山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 大針洞門

2023年9月30日 探索 2023年12月21日 公開

出会いは突然

おおよそ、旧道との出会いに関しては、こんなもんだ。
これまでの経験上、旧道や廃道との出会いは、いきなりとか、突然とかの方が圧倒的に多い。それは、探索する対象を「なるべく手垢が付いてないところ」に絞っているからなのだが、どうしてもこうなってしまう。
この旧道との出会いも、まさしくそんな感じだった。とは言え、劇的に出会ったわけではなく、探索場所をGoogleマップで探していただけだ。だが、ここは今までの出会いとは少し違ったのは間違いない。

この日、私は次の探索場所を求めてGoogleマップ上を彷徨っていた。
これまで、新潟県は下越地方を中心に旧道や廃道を探索していたのだが、地域を絞ればやがて行き詰まるのは自明の理で、探索する地方を中越や上越地方に広げて探していたのだが、探すのにも少し疲れてきて、気休めに新潟県一般県道349号鶴岡村上線を眺めていた時のこと。この県道は東日本では最長の一般県道と名高い県道で、その総延長は軽く50キロを超える長大県道だ。元々は大規模林道だった区間を県道に格上げしたもので、県境付近は夜間通行禁止・冬期閉鎖となり、現在は災害復旧工事のため長期間にわたって通行止めが続いており、全線通しての通行は困難を極める。また、この県道は山形・新潟両県を結ぶ唯一の一般県道でもある(主要地方道の新潟県・山形県主要地方道52号山北関川線も含めると2路線のみ)。


大規模林道とは、旧森林公団が全国各地の山奥に建設を行った高規格林道のことで、大抵は二車線のトンネルや大規模橋梁を備えた、およそ林道とは思えない道を各地の山奥に建設を進めてきた。 建設主体の森林公団は、緑資源公団、緑資源機構と名称を変え、大規模林道は緑資源幹線林道に名称を変更しつつ造り続けてきたが、緑資源機構自体が談合事件をきっかけとして、当時の松岡利勝農林水産大臣の他2名の自殺者を生んだ末に2008年3月31日を以て解体、林道関連の業務は森林農地整備センターに引き継がれ、現在に至る。


山形県側の349号を眺めていた時に偶然発見したのが、この大針洞門だ。この名称は仮称で本来の名称はわからないが、この洞門を含んだ区間の道路改良に伴うバイパス道路の記録があるので、これに伴って旧道となり、やがて廃道化したに違いないと見た。

道路改良の陰に旧道あり。これはセオリーともいえるが、ここはGoogleマップのストリートビューで眺める限り格別の旧道であり、私の探索の意欲を大いに搔き立てたことは間違いない。かくして私は山形県鶴岡市まで遠征するのだが、この遠征の途中に寄り道した。この寄り道の結果が鍋倉トンネル旧道としてレポートになっている。
では、ここで現地の地図を見てみよう。おなじみの地理院地図である。

地図中、中央の黄色く着色された線が県道349号で、上が鶴岡市街地方向、下が新潟県方向だ。新潟県村上市から山形県鶴岡市を経由して、かの有名な月山までの道程を考えると、この県道349号を通れば朝日連峰をショートカット出来るのだが、現在は温海温泉経由で大回りしないといけない。改良されると非常に便利になるだろうと思うのだが…。

それはともかく、地図を見てみると県道が途中で不自然に赤川を渡って大針の集落に入り、すぐにまた元の道筋に戻っている。私がこれを見たときに「さては?」と思ったのは言うまでもないだろう。そこでストリートビューを見てみると…

これはいかん!

いやぁ、いかんですよ、これは(笑)
こんなのを見て、見過ごせるわけないじゃない。こりゃ早速現地に行かねば!と言うことで、今回の探索が決定したのだった。こうなると物事に弾みがつくというもので、トントン拍子に日時が決まり、天候も安定していて良い探索日和。その期待に思わず胸が躍る。

見てくれ、この分岐点を。
右に行くか、左に行くか。私なら迷わず右に行く。行くというよりも突っ込んでいく(笑)。
分岐点に残された空き地に車を止め、そこをベースとして準備を始める。さっき使ったばかりのヘルメット、長靴、皮手袋、クマ鈴、カメラに加え、リュックにはナタ、ロープ、登山用カラビナ、折りたたみのナイフ、ヘッドライトを入れて背中に装着!。
ビシッと気合を入れて、探索開始のピストルを(住宅地が近いので心の中で)鳴らして…

さぁ行こう!
この先にはまだ見ぬ風景が待っているはずだ
いや、風景だけではなく
そこに遺された道路構造物も
きっと私を待ってくれているはず!

探索開始!

第1部
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