一般国道290号
人面トンネル旧道 人面峠
前編 第1部
2020年7月24日 探索 2021年3月2日 公開
いやぁ、いいなぁここ
右側に走る現道。1983年(昭和58年)9月6日に開通した人面トンネルの開通によって旧道化した人面峠に向かう道に、今にも泣きだしそうな空の下、私は今立っている。この微妙な細さが実にいい。毎度のことだが、こうして初めての旧道に入っていくこの瞬間は緊張するもんだ。それは、この先の道が通れるかどうかわからないという不安があり、それが真っ先に思い浮かぶからなのだが、この辺がまだまだ素人だなと思ってしまう。経験不足というところか。
ところで、旧道には一応のダブルトラックが見える。なので、今も多少の交通はあるようだが、それがどこまであるのかは非常に不安だ。見ての通り、ダブルトラックがあっても近頃はほとんど通ってないのかもしれないし。なので今回は自転車は持っていかずに全工程を歩くことにした。結構な距離になるが、正月で出てきた腹を引っ込めるにはちょうどいいだろう。もちろん長靴を履いているのは言うまでもない。
左には擁壁、右にはガードレールに路肩。1車線の狭い道が山中に突っ込んでいく。ふと思ったが、この峠道ってすれ違いする時にはどうしてたんだろうか。ここだと、どう考えてもすれ違い出来ない。と言うことはどっかにすれ違い場所があったはずだが、それも見当たらない。もしかすると、旧道の路盤は現道を切り開く際に一部が削られてしまったのかもしれない。現道には交通量もあまりなく、道路の周りには静かな「森林」という言葉がぴったりの森が広がっていて、思わず深呼吸してみる。
低木と草に埋もれたガードレールを見つける。前方に見える山々の稜線の一番低いところに向かって進んでいく峠道は、出来るだけ勾配を少なくしようと考えて切り拓かれたのだろう。この人面峠がある新潟県三条市大平と長岡市人面の間は非常に山深く、新潟県内でも豪雪地帯として知られるが、それ故にこの人面峠は地域の交通のネックだったことが、ここを歩いているとひしひしと感じる。舗装されている路面だが結構な勾配があり、ここを積雪時に車で上るとなると…かなり大変だっただろうな。
1車線の幅しかない旧道を進んでいく。細い道が峠目指して進んでいるが、元々の道幅は右の森の木が生えている場所が右側の路肩だったかもしれない。それにと、ふと思った。それにしては正面に生えている木が気になるが、これは旧道化後に育ってきたものだろう。周りはと言うと、スタート地点よりも更に深い森に囲まれ、あたりを静寂が包んでいる。探索中にラジオや音が出るものは身に着けて音を出しながら動いてはいるが、正直な話どこからプーさんが出てくるかわからないので、常に周囲に神経を使いながら探索を続けている次第だ。…ま、静寂が故に細かい物音も耳につきやすいんだけどね。
少し進んで撮影したのがこの画像だ。先へ進むほどに周りの森は深くなり、そこを通る人面峠の旧道が非常に頼りなく見える。こうなると沖見峠クラスの狭さだが…それ以上かな。重いカメラ機材を背中に、長靴でトコトコ歩いているといつも以上に周りの景色がよく見える。先ほどまで泣き出しそうだった灰色の空はいよいよ細かい雨を降らせるようになってきて、その雨粒が木々の葉を光らせ、綺麗な風景を見せてくれている。
おおっ!道がない!
道の先に草が立ちはだかって、先へ進む道が見えないように見える。いよいよ来たかな?。だが、こんなのでひるんではいけない。何しろ私は長靴を着用している。これさえあれば勇気百倍、どこへでも入っていける秘密(と言うほどでもない)アイテムだ(笑)。
手袋を装着して…いざ、突撃!