新潟県主要地方道52号
山北関川線
日本国トンネル旧道 第10部

2021年10月23日 探索 2022年1月24日 公開

探索もいよいよ終盤、美しい風景を見せてくれるこの道も、もうすぐ終わりを迎える。少々口惜しい気もするが、物事には始まりがあれば終わりがあるもの。今回の探索は一本の橋から始まって旧道を見つけ「突撃ー!!」てな感じで、ここまで進んで来た。

この景色は私にとって格別なものとなった。ガードロープと落石注意の標識、右の山側の斜面に生える木の感じ、路面に降り積もった落ち葉の積もり具合、これらがすべて合わさって出来るこの風景。こんな風景は現道では絶対に見ることが出来ないと言ってもいいもので、旧道探索者冥利に尽きる逸品だ。これがあるから探索をやめられない。

・・・欲を言えば、ここでビールの一本でも空けられたら最高なんだけどなぁ(笑)。

左側には小俣川、それもすぐ直下なので、川の流れの音が直に聞こえて気持ちいい。右側には岩肌が露出した特徴的な風景になった。木々の間から差し込む日差しが柔らかく、11月に近くなってやや冷たくなった空気をほのかに温めている。路面には草はほとんどなく、順調に歩いていけるのは助かる。おかげで周りの風景を存分に楽しむことが出来た。

こんな廃道をやや古ぼけたD300と言うカメラを首から下げて、ポツポツと歩いているのが私だ。実はD300よりももっと解像度が高く、綺麗な画像が撮影できるD3300も持ってきてはいるが、使いやすいD300の方をついつい選んでしまう。相性と言うものだろうか。

ふと道端にこのような木箱を見つける。これはミツバチの箱か、それとももっと別の「何か」の箱か。でも、いずれにしてもこの道を必要としている人がいて、役に立ってるんだなぁと言うことがわかったことだけでも嬉しかった。こんな典型的な、しかも美しい風景を持つ廃道、独り占めしておくにはもったいないもんね。下は小俣川。ここまで何度も登場してきたが、こんなにハッキリと写り込んでくれたのは初めてかもしれない。

いい感じの廃道の雰囲気を湛えた道が続く。先ほどよりは周りの緑が濃くなって、、外から見ると廃道の存在をやや隠し気味になるが、それでも風景はこの通り。路面にさほど草はなく歩きやすい廃道が続く。キョロキョロと周りにレンズを向けながら無意味に連写なんぞしたりして(笑)、この廃道と戯れながらのんびりと進んでいく。

小俣川沿いに一直線に走る廃道。舗装されたアスファルトの路面がところどころに見える草蒸した道。その道の右側にはブロックで固められた強固な擁壁。もしかすると、ここは開通後に一度崩れて補修工事を受けた箇所かもしれない。この道はきっと、春それも新緑の季節に来ても美しいだろう。そう思った。だが、さっきの崖崩れの箇所はもうごめんだ。今度は一の瀬橋側から辿ることにする(笑)。

少し先へ進むと、右側の法面はブロックで強固に固められた擁壁から、本来の地面がむき出しの斜面に変わる。下草が少なかった路面はここに来て笹が茂っているが、何故か一部だけ笹が生えておらず、一本の道のようになっている。やはりこの道は今でも通行する人が少なからずいるようだ。それなら、この道は忘れ去られることはないだろう。地図上から抹消された道とはいえ、今でも現役であることが嬉しい。

路面に生える下草と笹の高さは段々と高くなってきて、今では腰の高さを越え、胸の高さも越えるようになってきた。それでも私が平気で進めるのは、意図的に付けられたかのように残る、一本の踏み分け道の存在があるからだ。画像で言うと中央から奥側に進む、切り取ったように笹もなく下草も短い区間が、その踏み分け道。これを付けたのは、もしかして同業者の方々だろうか(笑)。

私が通るのを阻んでいた下草もここに来て低くなり、歩きやすくなってきた。山を回り込んだのもあるのか、空もさっきに比べて非常に明るくなって気持ちいい。ここまで歩いてきた距離を考えると、もうすぐ一の瀬橋に辿り着くはずで、この探索も終わりに近づいているはずだ。となると、そろそろ見えてきてもおかしくないはずだが…

これが一の瀬橋!

ようやく着いた一の瀬橋。ここまでの道程はそこそこ長かったが、その代わりに思い出に残る美しい景色を私に見せてくれた。それもここで終わりを告げる。少々寂しいが、今はこの目の前の橋を堪能することにしよう。

ここから見ても感じるのは「この橋は美しい」、それだけだ。
私はD300のファインダーを覗いた。

次回はいよいよラスボス!
一の瀬橋へ!

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