一般国道7号旧道
蒲萄峠 第4部

2018年9月6日 探索・2018年9月10日 公開
2018年10月19日 加筆修正

登りつめた頂上にある緩やかなカーブを抜けると、こんな道。
この蒲萄峠はこのような雰囲気のある道が非常に多く、通っていて非常に楽しい道である。

振り返って撮影してみた。道の脇に草が茂っているおかげで道幅が狭く見える。しかし、周りの風景は大昔から変わっていないと思う。この蒲萄峠は杉の植林も多いが、その他の広葉樹などの里山の木々も非常に多い。それがこの景色を生み出しているのだろう。

緑と太陽に囲まれて輝く、山の頂上付近の日当たりのいい道を進む。
ここで少し立ち止まって、陽の光をいっぱいに浴びてみる。街中では得られないであろう清々しい光を浴びて、すっきりした感じがする。昔の方々もこの道を歩き、今とさほど変わらない風景を眺めたことと思う。どんな人たちが何を思い、何を感じて、ここを通っていったのか。

道の途中にある沢。この峠では至る所に、こうした沢が見られた。こうした沢で、峠を越えた人や馬、牛が喉を潤していたのだろう。ところで、持参した水が切れた時に山の水を飲む場合は、流れが多いところを選べというのを聞いたことがある。ここは非常に水量があった。だが、水分はちゃんと持参しているので呑んではいない。

周りの風景を楽しみながら進んでいると、そうこうするうちに毎度おなじみ水準点。「国土地理院北陸地方測量部」とある。この道が元は国道であったことの証。じゃないと、この山中の道に水準点はないだろうと思う。この維持管理などでも、この道が管理されてる理由だろう。

これは馬頭観音塔。馬頭観音はその名の通り、馬を祭ったものである。古くよりある峠道にほとんどと言って良いほどあるこれは、峠を通る際に命を落とした馬を弔って建てられたものである。ここにこの塔があると言うことは、この道が立派な旧道であったことの証と言うことが言える。もしかすると、馬たちも先ほどの沢で人間と共に喉を潤したり、峠を過ぎてここで一息入れている途中に亡くなった馬が多かったのかも知れない。手を合わせて成仏を祈った。

峠を越えて、道は光の明暗が美しい森の中を進んでいく。ここは植林などがされておらず、そのままの森が広がっている。これが本来の森と峠道の景色と言えるかも?。通っていて非常に清々しく、青空と緑の色合いが美しい。

そして、やがて分岐点へ。ここは看板がないと迷うところだが、右の道が微妙に狭いことや、道形を見ても左に行くのが正解のようなので、左に進むことにした(後で調べたところでは、この道を右に行くと、地図上では古小屋沢の手前にて行き止まりとなっている)。

青空と森の対比が美しい道を進んでいく。昔、いつかどこかで通ったような気がする道。この道をまっすぐ進んでいくと…

これが蒲萄峠だ!

峠に正対した瞬間「よく来たな。…我こそは旧制国道10号のころからここにいる、蒲萄峠だ」と、どこからか声が聞こえてきそうなほどの、峠としての貫禄。今までよりも一段と広い道幅。地形図を見ても、この峠の部分は等高線を無視して一直線に超えている、地図上でもはっきり見えるほどの峠道。緩やかな勾配、いかにも「峠」と言う感じがする素晴らしい道だ。正直、その迫力に少し圧倒された。

右側を見ると古い疎石(荒い石=そせき)コンクリートで作られた擁壁(ようへき=防護壁)が見える。これは国道時代からのものと思う。こんな山の中にこんな素晴らしい擁壁が残っていると思うと、非常に嬉しい。今は草に覆われてしまっているが、往時の雰囲気を残してくれている、いい擁壁だ。

左を見ると見事に組み上げてある石垣。草に埋もれてはいるけれど、その石垣は今も健在。いまだ崩れることもなく、この峠をしっかり守り続けている、この強固で見事な石垣。ここが蒲萄の峠。

蒲萄峠を過ぎて、振り返って撮影してみた。ここから見ても非常に美しい峠の風景。
この峠は、今まで通った峠で一番「古くから多くの人と荷車を通し、冬は雪で閉ざされる山間の集落に、通年の賑わいをもたらした道としての誇り」に満ちた峠に感じた。

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