山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 笹根隧道

第7部(完結編)
「光を失ったロードサイン」

2023年10月14日 探索 2024年4月27日 公開

光を失ったロードサイン

相変わらず豊富に降り注ぐ紫外線の中(笑)、現道との合流点を目指して廃道(いや、今でも使われて管理されているんだから廃道じゃないな)旧道を進んでいく…と、一部分だけ風格が違うガードレールがある。もっとも、さっきからちょいちょい視界の片隅に入っていたので、気づかれた方も多いんじゃないかと思うが…。早速、近くまで行って確認してみようとしたのが、この画像だ。

ところで、こういう場合においては新旧同士のガードレールが「むりやり」繋げられている場合がある。実はガードレールの形状と言うのはいろいろ進化してきていて、現在の最もポピュラーなガードレールは上の画像の白いガードレールだが、その一世代前のものは凸凹の形状が少し違うのだ。さて、ここもそうだろうか。

やっぱり(笑)

ね、やっぱりこうだったでしょ(笑)。新旧のガードレールはこれだけ形状が違う。それを接続するボルトとナットで結構大胆に接続してあるのだ。しかも、ここの場合はこの1枚だけ違うというのが心憎い。交換するときに、今錆びているガードレールだけ当時は傷んでなかったので、経費節約でそのまま繋いだという線が濃厚だろうか(笑)。
ま、確かにガードレール一本でも結構な金額と言うのは聞いたことがあるので、それも無理はないところか。

それにしても、結構傷んでるなぁ…。この付近のガードレールの首領(ドン)的な存在なんだろうか。思わず敬礼したのは言うまでもない。こんなことが出来るのも、この趣味ならではだ。賢明な皆様は、くれぐれも現道でこんなことをしないように(笑)。

道はここから左カーブ。地図上ではこのカーブを過ぎると直線になって、現道への合流点に一直線になっている。この道の探索ももうすぐ終わりかと思うと少々寂しいものがあるが、最後まで辿るのも務めと決めてトコトコ歩いていく。…などと書くと聞こえはいいが、実は「暑いなぁ…」と思いながら歩いている。目の前の日陰で少し涼みながら周囲を見回すが、周囲はすくすくと成長した草と木々の緑に覆われている。それでも、遠くに見える山々と、高さを感じる秋の青い空に白い雲の取り合わせが非常に綺麗だ。

ところで、左側から時折車の走行音が聞こえるようになってきた。現道が近い証拠で、左の上側を走っているはずだ。だが今日は交通量が少ないせいか、賑やかと言うほどでもないのが救われる。さて、少し身体も冷めたことだし先に進むことにしよう。

先ほどの位置から左カーブを過ぎると、道幅はなぜかだんだんと細くなっていく。それでも路面のアスファルトにはダブルトラックが見えていたりするから、なかなか面白い。それになんだかアスファルトが妙に新しいようにも見える。現道との切り替わりの時に、ここも舗装しなおしたのかもしれない。

ところで、道幅が狭く見えるのは周囲から張り出してきている草や木々のせいなのだが、その割には路面に草や灌木の類が一切ないのも不思議だ。やっぱりこの道、まだ生きてる。そう思うと、なんだか嬉しくなった。この笹根隧道の探索を終えると、次は三姉妹の隧道の長女の探索に向かうが、そこも何かの形で生きていてほしいなぁと思う。

せめーなっ!

なしてこんなに狭いのだっ(笑)
まぁ普段ほとんど交通量がない旧道なのだから仕方ないと言えば仕方ないが、それにしてもだ。この手前の、カーブミラーがあった左カーブのあたりは、あんなに広かったのに。

はて、なぜだろう?と思いながらあたりを見回してみると、右の路肩にあるはずのガードレールが草むらに没して全く見えなくなっていることから、今の路面の右端から、さらに右端の木のあたりまでは元の路面だったんじゃないかと言う気がしてきた。
道はいつの間にか上り調子。たぶん現道の高さと合わせるべく、坂になっているようだ。

右側にガードレールが追いついてくる。と思うと、空には電線が見える。現道開通時に電線は移設されたようで、笹根トンネルの方を通っていた。ここだけ道幅が狭くなってるのは、現道を作る際に路面が一部かさ上げされたからだろう。この草の茂りようでは、現道を普通に通行していたら、まずわからない分岐点だった。

この山形県道349号の三連隧道(ここでは三姉妹の隧道と呼んでいるが)のうち、次女の荒沢隧道、末っ子の笹根隧道の2つの探索が終わった。残るは少し離れたところにいる長女の大鳥隧道を残すのみ。荒沢隧道の時と同じように、机上調査はこの3本をまとめて行うことにして、ベース地点に置いてある車に戻って長女の元に急ぐことにしよう。


車に戻って、大鳥隧道に向かう支度をしながら今通ってきたばかりの道を思い返すと、頭の中に一枚の風景が自然と浮かび上がってきた。
それは、この風景だ。

もう二度と点灯することのない、道路情報電光表示板。これまで荒沢隧道に進入しようとする車に数多くの情報を与え続けてきて、安全を守っていた表示板も、現道の開通時にその役目を終えて光を失ってしまった。

それからずっと長い年月ここに佇んでいる彼は今、何を思っているのか。
荒沢隧道も閉鎖され、情報を与える車もいなくなり、その役割を失った彼はここに残され、通行が途絶えたこの道が実は大切な県道であったことを、今も私たちに教えてくれている。

山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 笹根隧道

完結。