山形県一般県道349号
鶴岡村上線旧道 笹根隧道

第4部 「銀灰色のゲートキーパー」

2023年10月14日 探索 2024年4月15日 公開

銀灰色のゲートキーパー

では、隧道の坑口の周辺を観察してみよう。坑門の周囲(ポータル)のコンクリ施工は以前に書いた通りだが、右側の翼壁(ウイング)は玉石積みなのか確認したかった。だけど見てわかる通り、たっぷりと言えるほどの草の量で埋もれてしまっていて、上から触って確認しただけではわからなかったから草をほじくってみたものの、今一つはっきりしない。感触では玉石積みではなく、タダの土の壁のようにも思えるんだけどなぁ。

それにしても、ここから見ても見事なまでに坑道断面に沿ってピッタリと、比喩的な表現ではなく手を入れる隙間もないくらいに銀色のフェンスが張ってあるのには感服した。これで仮に悪さをしようと思っても、その気にもならないだろう。もっとも、少しでも隙間があろうものなら、どこぞの輩(←私とか(^^;)が侵入したりしそうだが。

上を見上げてみると、坑門にしっかりとはめ込まれた銘板が、今もこの隧道が現役であるかのように誇らしげにこの隧道の名称を表していた。その名称は「笹根隧道」。前髪のように垂れさがったツタが、何やら怪しげな雰囲気を醸し出しているようにも見える。こんなアイテムの一つ一つが、こうして使われなくなった廃道の隧道などを心霊スポットに仕立て上げてしまうのだろうな。

そして、そこに侵入して落書きやゴミなどを残していく。中には産業廃棄物などを残していったりもする。そう考えると、この坑口を銀色のフェンスできっちりと塞いでしまうというのは、この隧道を護るためにも必要なのかもしれない。それはまるでこの隧道の門番のようにも見えてくるから不思議なもんだ。

ふと足元を見ると、そこには綺麗な水がとめどなく流れる小さな流れがあった。隧道の中から流れ出しているのだろう。ブロックや土嚢などで塞がれている隧道から流れ出している水ならどんな水かわからないが、フェンスで塞がれている分通気性は抜群、網の目が細かいので蝙蝠なども入る心配はまずないだろう。ということは、それなりに綺麗な水だろうと言うことが想像できる(もちろん口にしたりはしないけどね)。

路面を見ると、そこにはマンホール。これは…山形県の何かの情報が行き交う光回線が埋められているマンホールだろう。何の情報だろうか。考えられるのは、この先にある荒沢ダムだ。確かこのダムは県営だったはず。しかもマンホールの周囲だけ土被りがなく綺麗に掃除されている。…そうか、この施設があるからこの旧道が残っているんだと納得した。やはりこういった旧道は、現役時代に何かの施設を併設されると(それが例えば電力線とか。こういった光回線だとか)、その施設が更新されるまで必要最低限の保守をされながら生き延びるものなんだなぁと実感した。
…無論、そういった施設のおかげで残されている旧道は、私の大好物な訳だが(笑)

この隧道に別れを告げるために、離れる歩みを止めてもう一度振り返ってみる。隧道の土被りが結構少ないなぁ。もしかして、ここはもともとの隧道の長さから延長された部分なんだろうか、などと考えてみる。ま、仮に延長したのなら、わざわざ土被りを作らないだろうし…と思いつつ右上を見ると、そこには結構新しそうな道路防護施設が!。
ありゃ何だろうなぁ。雪庇防護か、それとも落石防護か。どちらかの施設だろう。これは後年になって設置されたものじゃないだろうか。この道が今でも護られている気がして、なんだか嬉しくなってしまった。


雪庇(せっぴ)とは、雪のかぶった山の尾根や山頂などに風が一方向に吹き、風下方向にできる雪の塊である。また、雪の積もった屋根から雪がせり出している状態のことも雪庇と言う。詳しくはこちらへ。


隧道に別れを告げて、現道目指して進んでいく。左側には現道時代からの強固な擁壁が今でもこの道を護っている。広かったであろう道幅の半分は草に覆われているが、往時の雰囲気はそこはかとなく感じることが出来る。ただ問題は…大針洞門の時と同じく、私が進む進路の先に何やら妙な出っ張りがある。あれは土砂崩れか、それとも人工的なもので塞がれたか。ただ、道幅全部を塞いでるわけではなさそうだ。それならちょっと外側を回ればクリアできそうだな。まずはあそこまで行ってみよう。

前半、隧道も「謎の穴」を筆頭に楽しめたが
後半の旧道もまだまだ楽しめそうだ

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