一般国道290号
人面トンネル旧道 人面峠
前編 第2部

2020年7月24日 探索 2021年3月6日 公開

長靴はもちろんのこと、遠慮気兼ねなくヤブ漕ぎが出来るように厚手の革製の手袋も装着した私は、ヤブに突っ込んでいった。だが、目の前に立ちはだかるように見えていたそのヤブは入口だけで、またアスファルトの路面が顔を見せる。だが、その路盤は決して広いものではなく、やはり車が一台通ってプラスアルファの道幅しかなかったのである。
路盤の右側は谷になっていて、その谷に草が生えていて陸地のように見えていただけだった。その証拠に、通行者がほとんどいなくなった今も「通行者を守る」という大事な使命を愚直に果たすようにヤブの中に埋もれた路肩に沿って白い身体を伸ばす、一本のガードレールが見えた。彼が草の中に埋もれて見えなくなってしまうのは、そう遠いことではないような気がする。

少し進むと、山側の法面にはセメントタイルで組みあげられた擁壁が見えるが、その脇に一本だけ取り残されたパイロンを見つけた。どう見てもそう古くない(むしろ非常に新しいと言うべきか)パイロンで、そこには「下田建設業JV」の文字が見える。どういった理由でこの場所にこのパイロンが置かれたかはわからないが、どんな理由であるにせよこの旧道を守ろうとしている人たちの姿が垣間見えるようで、なんだか嬉しかった。

左側は山、右側は谷、旧道ならではの地形と風景に包まれながら峠へ向かっている旧道の姿。相変わらず白いガードレールの姿が目を引く。こういった旧道の姿は以前に何回も見てきている気がするが、それがどこだったか思いだせないのはなぜだろう。
それはそうと、さっきまで降っていた細かな雨はいつの間にか止んでいて、空模様は相変わらず泣き出しそうだが今は耐えてくれている。この機会に少しでも先へ進んでしまおう。



少し進んで、改めて観察してみる。この辺りでは右の路肩側にガードレールのある区間と左の山側に擁壁がある区間が一致していることに気が付いた。おそらくだが、ここは以前に一度滑ってしまい、路盤が失われてしまったのではないか。それを復旧させたが、そこには「現在の道路の規格」というものが適用されるので、昔の様式(つまりそれまでと同じように)で復旧させることが出来ず、ここだけガードレールがあるという形になった。…んじゃないだろうか。

チェンジ後の画像は、ここより少し手前からこれまで通ってきた道筋を撮影しようとしてシャッターを切ったものだ。だが、御覧の通り途中までの道筋は見えるがそれから以降は下草に埋もれてしまっている。まさしく、これから私が進む道のりの様子を暗示してくれているかのようだった。

法面とガードレールに守られた区間を過ぎて更に先へ進むと、一層「廃道」の雰囲気が増してくる。ここまでくると通行する者はほとんどいないようで(その割には真ん中に踏み後のようにアスファルトの路盤が見えているのだが)、道の両脇は非常に濃い緑に包まれてくる。

ところで、さっきから気になっていたことなのだが、普通はこういった緑深い道を進むときには小鳥の声や風が通る音とか、何かしらの音が聞こえてくるものだ。それも旧道を通る際の一つの楽しみで、「あ、この鳴き声はシジュウカラ(別ウィンドウで開きます)だな」とか「こりゃゴジュウカラ(別ウィンドウで開きます)だな」とか、そこに生息する小鳥たちの声を聞きながら通ったりするのだが、この道に限って言うと不思議なくらいに静寂に包まれている。それはこの道に何かあると言うことではなく、雨が降り出す直前の空模様で少し肌寒い気候が影響してるのかと思うが、それでも何となく寂しいもんだ。やっぱり山の中を通る旧道は、そこに生息する小鳥や小動物の声と雰囲気を感じながら通りたい(但し、プーさんはお断りだが)ものだ。

で、あたりを見回しながら進んでいくと…

うおっ?!
ますます頼りなくなってきた!
以下、次回!

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