一般国道113号旧道
綱取橋旧橋
 第2部

2019年5月3日 探索 2019年10月7日 公開

橋の上へ

これまで、様々なサイトでその姿を見るたびに願っていた「この橋を渡ってみたい」と言う想いが実現しようとしている。欄干は失われているものの、一部の組石が失われていたりなどは全くなく、極めてしっかりとしている。少し手入れすれば大型自動車とはいかないまでも、普通自動車くらいなら簡単に通してしまいそうだ。そうでなくても、この先の綱取片洞門までを遊歩道として再整備すれば、新緑や紅葉の季節は非常に美しいだろうし、極めて有力な観光資源になると思うのだが。

橋の上から下を覗き込んでみた。元来、私は高所恐怖症とまではいかないものの、高い場所は苦手の部類である。しかも、こんな場所から真下を覗き込むなんてとんでもない話で、自分で近づくことが出来る最大限の距離まで近づいて、しゃがんで撮影してみた。数日前に雨が降ったせいで桜川渓谷の水が濁ってはいるものの、夕刻の太陽の光が渓谷に差し込み、コントラストがハッキリして新緑に映え、実に風光明媚な場所だ。
画像真ん中あたりで水が流れ落ちているように見えるのは、明沢川に流れ込んでいる沢だろうか。重ねて思うが、よくもまあこんな場所にこんな立派な橋を架けたものだ。改めてその技術に敬服する。

橋の上で下を覗き込むのを止めて起き上がり、振り返って今通ってきた旧道を改めて眺めてみる。この画像で水平に走っている旧道の路盤が見えるだろうか。右側には桜川渓谷の激しい流れが見えており、地面は旧道の路盤から垂直に切り立った崖となって流れに辿り着いている。このような道をトラックが走っていたのだ。この表現が正しいかどうかは別にして、一歩踏み外せば崖の下に真っ逆さま。前回訪れた子子見片洞門にある「片洞門観世音」は、この道から転落したトラックが引っかかっていて…と言う事故があって建造されたとのことだから、撮影した画像がなぜか残っていないことが非常に悔やまれる。

桜川渓谷を更に撮影してみた。この撮影はズームレンズを使ったので高所恐怖症になることはなかったが、それでもこの高さは圧倒されるものがある。こうして撮影していると、この場所やこの渓谷が非常に美しい場所とつくづく実感する。観光資源として実にもったいないと思うのは私だけか。そういえば、ここに来る前に通りすがりの細かい旧道を探索していたのだが、小坂町と言う集落で街中を貫いていた113号の旧道を探索中に見つけた酒屋さんの看板に「羽前桜川」の文字があった。きっとこの付近のお酒なのだろう。この風景を肴にその「羽前桜川」で一杯呑みたいところだが、ここで呑んでしまうと代わりのドライバーがいない限り自宅に帰れなくなってしまうので、やめておいた。

目の前にすると感動する橋

それでは、橋に戻ろう。綱取橋を渡って少し右にそれて撮影してみた。橋の胸壁がしっかりと写せる位置はないかと、あれこれ動き回って確認した末の位置である。前にも触れたが今回はロープを持ってきていないので、近くの木にロープを結んで身体を吊るす訳にもいかず、探し回った末の苦肉の策の位置だった。奥が子子見片洞門側になるが、旧道は子子見片洞門を抜けた後、ほぼ直線で進んできて米坂線を踏切で渡り、そのまま綱取橋の直前まで来ると左に急カーブして綱取橋に入っていた。ここからだと左カーブの様子がよくわかる。結構急なカーブだが、橋にアプローチするカーブの部分にもしっかりと石垣が組まれていることに注目。

今度は左に逸れて撮影してみる。前の画像と同じく奥側が子子見片洞門側になるが、こちら側から見ても見事な胸壁を見ることが出来る。私が立っている場所は113号の旧道で、この先へ向かうと綱取片洞門へ入っていくが、先に行ってもどのみち米坂線のスノーシェッドに突き当たって先へ進むことは出来ず、そこから引き返すことになるので今回はここから先へ進まなかった。正直に言うとこの頃はすでに夕刻が迫っており、クマ出没の心配があったのも理由だ。

綱取橋を子子見片洞門側へ戻り、旧道から少し離れた場所で撮影してみた。橋全体を入れようとすると奥の森の様子が入らないが、主役は橋なので仕方ないところか。竣功から135年もの時間が経過すると、人工物でも橋上の草の加減や組石のところどころに見られる苔などで、まるで自然の一部のような錯覚を覚えるほど溶け込んでいる。旧道は橋を渡ると直角に近い形で右に曲がり、綱取片洞門へ向かっていた。つまり旧道はこの綱取橋でクランクの形で曲がっていたことがわかる。今の時代なら真っ先に改修工事の対象になりそうなものだが、この旧道が開通した明治16年当時は自動車はまだ日本に入ってきておらず、この道形でも大丈夫だった。

ひとしきり綱取橋を撮影し、辺りをウロつき(笑)、桜川渓谷の激しさに驚き、ここに橋を架けた技術に敬服しながらこの場所を後にしようとしたが、どうも名残惜しくて振り返って撮影したのが、この画像だ。桜川渓谷の急流の抵抗にならないように、自然に架橋しているところが素晴らしい。新緑の季節にこれだけ美しいのだから、紅葉の季節にも期待できるだろう。また秋に訪れてみたい、そう思わせる非常に美しい旧道と橋だった。

さぁ今度は、この旧道と綱取橋旧橋に関して少し調べてみよう。
資料を漁るべく、私は新潟県立図書館へ向かった!。

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