一般国道49号
花立の短い旧道
第2部

2022年5月4日 探索 2023年5月3日 公開

面影を残す道

この旧道の中で一番色濃く当時の国道49号の面影を残しているところかもしれない。斜めに灌木が生えている山側の法面、使われているかそうでないかわからない(失礼!)側溝、妙に平たく、それでいて下草が刈りこまれているのか冬枯れの名残なのか、今一つわからない路面。この道幅なら、三輪のミゼットがすれ違うのがやっとだろう。
空を見上げれば木々の隙間から青空が。すぐ近くに現道があるはずなのに、車の音はほとんど聞こえない静寂。ここは廃道だが、いまだに道として活躍していた現役当時の面影を色濃く残す場所。ここに佇んでいると、なんだか落ち着く。

少し進んで、拓けた場所に出た。左側から下を覗き込むと、一段低いところを通る現道を通る車の姿がよく見える。灌木が数本立つ路面の先には電柱。ここから先は現道を造る際に一部が崩されたらしく、尻つぼみに道幅が狭くなっている。それに、今はまだどうなっているかわからないが、正面に見えている森の中をこの道がどうやって進んでいるのか、それも気になるところだ。何とな~く想像は付くが・・・今は考えないことにしよう。

先へ進んでいくと、私の予想を少し裏切ることが起きた。前方に見える電柱、私はこれまでと同じく旧道の路盤の右側に立っていると思っていたのだが実は違っていて、立っているのは路盤の左側に変わっていた。つまり電柱はここから左側の路肩に立っていたのだった。なもんで旧道の路盤は未だ健在。少し道幅は狭くなってはいるものの、順調に森の中へ進んでいる。

おおっ!道が荒れてきたぞ?

道が荒れてきたと言うのに、なぜか喜んでいるヤツがここにいる(笑)。
しかし、ここを見て頂いている方々ならわかって頂けるだろうと思う。この道を制覇すると言う目的を達成しようと進んでいる間にこうして道が荒れてきたら、やっぱり萌える・・・違う、燃えると言うのが人情と言うものじゃないか。

路面に何やら青いものが見えるが、これは花などではなく、光の加減で青く見えているだけで、その正体は笹だ。路面の草も若干深くなってくるが、御覧の通り歩きにくいと言うほどではもちろんないので、足元に注意しながら進んでいく。現道の近くにこんな道が隠れているとは思わなかった。実に楽しい。

やや荒れ気味の、路盤と思しき道を歩いていくと、またまた少し拓けた場所。左側には下枝が刈り払われた杉が並び、山側には落石があったらしく大きな石が転がっているし、その上の木々には倒木が引っかかっていたりするが、その木々が初夏とも思えるような陽射しの暑さを和らげてくれている。ここは最低限、人の手で管理されている地図にも載っていない道。

だがその正体は、旧くは越後街道、二級国道115号(作者注…この時は現道の下の川沿いを通っていたかもしれない)、一級国道49号、一般国道49号と、言わば国道のエリートとして拓かれた道。第一線は退いて地図にも載らなくなってしまったものの、今でも現役当時の情景を思い起こさせてくれる姿を保ちながら、ここに残っている。こんな道の風景は普通に過ごしていればまず見られないもので、こうして道の趣味を見つけてよかったと思う。

先へ進むと足元の草はまた短くなり、これまでの歩きやすい旧道に戻る。こういった旧道にありがちな「横殴りの灌木」もさほどではなく、歩きやすい。ここより一段も二段も下を通っている現道との境に杉林があるせいか、ここでは現道の賑やかさは感じられずに静かな空間となっていた。聞こえるのは小鳥の囀りと、サワサワと吹き抜ける風が起こす音だけで、実に気持ちいい。

探索を始めてさほど時間は経っていないが、右側に見える横殴りの灌木が作りだす日陰に身を寄せて、少し休憩することにしよう。ヘルメットを脱いで背中のリュックを下ろし、首から下げたD300を外して持参したペットボトルの麦茶を飲むと、自然と「ふぅ」とため息が漏れる。まるでいらないものを吐き出したかのような清々しい気分で、これから進もうとする前方を見てみると、道はこの先、杉林の終端付近で左にカーブしているように見える。普通は真っ直ぐ進んだ方が自然に思えるが…

次回、いよいよヤブの中へ?!

第3部へ