山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 大針洞門

第1部
「使命」

2023年9月30日 探索 2023年12月25日 公開

使命

さて、準備を整えた私は分岐点にいる。正確に言えば、分岐点より少し下がったところだ。分岐点の陰に隠れて、黒い車がいるのがわかるだろうか。あれが私の車で、今回の探索のベースになっている場所だ。現道は左カーブで赤川を渡る橋に向かっているが、旧道はこれ以上ないというほど、わかりやすく直進している。ここまで潔いと気持ちいいではないか。前回のレポートで「左に行くか右に行くか。私はまっすぐ行く」と書いたが、それは今でも全く変わらない。というか、まっすぐ行く気満々である(大笑)。

さぁ、まっすぐに突入だ(笑)。

見てくれ、この素敵な風景を。ここから見ると何もない普通の旧道に見えるが、きっと前方の右カーブを曲がると素敵な廃道の風景が広がっていると見た。それにしても、道の上に覆いかぶさった木々の様子といい、2車線の道幅が1車線になっているところを見ても、非常に良い雰囲気と言わざるを得ない。このような素敵な道に、私はポコポコと周囲に長靴の音を響かせながら、複数の熊鈴をシャリンシャリンと、まるで何か間違えたサンタクロースみたいに賑やかに鳴らしつつ入っていく。

右カーブを曲がって先に進んでいくと(断っておくが、今回の探索は全て徒歩で行った)、こんな風景が広がる。私が進む先には、何やら進路が塞がったような様子の旧道の姿が見える。ここから見る限りではヤブで塞がっているように見えるが…
分岐点からここまで、途中の経路にこの道が廃道になるような原因は見られなかった。ということは、廃道になった原因は洞門を過ぎた後か、それとも過ぎる前か。どちらにしても楽しめそうな道であることには間違いない。探索当時の空は画像では曇り空に見えるが、現地は確かに曇りだったものの薄曇りで、雨が降り出すような天候ではなかった。初めて行くところ、しかも川沿いだけに、もし雨が降っていたら探索は中止しただろうと思う。

当ったり!

更に先へ進んでいくと、思った通り実に素敵な風景が私を待っていた。いい感じのヤブだ。断っておくが、私はヤブは好きじゃない。できれば平穏に探索を終了したいというのが本心だが、そうもいかないところがあるのも事実。中には「人生崖っぷち」ではなく、実際に「ホントに崖っぷち」なんてことも結構あったりするのだ。それからすりゃヤブなんてのはかわいいもんだが…。今日は背中のリュックにナタも入っているので、ヤブを通るのには更に怖いものなしと言えるだろう。スーツは着ていないのでナタリーマンとはならないが…(謎笑)。

おもむろに谷側を見ると、そこには倒れてきた木を必死に受け止め続けているガードレールがいた。その姿は苔生して、塗装も一部剥がれて下地の鉄板がむき出しになり、倒れた木を受け止めている部分は錆も浮いていたりする。本来は路盤から逸脱する車や飛行者を受け止めるはずのものが、大自然を受け止めているのだ。しかも、道路を守るという、ただそれだけのために。それだけと言えばそれだけなんだが、それはこの世に生を受けた使命を最後まで朴訥に守り続ける姿。我々も生きる手本にしたい姿ではないだろうか。

こいつがガードレールを苦しめている(と言っていいのか)の張本人、倒木だ。廃道にはさして珍しくもない風景だし代物だが、これだけは言える。この道が廃道になったのは、複数の原因があるのだろうが、この倒木が一つの要因になったことは間違いないだろう。その証拠に、この地点までは辛うじて路面にダブルトラックがあるものの、ここから先はぷっつりと途切れて、まさしくヤブになっている。私も、この倒木を跨げるほどの足の長さは持ち合わせていないので、やむなく下をくぐることにした。

次回、ますますヤブが深まる廃道!
いよいよ、アレの登場か?!

第2部
「栄華と衰退の面影」へ