。近くをあれこれ探していると、隧道の坑口の左隅にこんな水の流れを見つけた。画像ではわかりにくいと思うが結構な水の流れで、これはどうやら旧道の下で滝からの流れと合流しているようだ。隧道の中は先ほどの画像のように一部水が染み出している部分はあるものの、全体的には乾燥していて、天井から水滴が滴り落ちてくると言うこともない。きっと湧き水の制御がうまくいっているのだろう。路面の側溝にすべて流れこんで、ここに出てきていると考えた。チェンジ後の画像は、少し離れて見てみたものだ。こっちの方がわかりやすいかな?。
隧道が通れないので、ひとまず戻らなくてはいけない。目指すは反対側の坑口なのだが、ここで私は何を考えたか、今来た道を戻ってしまった。今から思えば、あの埋め込まれた銘板の方向へ行けばよかったのだが、なぜか「見る方向が変わることで、何か見つかるかもしれない」と思って、今来た道を引き返したのだった。
私が途中で何を見つけたのか。
もちろん、戻るからにはタダでは済んでない(笑)
それは次回へ!