一般国道113号 沼沢旧道
第2部

2022年4月17日 探索 2023年1月19日 公開

傷跡が残る道

前回、右の谷側に残る雪の壁を見つけたが、それを確認できるところまでやってきた。道の幅だけ綺麗に削られた雪は、遠くから見たのと同じように道幅を規制するようにそびえ立っていて実に面白い。これはたぶん左の山側から雪崩れてきて、ここだけ積雪深が深く厚くなったところをロータリー除雪車で吹っ飛ばしたのだろう。だけど…

左の山側をよく見ると雪の表面が黒くなっている。これは雪と一緒に土砂が落ちてきたからで、そのすぐ下の路面を見ると木が何本か脇に寄せてあるのが見える。これらのことを合わせて考えると、ここは一度雪崩が起きて道を塞いでいたようだ。この道が国道だった時代は当然交通量も多かったはずで、そこへいきなり雪崩が起きたら…ということを考えると、局所改良の対象になるのもしかるべくなのかなと思う。

少し先へ進むと、こんな雄大なカーブが現れる。山側にはまだまだ雪がたっぷり残っているようで、おまけにその雪の表面に土をまぶすように付いていたりするもんだから、どこが土でどこが雪かわかりにくい。この雪の表面についている土は雪と一緒にロータリーで飛ばされたものだろう。今日は結構暖かい日だが、この雪が崩れてこないように注意しなきゃいけないなと思いながら自転車で慎重に進む。
谷側をよく見てみると、一部にコンクリートブロックで補修の跡がある。これはおそらく路盤崩壊して修復した跡だろう。ここだけ見ても、これだけ災害の跡が見える。これは、この113号と言う国道がどれだけ災害と直結していたのかを如実に表していると思う。

三島通庸…もう少し考えて道を通そうよ。

おおっ!

立ち止まって眺めてみると感激した。この雄大な大カーブは現道ではまず見られない線形で、ここが旧道だということを感じさせてくれる。真ん中には杉並木、これは風除けか雪除けを目的に植えられたものだろうか。
ところどころに雪が残る、春の訪れを感じさせてくれる風景と相まって、心を落ち着かせてくれる風景だ。それに今日は4月としては暖かい日だが、積もった雪で空気が冷やされて気持ちいい。実は今の私は久しぶりに自転車で走って少々息が上がっているが、この雪で冷やされた空気はその旧道や自転車で熱くなった体を十分に冷やしてくれる。

山の斜面をなぞるように大きく回り込む雄大ささえ感じられた右カーブを過ぎて、杉並木の場所に来た。この道は全体的に日当たりが良く、その路面ももれなく日光に照らされているのだが、この杉並木のおかげでここだけ日陰が出来るので通行している身からすればここで一息入れることができるので非常にありがたい。ということで、ここで小休止。ペットボトルの無糖の紅茶を飲みながら一息つくと、生き返るような気分でとても清々しい。

口に含んだ紅茶の鼻に抜ける香りを楽しみつつ(実際にはそんなに優雅な感じではないが)旧道の風景を眺めていると、その道幅の狭いことに気づく。普通車1台通れば離合が出来ないほどで、現道開通前はここを多くの車が通行していたのだ。すれ違ったり離合するのに、当時はどうしていたんだろうか。これは旧道を辿るたびに不思議に思うことの一つだ。

と、その傍らに雪に埋もれた標柱を見つける。表面の風化具合や苔むした感じから、かなり古いものと思われた。見えにくいが「県」の文字は旧字体の「縣」のようだ。今でこそ国道113号の新潟県岩船郡関川村から山形県西置賜郡小国町、飯豊町の区間は国土交通省管理(いわゆる直轄区間。下記参照)になっているが、1967年(昭和42年)8月28日に発生した羽越水害以前は県の管理だったし、国道昇格前は県道(新潟山形線)だったため、この山形縣の標柱が立っている。


直轄区間について

国道を建設するのは原則として国(国土交通省)だが、一般国道の管理では、政令(一般国道の指定区間を指定する政令)で指定されている「指定区間」と、それ以外の「指定区間外」と分けられている。この「指定区間」は、おおむね路線番号が1桁・2桁の国道が指定されているが、2桁国道であっても指定区間外であったり、3桁国道でも指定されている区間もある。また、国道の起点から終点までの全区間が指定区間というわけでもなく、例えば国道1号ではほとんどの区間が指定区間に指定されているが、横浜市内および箱根付近では指定区間外となっている箇所もある。このように、指定区間は一般国道の中でもとりわけ重要な路線や区間が指定されており、この区間では災害時の復旧や道路の改修などの道路の維持管理において、国(国土交通省)が直接管理することになっている。この政令で指定された「指定区間」を「直轄国道」と言う。
これに対して「指定区間外」は、かつての二級国道の多くのほか、1993年(平成5年)までに国道に昇格した旧主要地方道・一般都府県道の三桁国道のほとんどが含まれ、管理は国から補助金を受けて各都府県と政令指定都市が行う。この「指定区間外」を「補助国道」と言う。
但し、北海道は道内の全ての国道を国土交通省北海道開発局が管理しているため、道内の国道の全区間が指定区間になっている。このため北海道の国道は全路線が直轄国道ということになる。

(一部引用・参考資料・Wikipedia「一般国道」から)


来た道を振り返ってみる。今は雪解け直後の時期なので山肌の木々に葉はなく荒れたような印象を受けるが、これがあとひと月もすると緑に覆われ、今とはまた違った風景を見せてくれるだろう。国鉄の貨車ワム60000が置かれていた地点から道はこのように下り坂になっていて、おまけにこの道幅の狭さだから積雪時にはここを通るのに上りも下りも神経を使う場所だったかもしれない。それにしては道路保護施設のガードレールもデリニエータもないのが、いかにも旧道らしい。

そうこうするうちに、旧道は現道や米坂線と交差する区間へ。
ここに何か残ってないかと期待しながら、自転車でのんびり進む。

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