新潟県主要地方道69号
長岡和島線
阿弥陀瀬トンネル旧道

第6部

2022年10月15日 探索 2023年4月9日 公開

静寂と旧旧道と、ふとんかご?

峠を過ぎて、旧道は麓まで下りで降りていく。もちろん、自転車に跨っている・・・と言いたいところだが、実は押して歩いている。何故かって?。自転車に乗っていると、探索をするにはスピードが速すぎる。見なきゃいけないものを見逃してしまい、満足に観察できないのだ。なもんで、下りでも押して歩いている。あるいは跨ってはいるものの、ブレーキは一杯に握りしめて、ゆっくり下っていく(なんだか、どこかで聞いたことがあるフレーズだな(笑))。

ところで、道はここに来て素晴らしい広さになった。しばらく行くと、きっとまた狭くなるんだろうが・・・(もちろん、そうでないと楽しくないんだが)。でも、この広い道幅を独り占めできるなんて、なかなかあるもんじゃない。一瞬だが大の字になって寝転がったことはナイショだ(笑)

寝転がって起き上がって、自転車を押しながら先へ進んでいくと、左側には低い擁壁。しかも、地味に苔生しているのがまた良し。右側には小さい森があって、その真ん中を進む旧道と、今でも役に立っていそうな側溝(なんじゃそりゃ)。
旧道に入ってからと言うもの、今だに車の姿を見ていない。そのためか周囲は静寂に包まれていて、森を吹き抜ける風の音や小鳥の声、そこに生きている動物の息遣いさえも聞こえてきそうな気がする(さすがに熊の息遣いは聞こえてほしくないが)。立ち止まって目を閉じると「静かな静寂」ではなく、街中では絶対に感じることが出来ない「自然の音に包まれた静寂」というものを感じられる瞬間だ。

自転車を押しながらポツポツ歩いていくと、見通しの良いこんなカーブが。空も峠よりは随分高くなって、現道との合流点までさほど距離がないことを教えてくれる。ところで、この道の右側になぜか広場がある。山の中の旧道に、およそ不釣り合いな感じの聖地された広場だが・・・何の用途で造られたのだろうか。一見するとトンネルの手前にある飯場があった広場のような感じだが、ここにはトンネルもないし、阿弥陀瀬トンネルの飯場にしては距離が遠すぎる。林業の方々の作業場かとも思ったが、近くに木を切り出した跡もないし、もとより木々はちゃんと生え揃っている。右隅に見える立て札のようなものには「危険のため立ち入り禁止」とあるが・・・さて何だろう?。ここに来て、ハタと考え込んでしまった。



少し進んで出てきた、左の山側にあった不自然な空き地。一見すると一面草叢で、この場所の元が何であったかわからないくらいだったが、その奥に一本のオレンジ色のポールが。立ち止まって見てみると、その柱に何やら表示板が取り付けられているのが見える。あれはもしかして・・・近づいて確認してみよう!・・・と言うことで、草叢の中に入らずにズームして撮影したのがチェンジ後の画像だ。

そこには案の定「↑注意」とある。このオレンジ色のポールの正体はカーブミラーの支柱で、ポールの手前にある私の身長ほどの高さもある草叢は、元々は路盤だったと言うことだ。はたして、旧道の旧道(つまり旧旧道)は未舗装だったのだろうか、この茂り具合はなかなか素敵だ(笑)。

これ、上のオレンジ色のポールがある画像の先の路面を撮影したものだ。路面の更に左側に平場が少しあるが、ここが旧旧道の路盤だ。なるほど、法面も旧旧道に沿うように造られていて、どうやらこの部分の道は以前は直線ではなく右に左にカーブを繰り返す道だったらしい。その視点で見てみると、右の谷側にあるガードワイヤーの外にも若干の空き地が見える。もしかしてここも旧旧道の路盤だったのだろうか。そして、先の左カーブを曲がると・・・

おお~!

右側の杉に注目だ。太く背が高い杉が生えている。下枝がちゃんと枝打ちされていて、手が入れられているのがわかる。山側には・・「かご工」が施工されている。湧水が多いのか、以前に崩れた箇所の修復なのか、結構大規模のように思えるが・・・。かご工の終端から先はまた普通の法面に戻っているので、崩れたのはやはりかご工の部分だけだろう。


「かご工」は法面保護工の構造物の一つで、その機能や形状、設置方法などで3種類に分類される。その種類は「じゃかご工」「ふとんかご工」「かごマット工」とあるが、ここに施工されているかご工は「ふとんかご工」と呼ばれるもので、湧き水や表面を流れる大量の水で法面の表面が削られたりするのを防ぐのと、土圧に抵抗する目的がある。このため湧き水が起きた箇所や地すべり崩壊の復旧に用いられることが多く、法面工というよりはむしろ土留め用として施工される場合が多い。


緑に包まれた峠道は麓の集落へ
風景を楽しみながらのんびりと降りていく

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